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抗争学園  作者: 三太華雄
一章
29/40

1/3

月初めの月曜の朝、僕と若田部君と飛葉さんの三人は定例の組長会議のために学校の会議室に来ている。

前と顔ぶれは一緒だが、雰囲気は前よりも殺伐としていた。


原因は僕らB組とG組。

会議室に来てから両者互いに机を挟んだ形で睨みが続いている。

若田部君が平松君を睨み、そんな若田部を見て平松君がニヤニヤと笑って返す。飛葉さんも睨みこそしてはいないがジッと藤澤君を見つめ続ける。

僕も睨んでくる沖原君に負けないように弱弱しい眼で精一杯睨み返していた。

そしてそんな状況を周りの組長達は面白そうに眺めていた。


互いがひと時も目を逸らさず無言の戦いが続く中、時間を知らせる朝のチャイムが鳴ると同時に教頭の真田先生が入って来る。

するとその場の空気はB組とG組だけでなく、この会議室全体を緊迫した空気へと変わっていった。


 真田先生が上座へ行くと全員が綺麗に揃えて頭を下げる。

 先程まで対立していたB組とG組もこの挨拶だけは、きっちり揃える、それくらいこの先生の存在は強大でもある。

 真田先生が全員いることを確認するとゆっくりと腰を下ろす。


「みんな揃ってるな、ならこれより組長会議を始める。こちらからの、連絡は特に無い。皆それぞれのクラスの現状を報告していってくれ。まずはA組から……」


 そう言われると本馬さんが「はい」、とおっとりと返事をしてゆっくりと立ち上がる。


「A組、停学、復学者、共にゼロどす……」


簡単に報告を終えると基馬さんは再びゆっくりと席に座る。

 報告を受けた真田先生は手に持つ資料を見ながら事実かどうかを確認する。

 そして報告に偽りがない事を確認すると次はこちらに目を向ける。


「……よし、次、B組」

「は、はい!」


返事をすると僕は硬い動きで立ち上がる。

 先ほどのA組よりも注目のされ方が圧倒的に違ってるのがわかり、自然と体に力が入る。


「び、B組、停学、復学者もいません!」


本馬さんの言い方をマネて僕も報告する。

停学者ゼロの言葉に周りから少なからず関心の声が聞こえたのが、少しむず痒いが、問題なく報告を終えると、ゆっくりと席に座る。


「よし、では次、C組……」


 そのまま報告はテンポよく続いていき、そしてG組のところまでと進んでいく。


「よし、ではG組!」

「……」


 真田先生の問いかけに返事がない、テンポよく進んでいた、報告がここでピタリと止まった。


「どうした?さっさと報告しろ」

「……はい。」


 返事をした沖原君が、重そうに腰を上げて立ち上がる。


「G組……停学者……三名……です。」


 報告の言葉と同時に周りからクスクスと嘲笑の声が聞こえる、そして僕の左側からは隠そうともしない大きな笑い声が聞こえてきた。


「ギャハハハ、なんだG、三〇人もいながら十五人のBに一方的にやられてんのかよ!ハハハハハ、ダッセェ!」

「菊川……テメェ……!」


 沖原君がギリッと睨みつけるが菊川君は全く構うことなく笑い続ける。


「ギャハハ、なんだやるつもりか?いいぜ、やれるもんならな?」


 そう言うと菊川君も勢いよく立ち上がり互いに睨み合う。

するとそんな菊川君の隣から伸びてきた手が菊川君の着ている服の襟を掴むと、強引に引っ張り菊川君を椅子ごと床に引き倒した。


「やらないし、やらせん。」

「イテテ、ったく、うちの大将は冗談が通じねえんだから。」

「すまねぇな沖原。こいつには後できつく言っておく。」

「……チッ」


 熊谷君が間に入ると両者その場を収め、沖原君も再び席に着く。

 そして残りのH組の報告も問題なく終わると、そのまま組長会議は終了した。


――

「Bぃ組ぃ!」


 教室へ帰る廊下で後ろから僕達を怒声混じりの声が呼び止める。

振り向くといたのはやはり、G組のメンツだった。


「テメェら覚悟しておけよ!こうなったら徹底的に潰してやるからな……」


 先ほどの怒りをこちらにぶつける様に沖原君が強い口調で言い放つ。

 だが僕だって言われっぱなしで終わるつもりはない。


「……それはどうかな?」

「……なに?」

「僕達だってこの一週間ただ、待ってたわけじゃないんだ。今度はこちらからも反撃させてもらうよ」


 それだけ言うと僕達はそのまま教室へと帰っていった。


――


 B組が去った後、廊下にはG組の幹部三人が立ち尽くしていた。


「……さっきの話、どういう意味だろう?」

「どうせハッタリだろ?」

「フン、どうしようが関係ない、こうなりゃ無理矢理にでもF組を動かす。断ればクーデターの事を新島にバラすと脅してな。」



――


――昼休み

 

 三階の共通エリアにある食堂は毎日昼休みになると様々な組の者達が足を運んで来る。

 普段からいがみ合いなどで騒がしい場所ではあるが、今日は一段と喧騒が溢れていた。


 その原因は食堂のテーブルのあちこちに置かれていたビラによるものだった。


『号外!G組とF組に同盟関係発覚⁉︎理由は金銭関係か⁉︎』


 手書きで書かれた、決していい出来とは言えないビラ。

 そこには大きく書かれた上記のタイトルの下にB組が調べ上げた詳細が詳しく書かれていた。


 見た者の反応は「どうせデタラメだ」と信じない者もいれば「F組は情けない」と罵る者など様々だ。

 そしてそのビラは本人たちの目にも止まる。


――


「フン、なにを考えているかと思えば、これが奴らのいう反撃なら興ざめだな。」


 組の者が教室に持ってきたビラの内容を見て沖原が吐き捨てる。


「……いや、むしろ好都合だな、これを知られた以上F組もう手を出さない理由がないだろう。バカな奴らだ。自ら首を絞めるとはな。」

「本当にそれだけなのかな?他にもっと意図がある可能性も――」

「なんだ藤澤?まさかお前こんなビラにビビってんじゃねぇだろうな?」

「いや、でも――」

「相変わらず、うちの参謀はチキンだなぁ、あの藤澤の名が聞いて呆れるなぁ」


G組の教室に藤澤を馬鹿にする笑い声が響く、藤澤はその声に苛立ちを募らせながら再びそのビラを見直していた。


――


「ど、どうしよう!こ、これ、完全にバレちゃってるよぉ⁉︎」

「落ち着きな!それにこの内容、所詮推測によるもので確信的な証拠はない。言わせたい奴には言わせておけばいいのさ。」

「で、でも……」

「ごちゃごちゃうるさいよ!」


 食堂という公の場で新島を御堂が罵倒し、他組からの注目も集まっている中、香取はそのビラの内容を手に取り隅々まで見ていた。

 そして端っこに書いてある文字に目がいく。


「……1/3」

――……


――

 そして次の日になると再びビラが配られていた。


『衝撃、金銭の同盟はフェイク⁉F組御堂澄香にクーデターの動きあり!』


 昨日のビラと同じくでっかく書かれたタイトルの下に詳細が細かく書かれている。


 そしてそれを目にした香取は今度は真っ先に端の数字に目をやる。


「……2/3」


――……


「こ、これ、御堂さんに問い詰めた方がいいのかな⁉で、でもこれが嘘だったらまた怒られちゃうし、ど、どうしよう?香取さん⁉」


 慌てふためく新島を一度見た後、香取は再びビラに視線を戻す。


「……そうですね、では大至急B組組長と話し合いの場を設けてください」

「……え?」


 香取の予想外の回答に思わず新島の声色が変わる。


「演技はもういいですよ、新島組長」

「……」

「この作戦、失敗です……」

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