クーデター
「F組の狙いはG組?」
「どういうこと?」
GとFの関係についての議論も、最終局面に近づいてきたところで突如浮上した新たな一説。
その話の発端者であり、普段からあまり話をすることのない、鷺沼さんに皆んなが注目する。
「言葉の通り……F組の標的はG組だった……それだけ……」
「G組とFは手を組んでんだぞ?手を組んでいる相手を狙うなんてしたら、Fの評判は最悪だぜ?」
「若田部の言う通りだ。最悪全クラスを敵に回すかもしれないぜ?」
鷺沼さんの発言に若田部君と片瀬君が真っ向から否定する。
確かに同盟関係を狙うなんてのは明らか様な裏切り行為、面子を気にするこの学校では最大のタブーとも言えるだろう。
しかし、その言葉に鷺沼さんはゆっくり首を振る。
「……何を言ってるの?……GとFは手なんて組んでないよ?」
「は?お前こそ何を言って……」
「……まさか⁉」
そこで飛葉さんが何かに気がついたように不意にホワイトボードの内容を確認する。
そこには自分達の手で調べたことが書かれてあり、そしてはっきり書かれていた『F組はG組との同盟を公表していない』と。
「そういうことね……」
「……うん、F組はG組と手を組んだとは公表していない、つまり、正式に同盟関係は成立していない。」
「でも待てよ、実際FとGが関係しているのは確かだろ?現に何度も御堂はG組に出入りしているし、手は出していないとはいえ、俺達の前にも立ちふさがっている。」
「うん、裏での同盟は確かにあったはず……理由も京香の言うクーデターの協力で合ってると思う」
「はぁ?なら――」
「でもその話自体がG組を騙す嘘だったとしたら?」
その言葉に一瞬、場の空気がざわついた。
「……京香は御堂が新島に対し、G組と手を組みクーデターを起こそうとしているとを考え、それに関してそれなりの証拠も根拠も揃っている。でも組長の見立てじゃ新島は今の性格を偽っていて、その事によりアヤメは新島がクーデターなどされるような人物ではないと考えている……ならクーデターをする振りをしていると考えれば両方の話に辻褄があう……」
鷺沼さんの言葉に反論の余地がなくなると周りの誰もが言葉をなくしその場に小さな静けさが訪れる。
「クーデターをする振りか……」
言葉を復唱し飛葉さんが深く考え込む。
「なるほど、それでそう考えると標的は自然とG組となる訳か」
「つまり、F組はクーデターをする力を貸してほしいという話を持ってきて手を組むもその話は嘘で、頑なに手を出さなかったのもF組にとってはあくまで嘘の同盟だからか……でもどうしてわざわざそんなことを?」
「それは多分……私たちを狙わせるためだと思う……私達は今にもつぶれそうな組だけど、個々のメンバーは強いから誰も進んで潰そうとする組はいない……そこに自分たちとの同盟を組み共闘すると言う話を持ち掛けた、そして私たちと戦わせて、その後傷ついたG組を一気に叩く計画だったんだと思う……。」
「ちょ、ちょっと待って!まさかそれだけのために今まで仲の悪いふりをしていたという事?」
飛葉さんが信じられないと言わんばかりに声をあげる。
でもそれは当然かもしれない。
F組の仲が悪いと言う噂が流れたのは丁度前組長が停学になった時……つまり、僕が学校に来る前からすでにこの計画は立てられていた。
転入もまだ決まっておらず学級閉鎖になる可能性があった時からF組はB組が生き残ると考えて、ここまで読んでの行動となる。
「多分……」
ポツリと呟いたその一言で締めると鷺沼さんが話し終える。
飛葉さんはすぐさま今の話を聞いてホワイトボードの内容と掛け合わせておかしな点や矛盾がないかを照らし合わせ始める。
そして話し終えた鷺沼さんは少し疲れた様子で、ふう……と息を吐いた。
「それにしても、英子すごいじゃない!普段はあまり喋らないくせに」
まるで子供を褒めるかのようにツンコさんが嬉しそうに鷺沼さんを褒める。
「……疲れた……人前で話すのは苦手……こんなに喋ることは、もうないと思う……」
「ははは、でもおかげでかなり真相に近づいたんじゃないかな?」
「……一応話はちょくちょく勇から聞いていたから……この一週間ずっと考えてた……アヤメのためにも力になりたくて……」
「英子ちゃん……」
鷺沼さんの言葉に百瀬さんが薄っすらと眼を潤ませる。
――そういえば三人は一緒に行動してたっけ。
「作戦班に入れなかったのは京香の完全な采配ミスだな」
若田部君の言葉が耳に入ったのか飛葉さんがわざとらしく、うおっほんと咳こみをする。
そして飛葉さんが再び席に着くと再び会議を再開する。
「今の話とF組の行動に矛盾がないか一通り調べてみたけど、ほとんど完璧だったわ。」
「じゃあ……」
「ええ、F組がG組と手を組んだ理由……それは、私たちと戦わせ傷ついたG組を潰すためで間違いない。」
その一言に皆の表情に再び勝機の笑みが浮かぶ。
「ただこれからが問題ね……所詮全て推測だし、それに、これが分かったところで現時点ではどうしようもできないわ、G組に伝えたところでまず信じてもらえないだろうし」
「じゃあどうすんのさぁ?」
「そうね……じゃあ、一か八かの賭けに出てみましょうか」
「賭け?」
「ええ、成功すればF組は手を引く、失敗すればF組は正式にGと手を組むことになるけど、どうする?」
飛葉さんが皆んなに問いかけるが、もう答えが表情に出ているのか、全員の顔を見た飛葉さんがニヤリと笑った。
「そんなもん答える必要も無いだろ?」
「そうそう、どうせもう後がないんだから!」
「OK、なら今から早速行動に移るとしましょう。みんな!紙とペンを準備して!今から作るのは……号外よ!」




