制作:酩酊ポーション
ウイスキーも買い、気を取り直して酩酊ポーションの制作に入る。
まずはボウルに水魔石と水を分量を量って入れる。重さに対して三倍の水がベストと記載されていた。二百八十三グラムだったので八百五十ミリリットル注げばいいな。
次にウイスキーをボウルに取り出し、リューターでウイスキーの瓶の底に魔法陣を刻んでいく。菱が中心に大小二つ、直線を六十八本と三角を外周部に配置したものだ。丁寧に丁寧に刻んでいく。
完成した時には三時間も経っていて、ボウルで作っていた水の魔溶液はまだ三分の一ほど溶け残っている。
今のうちに晩ご飯を食べよう。喫茶バロックでお弁当が買えると聞いたので、よろこんで買いに行く。狭いから夜は人でいっぱいらしいからなバロック。
バロックのテイクアウト弁当、サウザンスパイスの煮込みカレーをペロリと平らげてボウルの中身を見る。もうちょっとで溶け終わりそうだ。一時間ぐらいだろうか。
その間にパソコンのセットアップを終えて使えるようにする。真っ先に開くのはBtube、当たり前だよな。
Btubeにアップロードされている世界ダンジョン巡りを眺めることしばらく。水魔石が溶けて魔溶液が完成したことを確認して次の段階へ。それにしても薄い青色で水の色って感じの色だ。
ウイスキーの瓶に漏斗をセットして同量のウイスキーと水魔溶液を注ぐ。ウイスキー瓶は七百五十ミリリットルの瓶で、容器にする予定の試験管が六十ミリリットル。三百五十ミリリットルずつ注いで十二本分と予備で少しぐらいにしておく。
それを水を入れて沸騰した鍋で湯煎する。十分間このままにしておく。
十分後、熱くなった瓶をタオルで包んで取り出して冷やす。茶色と魔溶液の色が混ざって、いわゆるコーヒーブラウンのような色になった。
完全に冷めるまでネットサーフィンをして時間をつぶす。ダンジョン関連を検索してみると、クランの紹介動画が数多くアップされている。なるほど、狙い目の若い子たちを引き込みたいならこれもありなのか。知見が広がったところで瓶を確認。まだ熱いので今日の作業はここまでにして眠ることにする。おやすみ。
翌朝、寝起きのまま瓶を触って熱がないことを確認する。完全に冷めている、次の手順へ。
といっても、もうここまでくれば魔法陣に水魔溶液を流すだけだが。爪楊枝をガイドにして紙コップに分けた水の魔溶液をゆっくりと注いでいく。
注ぐ場所を変えながら魔法陣全てに魔溶液を行き渡らせる。全ての彫りこんだ魔法陣に魔溶液が到達した瞬間、それが輝いた。
思わず目をつぶる。光が収まって再び目を開くと瓶の中の液体はピンク色に変化していた。
「で、できた……」
十数時間の死闘を経て『酩酊ポーション』がここに完成したのだ。
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この後のことを何も考えていなかった。どうやって売ろうか。
オッサンの販路に乗せてくれってのは断られるだろうしなぁ。とりあえずパソコンを起動して今の酩酊ポーションの単価を調べる。ふむふむ、官製オークションによると一本で三十八万が妥当だと見た。ポーション系統のドロップ品にしては安い部類だ。
エリクサーってのがポーション系統の最高値らしく、これが一滴で七億らしい。わけわかんねぇ。死体に一滴でも飲ませたら蘇生するらしいから当たり前の額なのかもしれないが。
仮に日記帳が作り方を教えてくれてもなるべく製薬しないように心掛けるか。もし何かの拍子で持っているとバレると全てを投げ打ってでも奪いに来るだろうしな。
話が逸れた。今、重要なのは酩酊ポーションの売り先だ。やはりブラックマーケットで流すしかないかな。ひょっとこのお面を被って顔を誤魔化し、吹っ掛けた値段にしたら酔狂な人間が買っていくんじゃないか? お面屋の婆さんも本物を出すならそうだとわかる値段にしろって言ってたしな。
決めた。とりあえずオッサンにブラックマーケットの出展方法を聞こう。
酩酊ポーションを試験管に移し替えて、持ち運び用のケースも探さないといけないし。
はっ! ブラックマーケットの行商こそ動画にすべきでは!? ビデオカメラを頼んでいなかった俺を呪うぜ……。




