03 生真面目な騎士VS吸血鬼
「単刀直入に聞く。貴様は吸血鬼ではないのか?」
彼から殺意を気持ちがいいほどに感じた。
柄に手を置いている。多分、一瞬で間合いを詰められてしまうだろう。
青い瞳だけで、魔王様に傷を負わせられるかもしれない。
ということは勇者か?
全くせっかく生き延びたと思ったのに。もう死んでしまうみたいだ。
でも悪あがきぐらいはさせてもらう。
「ち、違います。わ、私は人間です」
口に手を当てた。出来るだけ目を潤ませようとした。上手くいっただろうか?
「嘘をつけ」
剣を抜かれた。
「異常なまでに白い肌。猫のように縦に細い瞳孔。さらに赤く光っている。そして喋ってくれたおかげで確証が持てた。ずいぶん鋭い牙をしているな」
ふーん。そうなんだ。
肌と牙は知っていたけど、目はそういう形だったんだ。
ついでに私は美少女に該当するのか聞いてみようかしら。
「村人を虐殺したのは貴様だな」
「違うわ」
「嘘をつけ」
ああもう。
アイスクリームといい、どうして誰かの責任を取らされるのよ。
騎士は剣を顔の前にかざした。
「私の名は、フランツィスクス・ナインハルト・フォン・ツヴァイガルト。フランツと覚えればよい。いざ参る」
「私も名乗ったほうがいいかしら?」
「不要だ。魔族に礼儀など期待していない」
「失礼な男ね。これから殺すか殺される女の名前くらい知ってもいいんじゃない?」
「そうか私は男に見えるか」
少しだけど、ほおが赤くなった。
「? 何かおかしなこと言ったかしら」
真顔になる。
「いや別に。よく女と間違われるのでな」
「そうね。女装しればみんな騙されそうだわ」
「貴様! ……まあいい。名を聞いてやろう」
長い金髪をパサァと払う。
「私の名前は、オプトゼチ・インダストリア・アエロナウティカ・ロマーナ・ブラショフ」
誰かに本名を言うのは久しぶりだ。
素直に嬉しい。
「長いな。魔王の血縁か?」
「お生憎様、田舎の貧乏吸血鬼よ。別に覚えなくていいわよ。もうすぐお別れなんだから、フフ」
「そうだな。――ではいくぞ!」
スパパパアアアアアアアッ!!!
避けるのが後少し遅れていれば真っ二つにされていた。
本当に一瞬で間合いを詰められた。
でもそれは私の攻撃が届くというものだ。
「――?」
「甘い!」
ドガッ!!
防御が間に合って良かった。
「熱っ」
まさか、あの剣は。
「もちろん銀で出来ている。魔族の弱点だからな。貴様ら吸血鬼も同様であろう」
「んもう、こんなカワイイ女の子を殺すの?」
「ふん。私に色仕掛けが通じるか」
つまり美少女だと考えていいんだ。
よし。
ヴァチィィィン!!!
ビンタをお見舞いしてあげた。
残念ながら剣で防がれたけど。
ビュウゥゥン!!
斬撃をジャンプでかわし、木に着地。
「ふん!」
ズパン!!
ギギギギギドゴオオン!!!
騎士は木を切り倒した。
私は別の木に飛び移ろうとするも。
「もらった!」
先によじ登られていた。
飛び降りながら斬りかかってくる。
「食らいなさい!」
私のサマーソルトキックと、相手の斬撃がぶつかり合う。
ドカアアアアァァァァァァァァァァン!!!
大爆発を起こし、お互い吹っ飛ばされた。
私のほうが、彼より早く立ち上がった。
最弱のくせに結構やるじゃない。案外才能あるかもね。
「――あれ?」
本来なら脚をグチャグチャにされているはずだ。なのに普通に立てる。それどころか靴には傷ひとつない。
そういえばビンタの時も、剣に触れたのに切断どころか、指ぬき手袋もきれいなままだ。
「ハァハァ、やはり貴様は魔王軍の幹部。四天王のひとりだな」
「もしそうなら、こんな所に追放なんてされないわよ」
息が荒い。
もしかしたら勝てるんじゃないのか?
いやまさかな。
油断させるための芝居だろう。
「ハァハァ、先日倒したミノタウロスは、一瞬で両断出来たのにな」
――ウソ?
あのお方は魔王軍でも最強クラス。
肉弾戦に限って言えば魔王様と互角なのに。
ああ、やっぱり私は死ぬのね。
カワイイ女の子だから、手加減してくれていたんだ。
どうする?
逃げようかしら。
いやダメだ。
すぐに追いつかれるに決まっている。
背中を見せた瞬間、一刀両断だ。
生き残る可能性があるのは、ただひとつ。
戦うことだ。
「その顔で多くの男を騙してきたのだろう?」
落ち着いた喋り方に戻った。
ほら、やっぱり罠だったんだ。
「その美貌は心を奪うからな。もっとも私には効果はないがな」
「嬉しいこと言うわね。けれど安心なさい。男性経験はないの。情けないけど」
「ふっ、お互い戦いに生きて戦いに死す……か」
「そんなに真面目じゃないわよ私」
風で金色の髪が、彼は白いマントがなびく。
「魔族とはいえ女性だ。埋葬はどうすればいい?」
「好きにすれば。勝ったら何をしてもいい。犯したいなら犯せば」
「馬鹿な! そのような行為、騎士道に反する!」
「頭が悪いくらい真面目なのね。でも好きよそういうの。からかいがいがあるもの」
私は走り出す。死に満たされた、わずかな生へ。
「うおおおっ!」
「あなたが私の初めてね!」
こちらの拳に、相手の突きがやってくる。
木っ端微塵だ。
肉塊だ。
美少女が台無しだ。
バキイイイイイィィィィィィン!!!
きれいに切断された。
彼の剣が。
――!?
心は戸惑っても、身体は止まらない。
もう片方で、鎧を殴った。
グオオオオオオォォォォォォォン!!!
吹っ飛ばされた騎士は、大木に叩きつけられた。
死んだ?
いや気絶しているだけだ。
勝ったんだ。
じゃあ好きなように、もて遊んでもいい。
血を吸おう。
ひびの入った鎧が崩れた。
服も破れている。
――すると。
さらしに収められた、大きな胸があらわになった。
「……チッ」
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「主人公オプトゼチはこれから何をするの?」
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