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私に訪れた休み、そして再び旅へ

 あのあとしばらく新米勇者と話をした。途中なぜか私以外のパーティーはいらないと言われ、一緒に来て欲しいと私の手を握り号泣された。それをどうにか宥め、私は新米勇者にいい酒場を紹介して私を仲間にするイベントをどうにか終わらせることに成功した。

 そして――。


「はー、やっとゆっくりできる……」


 新米勇者を酒場へ連れていき、帰ってきてすぐに部屋の掃除をした。そして魔法で掃除し終えた部屋をぐるりと見回し、綺麗になったことを確認してからソファーに座る。

 目まぐるしい一日だった。いや、勇者がとんずらしたあの日から気が休まることなんてなかった。だけどやっとゆっくりできる。さっき結界魔法で誰も入れなくしたし、私を訪ねてくる物好きもいない。やっと……。


「本当にやっと、ゆっくりできる」


 疲れきっている体は、とても睡眠を欲しているらしい。まぶたが重くなってきた。意識も既に半分以上、夢の中だ。

 私は眠気特有の気だるさに身を任せ、目をつむった。


『ごめんな……。レイン』

『何に謝っているの?』


 聞き覚えのありすぎる二つの声に目を開ける。


「っ……!」


 そして目の前の光景に目を見開き固まってしまう。

 そんな私の心臓は激しく脈打ち、どくどくと勢いよく血が流れる。

 ……これは、夢だ。ただの夢。だから別に気にする必要はない。


『お前を魔王討伐のために連れて行く』

『その事なら別に謝る必要ないでしょ。私自身が選んだ道なんだし』

『それでも、だ。俺はお前以外をパーティーにする気がない。だから……』

『だから、きつい旅になるって? わかってる。わかってて一緒に行くの。だから謝らないで』

『……俺の命は、レインに任せる。それでレインの命は、俺が必ず守るから。だから変えよう。この世界を』

『うん』


 過去の私たちの会話を見て何というか複雑な気持ちになる。それに何より――。


「何が任せる、だ。馬鹿勇者。結局私を一人にして勝手なんだから。この時の言葉は嘘だったの? ねえ、勇者……」


 夢の中の勇者に問いかけるように、そして現実にいる勇者に文句を言うように私は言葉を発する。

 もちろん返事など返ってくるなずもなく、私は幼い自分と勇者をじっと見つめた。


        ***


「……」


 勇者のせいで最悪の目覚めになってしまった。どうして私がやっとゆっくり出来るタイミングで夢に出てくるんだ。出てくるなら出てくるで、少しくらいいい夢を見せてくれてもいいじゃないか。と思ったのはいいが、まあ、別に見たいと思うような夢があるわけじゃない。とりあえず思ってみただけ。


「……ふう、とりあえず旅の準備しよう」


 のそのそと身体を動かし、お風呂に食事にといろいろすませる。

 そして全てが終わる頃、外の世界は真っ暗になっていた。

 私は炎の妖精を呼び、夜の世界を光照らしてもらう。


「ありがとう。このままお願いね」


 炎の妖精が私に返事をするようにゆらゆらと動き頬に寄り添ってくれる。火傷をしてしまうほどの熱さはなく、ほんのりと暖かい。

 炎の妖精と一緒に外へ一歩出れば、家族団らんの楽しく賑やかな声が聞こえてくる。そして美味しそうな匂いも鼻をくすぐる。

 ――私は、この優しい時間を守りたい。だから一刻も早く勇者を見つけなければ。

 私は肩にかけていた鞄を直し、歩き出す。少し歩いたところで、ふと思い出して振り返る。


「行ってきます」


 誰にも聞こえていない。

 誰の返事もない。

 だけど、それでいい。私がここに『ただいま』と帰ってこられるように、おまじないのような行動だから。

 願わくば、また勇者と共にここへ帰ってこられますように。

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