結末
『死なないでシェリスタ……!!」』
聞き覚えのある声。だけどもう私はそれを思いだすことができなかった。頭が働かないんだ。
と思ってたら、頭に血が巡ってくる感じで、意識がはっきりしてくる。沈み込むような感覚もない。体が、動く。
そして気付いた。
「ティアンカ……?」
ティアンカだった。「死なないで」と声を掛けてきたのは、ティアンカだったんだ。
でも…あれ? 違う…ティアンカなんだけど、なんか違う……?
「って、小っちゃ…!?」
そう、小っちゃいんだ。たぶん、五歳くらいって感じの小っちゃい子。
「ティアンカ…なの……?」
問い掛ける私に、<小さなティアンカ>が大きく頷いた。でもその時、私はハッとなる。
「って、ドゥケ…!?」
そうだ、ドゥケは……!?
と見回すと、彼も、「げっ! げはっっ!! ごほごほっ」と咳き込みながらも体を起こそうとしてた。
「よかった、助かったんだね…!」
見ると、彼の体を支えようと手を添えてたのは、
「まさか、ポメリア…?」
ポメリアだった。ティタニアと同じように五歳くらいって感じの姿だけど、間違いない、ポメリアだ。
でも、なにこれ? どういうこと…?
だけど次に頭に浮かんだのは、
「バーディナムと魔王は…!?」
思わず叫びながら視線を上げた私の目に入ってきたのは、何本もの<光の槍>に、地面に縫い付けられるように貫かれた黒い巨人と、それを悲しそうな表情で見下ろす巨大な<ティタニア>。
「バーディナム様は、去ってしまわれました……」
と、ティアンカが言う。そして私も察した。
『バーディナムが、死んだ……』
って……
結局、魔王と一体になったティタニアが、バーディナムを滅ぼしたんだ。それを理解した私の前で、<バーディナムだったもの>が砕け、崩れ落ちていく。
バーディナムが、死んだ……
この世界を支えていた<神>が死んだ……
「シェリスタ……」
名前を呼ばれて振り返った先には、ポメリアに寄り添われたドゥケ。彼も状況を察したみたいで、何とも言えない表情で私を見てたのだった。
結局、勝ったのは、魔王と言うかティタニアと言うかだった。
光の矢に貫かれたドラゴンたちは、さすがにそれでは死ななくて、バーディナムが死んだことを理解したのか、もうティタニアには攻撃を仕掛けることもなく、よろよろと立ち上がっては力なくどこかへ飛び去ってしまった。その姿からは、たまらない虚しさが感じられる気がした。
「これは…一体、どういうことなの……? 教えて…ティアンカ…ポメリア……」
問い掛けた私の耳に届いてきたのは、
「見たまんまだよ。魔王が…いや、ティタニアが勝ったんだ。バーディナムを討ち倒し、この世界は新しく生まれ変わるんだ。僕たち人間が自らの力で生きていける世界にね……」
という語り。
カッセル……




