ブレス
ドゥケのことを『好き』だなんて、彼と出会ったばかりのことを思えば想像もできない話だと思う。たぶん、こんなことにならなければ決して有り得ないことだったと思うんだ。
でも、不思議だな。今は素直に彼のことが好きなんだ。『愛してる』って言ってもいいのかな。
だから私、戦うよ。
ドゥケと一緒に生きて帰るんだ。そして彼への気持ちが本物なのかどうか、確かめてやる。
だけどその時、
「!? ヤバい!?」
私達の方を向いた魔王が口を大きく開けて、そこにまたあの光なのか炎なのか分からない<力>が。
きっと私たちを狙ったんじゃないと思う。私たちとの間にいたドラゴンの群れを狙ったんだろうな。その先にたまたま私たちがいただけ。
カアッとそれが迸った瞬間、周りが光に包まれて何も見えなくなった。痛みも何も感じる暇もなく、私たちは一瞬で消え去ったと思った。
―――――のに、
「生きて…る?」
真っ赤に焼けた地面の上で、宙に浮いた状態で、私は自分が生きてることを確かめた。ドゥケの方を見ると、彼も無事だった。その彼の腕の中で、ぐったりしてるリデムを別にしたら。
「リデム!?」
その姿を見て察してしまった。彼女が、彼女の魔力すべてを振り絞って私たちを守ってくれたんだって。宙に浮かんでいるのは、その最後のぎりぎりの魔力で浮かせてくれてるんだって。
でも、それがすっと消えるのが分かった。途端に、真っ赤に焼けた地面へと落ちていく。
だけど私もドゥケも慌てなかった。剣を地面へと投げて刺し、それを足場にして思い切り跳び上がった。<祝福>を施してない剣じゃ耐えられなかっただろうけど、辛うじて持ちこたえてくれた。私たちが地面が焼けていないところまで跳ぶくらいは。
「ごめんね…私はどうやらここまでみたい…もう、体も動かない。だけど二人が無事でよかった……」
地面に降り立ったのと同時に、そう言ってリデムの体から力が抜ける。
「リ…っ!?」
リデムの名を呼ぼうとした私に、ドゥケが言う。
「大丈夫。気を失っただけだ」
岩の陰にリデムを寝かせ、ドゥケがその唇にキスをする。
ツキンと胸が痛んだけど、それが<加護>を施すためのものだとは分かったからそんなに気にはならなかった。
「気休めだけど、このくらいはね。じゃあ、行こうか」
「うん」
そしてとうとう私とドゥケだけになり、また走り出す。途中に落ちてた剣を拾ってそれに<祝福>を施し、魔王のブレスを受けて地面に伏した数頭のドラゴンを飛び越え、ドゥケと呼吸を合わせて、
「はあぁっっ!!」
と渾身の剣戟を魔王に向けて放った。もちろんその一撃じゃ倒せるはずもなかったけど、バーディナムやドラゴンの攻撃に合わせて、私とドゥケも攻撃を繰り出したのだった。




