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後悔

カッセルにも言ったとおり、私もバーディナムには不信感がある、神妖精しんようせいの巫女達にも不信感はある。人の記憶を勝手にいじったり、気持ちまでいじってたのは許せない。


でも、だからって魔王に乗り換えるなんてのは無理なんだ。だって、魔王がバーディナムよりマシだって思えないから。そう思えるようなことがこれまで何もなかったから。バーディナムを倒すためだけに魔王を信じるとか、私には到底できなかった。


カッセルにはそれだけの理由があったのかもしれない。カッセルのパートナーらしき神妖精しんようせいのティタニアって巫女は彼にとってはそれほどの存在だったのかもしれない。


だけどさ、そんなこといきなり言われたって、私にとっては『誰?』って話なんだよ。そんな顔も合わせたことのない相手を信じるとか無理なんだよ。


それに比べたら、幼い陛下の方がよっぽど忠義を向ける価値があるよ。


あなたの失敗は、自分の気持ちだけで突っ走って理解してもらうための努力をしなかったことなんじゃないかな。


恋は理屈じゃなく好きになるものかもしれないけど、自分以外のたくさんの人の命や人生まで絡んでくることは、理屈とか道理とかを蹴飛ばして気持ちだけで決めるってのはできないんだよ。


少なくとも私には無理。そういうのを、理解してなかったんだね。


カッセル…もしあなたの言うことが正しかったんだとしたら、私はきっと後悔するだろう。『どうしてあの時あなたを信じなかったんだろう』って考えてしまうと思う。だけどさ、もう、そういう後悔も背負う覚悟ができちゃったんだ。あなたの涙を見て、私も泣くぐらい真剣になろうって思えたんだ。


「ドゥケ。私、この戦いですべてを出し切れる気がしてきた。なんかもう、吹っ切れたよ。だから言うよ。私、あなたが好き。今は確かにあなたのことが好きなんだ。


もしかしたらこの気持ちも、異常な状況から来る気の迷いかもしれなくても、今は確かにそうなんだ」


たぶん、無茶苦茶なことを言ってるんだろうなっていう自覚もあった。すべてが終わって落ち着いてから思い出したら忘れ去りたい過去になるかもしれないって思う。でもそれくらいのがないと、あなたを好きになんてなれなかった気がするんだ。


魔力を温存してもらうためにリデムを抱きかかえて走るドゥケに、私はそう言ってた。


「気の迷い、か。人が人を好きになるのなんて、えてしてそういうものかも知れないよ。だけど、その<気の迷い>を気の迷いのままにするか、それとも本当の気持ちにしていくのかは、その人次第なんだろうなって俺は思う。


だから君が俺を好きだと言ってくれたことを後悔させないようにしたいと、思うかな」



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