43 余話
*魔法使いᎡ視点*
「ようやく国内も落ち着いてきたし、急務もないから暫く休んでも良いよ」
と、国王陛下から告げられたのが3日前。前王の悪政からの世直しで、貴族の粛清やら他国との根回しなどで走り回って3年。日付が変わる前に寝て、太陽が登ってから起きる──なんて日は片手で数えられる程しかない。ようやく落ち着きだしてから数年。それからも、俺は魔法使いとして子供達の育成に力を入れた。今ではそれなりの数の弟子が居る。
とにかく、長期休暇をもらったから、俺は色んな国を旅する事にした。俺はそれなりの魔法使いだけど、自国と隣接している国しか行った事がなく、他国の知識も殆どないから、これからの為にも知識を広げる為に旅をする事にしたのだ。
本当に、国によって色んな事が勉強になった。
勿論、魔獣にも遭遇する事もあり、その時は討伐もして、その土地の領主に感謝されて饗しを受けたりもした。国によって、色んな料理も楽しめた。
そうして、アルミリオン王国で初めて会ったのが虎獣人だった。いや、擬人化する魔獣を目にした事はあるが、“純粋な獣人”を見たのは初めてだった。
クレマチス辺境伯──
東西南北ある辺境伯のうちの、南辺境伯。たまたま出現した魔獣を倒した時に出会い、お礼に──と、街の居酒屋で食事をする事になった。その時に相談された事が、娘の魔力の扱いや魔法に関する事だった。なんでも、獣人は基本的に魔力持ちが少なく、魔力持ちであっても少ない為、魔法を学ぶ機会も使う事も殆どないらしい。でも、その娘の魔力量が多いようで、指導をしてくれる魔法使いを探しているそうだけど、見付からずに困っていると言う。しかも、その娘がモモンガで、一族唯一の姫ときた。
ーこれは、受け流したら駄目なやつだなー
いやいや、受け流せる訳がない。
“唯一の姫でモモンガ”
どこかの誰かと同じだろう!俺が放っておける筈がない!
と言う事で、俺はそのモモンガ──オリアナを指導する事にした。
******
「モモンガは最強しか居ないのか?」
オリアナもまた、無自覚な魔力持ちで、指導すればすぐに会得して、あっという間に中級の魔法使いレベルになった。しかも、このモモンガは攻撃もできるタイプ。
ーうん。これからは、より一層小動物には気を付けようー
自分にそう言い聞かせたのは、俺だけの秘密だ。
そうして、オリアナの指導は1ヶ月程で終了し、そろそろ自国に帰る事を告げると、クレマチスの邸で宴会が開かれた。そこでの美味しい料理と楽しい時間は良い思い出となっている。
「食事のお礼に、いくつかプレゼントさせてもらいます」
と言って、俺は旅に出る前に貰ったいくつかのアイテムを、クレマチス辺境伯にプレゼントする事にした。どれもが上級の物だ。『唯一の姫のモモンガにあげた』と言えば、笑って許してくれるだろう。
ー自国に帰る前に、挨拶でもしに行こうかー
手強いセキュリティが3人ほど居るが、それを破るのがまた楽しい──なんて事は思ってない。ただ、元気な顔が見たいだけなのだ。
*クレマチス辺境伯視点*
『これは、上級の治癒ポーション』
『これは、上級の解毒ポーション』
と言って、あの魔法使いがくれたアイテムは、とんでもない最上級以上のポーションだった。1滴口にするだけで効果てきめん。今では私の執務室の奥の部屋の金庫の中に仕舞ってある。
それと、もう1つ貰った物が───
「これ、本当にえげつない物ですね」
「そうだな……」
私の横に居るオルフェオの顔が、引き攣っている。
ここは、クレマチス邸の地下にある監獄で、そこで今、リアに従属の魔法を掛けたコルラード=カシアスを監禁している。そのコルラードの体には、蔦が絡みついている。
『これは“戒めの拘束”の芽です』
と言って貰ったのは、小瓶に入った小さな新芽の様な草だった。
『蓋を開けると、この芽が際限無く伸びて拘束対象者を絡め取り、絡め取ったら最期、相手の魔力をじわじわと奪い取る。だから、使用する時はよく考えて使用して下さい。あくまでも、攻撃魔法ではなく、防御魔法です』
魔力持ちにとっては恐ろしい魔法だ。ただ、色んな意味で半信半疑でもあった──のだが、本当にその通りのアイテムだった。
絡み付いている蔦は枯れる事も切れる事もなく、少しずつ魔力を奪っていく。効力は1日か2日持てば良いか?と思っていたが、今日で1週間。その効力も衰えていない。このアイテムを作った魔法使いは、とんでもない魔法使いなんだろう。
「一度会って、お礼をしたいものだな」
「一体、どんな魔法使いなんでしょうね……」
その魔法使いがリスだとは───2人が知る由もない。
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これにて完結となります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
(*ˊᗜˋ*)ノ°•·✿*ᵗʱᵃᵑᵏᵧₒᵤ ꕤ*.゜




