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ガリ勉の俺がエロゲーの竿役に転生したが童貞すぎてラブコメは無理  作者: 揚羽常時


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第133話:天地乖離す


「うーっす」


 そして日にちは経って。今日は一学期最後の登校日。コヲリとホムラのマネージメントは順調。というかホムラのマネージメントは21プロだが。コヲリもそこそこ仕事が入っており、俺がそれに優先順位を付けて受注している。さすがにクリエイターに自分のマネージメントをしろというのも酷だろう。そんなことが出来れば漫画家に編集部は要らない。


「アークヤッ!」


 今日は見かけなかったな、と思っていたマキノが教室で出迎えてくれた。俺はその頭部を掴んで引き剥がす。


「いけずー」


「俺の立場がだな」


 男子どもは神敵でも見るかのような視線だ。気持ちはわかる。俺も逆の立場なら目からビームを出している。コヲリの仕事は順調で。契約書も精査はしているので無理を押し付けていることはないはず。断定しないのは俺がまだ学生で、社会知識については九王アクヤの帝王学を応用しているからで。本来役に立たないはずの九王の帝王学を、俺の意識が活用できているのだから皮肉というかなんというか。


「夏休みは仕事多いだろ?」


「まねー。海でも山でも配信部屋でも」


 グラビアの仕事はいくらでもあるし。今のマキノは旬だしな。


「でもー。アクヤとは会いたいじゃん」


 ジェラシー。ジェラシー。ジェラ期の狂流が暴れ狂っておりまする。


「はいはい」


「むー。アクヤ淡白」


「ホムラがすっごい目で見てるからな」


「アクヤくんはあたしのだぞ」


「何言ってんの。国宝でしょ?」


「世界遺産かも」


「神の涙という説も」


 あーはいはい。好きに言ってくれ。そうしてクラスについて着席。俺は朝のホームルームを待つ。話自体は通っている。教師が現れて、俺をチラリと見たが、まぁ気付かないフリ。相手も何か言いたそうだったが、聞く気は無いね。


「じゃ、今日は終業式だ。夏休み前の禊だな。騒ぐんじゃねーぞ?」


 夏休み。うーん。何すっかなぁ。筋トレとアニメ観賞とゲームとマネージャーと。思ったよりやることいっぱいあるな。もちろん勉強もだが。そうして朝のホームルームが終わり。授業時間のチャイムが鳴ると体育館まで歩く。学生が全員揃ういい機会だ。ヒョイヒョイと担任が手招きして、俺は列から抜けた。



*****


【花崎カホル視点】




「それでは皆さんもアルケイデス学園の生徒であることを休みとはいえ忘れることなく――」


 眠気をわざと誘っているのか疑わしい校長の話を聞きながら、私はちょこっと視線を逸らしてアクヤ様を見た。話自体は既に聞いている。私としても誇らしかった。アクヤ様が正当に評価される。そのことにどんなケチが付けられようか。


「では次に。先日行われた全国模試で、優秀な成績を収めた生徒を表彰します。二年六組。九王アクヤさん」


「はい」


 言われてピシっと直立し、返事するアクヤ様。特に声は張り上げていないのだけど、体育館全体に響き渡った。そして同時にざわつく生徒たち。全国模試は大学受験の趨勢を占う三年生の行事だ。別に学年が違っても受けてもいいし、実際に私も受けたけど、まだ受験には遠い二年生が模試で優秀な成績……というのは耳を疑うだろう。しかも二年生というだけでなく六組の生徒。そのことを事前に知っているのは私たちくらい。


 アクヤ様が壇上に上がる。そのまま進行役の副校長先生の前で、堂々と立つ。


「二年六組九王アクヤさん。先の模試で優秀な成績を収めたことを認めここに表彰します」


「九王が?」

「何かの間違いじゃ?」

「そもそも二年だろ」

「ていうか何?」


 具体的な点数や順列は言っていない。ただそれも、並行して職員室に繋がる渡り廊下の掲示板に張り出されるので、事実が広まるのは時間の問題。ちょっと私が優越感。


「…………」


 即席で作ったのか。テンプレートでもあるのか。おそらくアクヤ様の名前を記入した表彰状を渡されて、ソレを受け取りアクヤ様は六組の列に戻っていく。途中で目が合った。


「♪」


 私が軽やかウィンクすると、アクヤ様は苦笑した。もう既に私のアイデンティティが崩壊しているような気もしないではないけど。いっか。アクヤ様が異常に勉強できるのは既に知っているし。そのアクヤ様から授業よりわかりやすく指導してもらったおかげで、私の成績も上がり、一部大学の志望も上向いている。さすがに全国九十六位とは次元が違うけど、部さえ選ばなければ国立首都大学も視野に入っている。それもこれもアクヤ様のおかげ。私たちは皆アクヤ様に助けられている。私もそうだけど、コヲリだってホムラだって。コヲリはイラストレーターとして大成し、個人事業主としてプロをやっている。この前のひと悶着もあったけど、つまり私が遠慮するような額を彼女の同人誌は稼いでいるのだ。ソシャゲの依頼。21プロの依頼。あらゆる要素で大金を稼いでいるのだろう。それはホムラも同じ。私も見逃すことなく不動ミヨの配信は見ているけど、投げ銭の額に眩暈がしている。どこにそんな金があるのかわからない大金が目の前で投げられるのだ。マキノにしても個人で写真集を出すほど活躍しており、すでにプレアデスプロダクション内でも軽んじることのできないアイドルになっているし。夏休みが楽しみだなぁ。



*****



【人公アルシ視点】




「は?」


 眠くなりそうな終業式の無駄話を聞いていた最中。立ったまま寝てしまおう悩んでいたボクは、その一言で覚醒した。先の全国模試で優秀な成績を収めたとして、九王が表彰されるらしい。周囲もざわついている。まさかバカの代名詞である九王が学校側から表彰される成績を残すとか。そんなことは最後の幻想のラスボスが宇宙の法則を乱してもあり得ない。だが生徒全体が困惑している中で、表彰されて教師が拍手をする。それにつられて空気を読むように生徒たちも拍手した。ボクは茫然だ。バカ代表の九王が優秀な成績? それこそバカを言えだ。


「マジで? 九王くん最強過ぎない?」

「スポーツ出来て全国模試も?」

「ちょっと出来過ぎだよねー」

「いいなぁ。小比類巻さんアイドルだし。花崎さんも頭いいし。ああいう持っている女子が群がるのも自然だよねー」

「いっそ九王くんがアイドルになったら推すのに」


 またバカな女子に会話が聞こえる。男子も騒めきも消えない。誰しもが、今のこの異常事態に困惑を隠せていなかった。そうして終業式はつつがなく終わり。ボクは困惑のまま教室へ。そうして課題を出されて、成績表も。およそ考えられないくらい底辺の成績を見て矜持が崩壊しそうになったが、なんとか耐える。大丈夫だ。ボクにはカホルがいる。いくらでも挽回可能だ。一学期はちょっとだけ調子が悪かっただけ。そうしてホームルームが終わり、急いで渡り廊下へ。既に生徒が集まっており、ザワザワと騒いでいた。


「マジだよ」

「全国九十六位?」

「偏差値八十って……」

「マジ化け物じゃん……」


 人混みの中を押しのけて進み、とある男子生徒の肩越しに張り出された成績表を見る。たしかに全国模試の学内成績が張られており、三年生を押しのけて九王が学年一位。どころか全国で九十六位。そう書かれている。嘘だ。そんなわけない。また何か詐欺をやったに違いない。アイツはバカで。何もできなくて。ボクの方が優れているはずなのに……。


「アクヤくん♪ 帰ろ♪」


「……アクヤさん……マネジメントを」


「アクヤくん。一学期お疲れ様会しない?」


「いいねー。あーしもパーッとはしゃぎたい気分」


 カホルとコヲリ、ホムラと小比類巻さんに囲まれながら困ったような顔をして、平然と歩いている九王が目に入る。なんでだ? どうしてこうなった? カホルもコヲリもホムラも全員ボクのモノだ。ボクの幼馴染なんだぞ? そこにいるべきはボクのはずなのに、どこで歯車が狂った。九王を非難する声が喉元から出かける。このクソ男、と。カホルたちから離れろ、と。言いたいのに。言うべきなのに。幸せそうに九王と歩いている四人を見ると、吐き出したい呪いの言葉が喉から上に出てくれない。まるで信頼しきっているかのように嬉しそうに九王と歩いている四人がそのまま消えていく。ざわつく渡り廊下。そこに張り出された圧倒的な数字。そしてそれを認識して学校の話題をさらった九王。どこかでボクはこの現実がいったい何に由来しているのか。そればっかりを考えていた。


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― 新着の感想 ―
カホルもコヲリもホムラも全員ボクのモノだ…か で、そこに愛はあるんか?愛が一番なんだよ?
いいね。本格的な脳破壊が始まった。
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