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襲撃と再会

 片言で捲し立てる少年達の声が、寂れた整備工場『ベンチ整備工場』に響く。

 咄嗟に錆びた車の下にもぐりこんだが、窮屈なうえ錆の臭いで鼻がやられそうになる。

 しかも、兎男ことロックも同じ場所に隠れやがったせいで、苦しさが伴う狭さとなった。

 

「てめっ」

「しぃー……」


 音を立てるな、とジェスチャーで訴えてくる。クソ、今はこの状況をなんとかしねぇと……。

 例のバレンシアっていうギャングメンバーだろう、教会やコインランドリーで見た奴らと同じキャップ帽子、シャツに短パンだ。人数は3人。

 聞き取るのも難しいほどの片言で、なんとか拾えたのは、『マルセル』『マルコ』『ダイヤモンド』ぐらい。

 こいつらも呪いの宝石を狙いに来て、横取りした少年を追っている、つまりマルコって名前が例の少年だろう。

 遅れて別の車が工場の前にやってきた。


「やぁ、あ、あの、ほら、例の」


 なんとも情けない声色の男だ。

 隙間から見える、汚れてないスニーカーとダボダボのズボン。


「お前、ブツ買いに来た客か?」


 相手に伝わるよう、片言がゆっくりになった。


「うん、そう、そうだよ。ほら、お金もちゃんと用意してる」

「金先に寄越せ、ブツ持ってこい」


 ブツが張り付いている車体は……俺達が隠れてる場所じゃねぇか!

 ボロっちい靴が近づいてきた、マズイ、このままだと――。

 しゃがんで車体の下に腕を突っ込んできたところを、ロックがすかさず掴んだ。

 何をやろうとしてるのか、いつもの暴力で済ますこと以外分からない。

 狭い所でもお構いなしに拳銃を抜き、バランスを崩した少年の頭に向かって発砲。

 破裂音で耳がおかしくなるっ!

 激しく血が飛び散り、後ろに倒れた仲間を見て驚いたバレンシア達とクスリを買いに来た一般人。


「へーい、狩りは得意なのさ」


 いつの間にか車の下から抜け出したロックは、照明がないのをいいことに声を響かせている。

 拳銃を構えてバレンシアの奴らは工場内をうろつく。

 当然だが、今俺が隠れている車の下を覗き込もうとしやがる。


「く、そぉぉぉぉうらあぁああ!」


 このまま撃ち殺されちまうのはごめんだ。思い切り背中で底から車を傾かせた。


「わぁあああ!」


 両手で掴みなおし、前へ押し倒す。

 派手に金属が崩れ、錆と砂の埃が舞う。

 尻もちをついた少年と目が合った。


「モンストォロ!」


 拳銃を構えて叫んできやがる。

 遅れて俺も拳銃を構えたが……引き金に指を宛がうこともできねぇ。

 一発の破裂音が、少年の側頭部を貫いた。


「うぉっ!」


 ガクンと電池切れでも起こしたように倒れちまった。

 どんどん工場内の床が血だらけになっていく。


「せっかく練習したのに、撃てなきゃ終わりだぜ? 姿を見られたら消すしかないさ」

「うるせぇ! そうすぐ撃てるわけねぇだろがっ!」


 暗闇に隠れて声だけが聞こえる。


「ひぃぃぃぅぅ!」


 クスリを買いに来た男は怯えながら砂埃の地面に伏せていた。

 頭の後ろに手を乗せ、ガタガタ震えて床に顔を埋める。

 どこかで見たことがあるだらしない背中だ。まだ20代前半ほどの若造で、ここ最近顔を合わせることがなかった、働きもせずハッパばかりの息子と背格好が似ている。


「もう1人はしっかり捕まえたぜ。さて相棒、その一般人は幸い姿を見ちゃいない。処理を任せる」

「処理ったって……」

「何も殺す必要はないさ、目を隠し、腕を縛り、車に乗せて町に運べばいい。オレは先にアル坊のところに行く。あとで合流しようぜ」


 コツコツ、革靴の音が鳴る。数秒後にすっぽ抜けそうなエンジンの始動音と急発進の摩擦が荒野によく響いた。

 こいつを、運べってか……——。

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