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聞けば、公爵の顔が歪んだ。
「自分がやったことの罪の重さを、おわかりでない、と?」
荒らげることに、無理矢理に抑制をかけたと知れる声は、震えていた。
「セルシアのこと? 結局無傷でしょう。ガタガタ騒ぐほどのことじゃないじゃない。あなたも知ってるでしょう? 小娘はこの私に恥をかかせたのよ。躾の範囲内のことね」
ふん、と横を向き、「私のほうが重傷よ」と言えば、公爵は「あなたという人は……!」と、苦渋を絞り出すような声音が言った。
「あなたが『人体収集家』として多くの人を殺めていたことも、すべてがセルシア騎士団によって詳細が露見しました。行方不明になった令嬢、令息、平民も……! 一体、何人を殺したのですか! 『収集』の対象だけじゃない。気に入らないことを理由に何人を殺してきたのです?! 由緒あるこの家を、汚さないでいただきたい!」
あらそう、とメイベルは横を向く。
「あなた、いくつになったのだったかしら」
「そんなことはどうだっていい!」
「ええまあ、どうだっていいのだけれど。三十も過ぎて、自分の家柄が綺麗だなんて思ってるおめでたい頭をしてるんじゃないかって、少し心配になったのよ。あなたのお父様だって、何人もの女を囲っていたでしょう? 私のほうが、ちょっと過激かしら?」
「それが理由でこのようなことをなさったと?」
「まあ、きっかけはそうだったわ。美しい者と、怯える者。私はこのふたつが、身が震えるほど大好きなのだと気が付いたの。それまでぼんやりと生きてきた自分の人生に、楽しみが生まれたのよ」
恍惚の表情すら浮かべてそう言ったメイベルに、公爵はおぞましいものを見るように、一歩、後退った。
「あなたは……壊れている」
「私は、正常よ。この貴族社会において、頂点であるための正当な手段をとって来たに過ぎないわ」
「いいえ。やり過ぎです。私から差し上げられるのは、これだけです」




