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命の欠片 ―黒衣のセルシアⅣ―  作者: 吉野衣織
Ⅰ真夜中の凱旋
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 ハーシェルの説明に、目の前の二人は表情を崩さないが、控えていたラグナルが目を見開いた。クレイセスとユリゼラにしか明かしていないことだから、当然の反応ではある。


「それは、従騎士(ヴァルフレイア)として認めていただく際、アリアロス団長が開示されました。サクラ様はそれでも詳細を明かされませんでしたが、最奥(さいおう)に戻ったときには、視覚的に説明できるものがあるからそのときに、と……」


 バララトの言葉に、ハーシェルは「サクラは従騎士(ヴァルフレイア)の誓いを受け入れたのか」と少し驚く。


「ええ。私と、このアクセル、それにツイードとカイザルが。希望者はほかにも多数おりますし、サクラ様にはセルシアとしての庇護を与える意味で、アスティーとラツィアを加えていただくようお願いしています。今後も、従騎士(ヴァルフレイア)は増えていくかと」


 そうか、とハーシェルが微笑み、「従いかねる」と言ったバララトの立場を理解する。本来なら団長であるクレイセスが決めたことに従わないなど、命令系統に混乱を(きた)すことだ。しかし「従騎士(ヴァルフレイア)」なら、納得できる。それはあくまでも、「個人的に」主君を定めたということ。騎士団と守る対象が同じだから籍をそのままにしているのだろうが、騎士団が方向性を(こと)にするのなら、彼らは組織を離れるだろう。


 アクセルが「あの!」と、緊張を含んだ様子で声を上げた。


「サクラ様がいらっしゃる先は、ゼグリアか、フィラ・イオレにということなんでしょうか。それとも、メルティアスにお戻りになるということなのかは、ご存知では」


「恐らく、どれも違う。サクラと話したときには、サクラ自身、それをどう果たせばいいのかわからないと言っていた。この世界で過ごしていく内に、その方法を得られるのかもしれない、と。サクラはメルティアスに懐旧の情を持たない。レア・ミネルウァから去ると言っても、本人の意志を以てメルティアスには戻らないだろう」


 ハーシェルの説明に、二人は押し黙る。それに、ハーシェルは「話を戻そう」、と本題に入った。


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