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 令嬢が驚いて見上げると、それは鳥の魔物だった。

 鳥の魔物は令嬢の前に降り立ち、美味しそうな果物や木の実を取り出して置く。


「闇の魔物に頼まれて持ってきた。豊穣の祝福で、魔物の多くも飢えずに済んだ。だから、これは恩返し、対価はいらない」


 そう言い残すと、鳥の魔物は再び飛び立ち、小窓から出ていった。

 やはり、闇の魔物との出来事は夢ではなかったと、令嬢はほっと溜め息を吐き、鳥の魔物に貰った果物をありがたく頂く。


 日が落ちると同時に、闇の魔物が暗闇の中から現れる。


「……ナイト、また来てくれたのね……」


 令嬢は闇の魔物の姿を見て微笑んだ。闇の魔物の中には星屑が煌めいている。


 闇の魔物は葉っぱの盃に汲んだ水と、葉の包みを令嬢に差し出し渡す。まだ温かい包の中身は、蒸し焼きにした魚と芋が入っていた。


「温かいうちに食べて、その方がきっと美味しい」

「あの……ありがとう。昼間も鳥の魔物が食べ物を持って来てくれたの。ナイトが頼んでくれたのね」

「リリスは人だけではなく、魔物もたくさん助けているから。皆、恩返しがしたいんだ」


 芳しい香りが辺りに漂う。柔らかく蒸し焼きにされた魚を見て、令嬢はごくりと唾を飲み込む。

 思い切って魚に齧り付くと、香草と塩と白身魚の風味が口いっぱいに広がって、とても美味しくて感動する。

 温かい食事がこんなに美味しいものだったのかと驚きつつ、令嬢は夢中になって食べ進めた。


「美味しかった。ありがとう……」


 食べ終えて一息付くと、令嬢はふと考える。

 魔物達から食べ物を恵んでもらって、このまま生き長らえたところで、何も状況は変わらないのだ。

 それに、恩返しだからとは言え、魔物達に面倒をかけている。

 祝福ができなくなった令嬢には、世話になっても魔物達に与えられるものが何もない。

 魔物が本当に人を惑わし害あるもので、令嬢を騙して何かを奪おうとしているのなら、役にも立たない痩せ細った身体でも血肉でも魂でも、優しくしてくれた礼に奪ってくれていいと令嬢は思う。


「……ごめんなさい……こんなに良くしてもらっているのに、わたしにはもう祝福する力がないの。何も与えてあげられない……だから、もう……」

「これまでにも祝福の恩恵はたくさん受けているから、リリスは無理に何かを与えようとしなくていい。……ただ、祝福の力は恐ろしいものではない。だから、怖がらないで……」


 夜空が広がっていき、また令嬢を優しく包み込む。

 暖かい夜が令嬢を覆い、闇の魔物は静かに語りかける。


「人の夢を見続けてきたから分かる。人は強かで弱い生き物だ。享楽に弱く欲深い、その強欲さには際限がない。だけど、人はあやまちから学ぶ生き物でもある。あやまちを犯してはじめて人は間違いに気付くんだ」


 令嬢は夢見心地でうとうととし、闇の魔物の穏やかで優しい声を聴いていた。


「リリスの愛が、どれだけ多くのものを与えてきたのか、その大切さに気付くまで、少し時間がかかっているだけなんだ。もう少しだけ待ってあげよう。人がリリスの愛に気付けたら、リリスの夢は叶うから」


 子守唄のような声を聴きながら、船を漕いでいた令嬢は眠りに落ちていく。


「ゆっくりおやすみ、リリス」

「……おやすみなさい……ナイト……」

 

 その日見たのは、どんな困難にも挫けずに立ち向かう果敢な人々の夢だった。

 時には衝突し、時には協力し、切磋琢磨して、目的に向かって邁進していく。

 障害があろうが、挫折があろうが、必ず希望を見出し前へと進む。そんな力強い人の姿だった。


 令嬢は人の信念がこんなにも力強いものだと感じたことはなかった。

 闇の魔物が、人は強かな生き物だと言っていた気持ちがよく分かる。

 希望に満ちた、キラキラした夢だった。


 ◆


 翌日も、その翌日も、そのまた翌日も、闇の魔物は令嬢の元へと通った。

 温かい食事を与えて、寒さに震えぬよう暖かい寝床になって、心身共に弱りきっていた令嬢を癒やし励ました。


 昼間は入れ代わり立ち代わり、鳥型の魔物や、鼠型の魔物や、虫型の魔物など、小さな魔物達が果物や木の実を持ってきた。

 見た目は少々恐ろしく感じるものもいるけれど、今までの恩返しだと言い世話を焼いてくれる。義理堅い魔物達の姿に、令嬢の認識はすっかりと変わり、魔物に対しての考えを改めることになったのだ。


 令嬢は魔物達に癒され励まされて、少しずつ元気を取り戻していった。


 


「リリスは祝福することを恐れてしまっているけど、怖がらなくていい。」



 貧しいながらも穏やかな日常を過ごしている人々の夢だった。

 人々は皆、助け合い支え合い生きている。

 笑い合いながら食事をする家族、気遣い合う友人、互いを想い合う恋人。

 闇の魔物が見てきた光景なのだろう。


 令嬢は人の営みがこんなにも綺麗なものだと感じたことはなかった。

 闇の魔物が、人を好きだと言っていた気持ちがよく分かる。

 温かくて幸せな、キラキラした夢だった。

※予約投稿を失敗して未完状態で投稿しておりました。大変失礼致しました。

 下記に修正・完結させたものを再投稿しましたので、よろしければお読み頂けると幸いです。


↓完結版はこちら↓

https://ncode.syosetu.com/n8099ii/

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後がなんだかあらすじのような、箇条書きのような‥‥ラストを書くのに飽きちゃったのでしょうか?
[良い点] 最後が、ドトウの展開でしたが、人は立ち直れず、共倒れで魔王さんが幸せにしてあげたのですね。
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