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勇者と救世主の邂逅 Ⅰ
狐と狸の化かし合い。
一方は味方を囮に使って相手の力を知ろうとし、もう一方はどのような者かもわからぬ相手を呼び寄せるための派手なデモンストレーションをおこないながら戦場で待ち伏せる。
双方の知恵者がおこなった相手の顔を見ぬその戦いを表現するのにこれほどふさわしい言葉はないだろう。
だが、その性質上やむを得ないことではあるのだが、邂逅を望む双方の意志に反し、その戦いは始まってからしばらくはすれ違いが続いていた。
そして、十二日目。
ついにそのときが訪れる。
霧雨が降る中、グワラニーと彼の側近バイアが、彼の旗下のなかでは最高位のものとなる騎士という軍階級を持つコリチーバひとりを警護役として伴い姿を現したそこは旧魔族領マチンガを一望できる丘の上だった。