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「ディアナ……ディアナっ」
本当に、彼女はもうこの世にいないのだと、ずっと覚悟して納得していたはずだったのに。
今この瞬間、きっと初めて本当の意味で理解していた。
耳の奥に響いている君の声は永遠に残響のままで、どれだけ求めても返事が返ってくることはなくて、どれだけ手を伸ばしてもこの世界のどこにも君はいない。
もう二度と、私もずっと大好きだと、伝えることはできない。
「っ、ああっ、ああああぁぁぁああっ」
君さえ生きていてくれれば、何も要らなかった。どうして、もっとはやく。どうして。
彼女の心の欠片を抱き締めて、ただ泣いた。身を引き裂かれるように哀しくて苦しくて、息ができなくなっても、それでも私は生きていた。だから、生き続けなければならなかった。本当はもう、やるべきことなんて分かり切っていた。私が何から目を背け続けてきて、何を捨てきれなかったがために、何を失ったのか。
端末を立ち上げれば、指が勝手に動く。以前に監視カメラの映像で見た同輩や後輩の顔を思い浮かべながら、彼らの位置情報記録にアクセスする。この領域は例え特課であっても違法だったが、そんな事は今更な話だった。
今回の事件で判明した、ここ数年間の集金日の彼らの動線をこの街のマップ上に起こす。ケルベロス本部、集金先の拠点を除外して、最後に残る場所。一つだけ浮かび上がった倉庫街に、路上貸出のスクーターを走らせた。
今までの経験に従って探せば、隠された入り口とそのコードはすぐに見付かった。同じような隠し方をするなんて、ある意味セキュリティはザルと言わざるを得ない。特に見張りもなく、その空間に淡々と入り込んで、思わず息を呑んだ。
体育館のようにだだっぴろい空間に、天井までうず高く積まれた、黒光りする無機質な武器、武器、武器。統一政府の紋章もついていない、無印の明らかに禁制品であるそれらは、無造作に積み上げられている何の変哲もない小さな球体一つとっても、街の一ブロックは余裕で消し飛ばす事の出来るほどの破壊力を持った魔道具だった。
「戦争でも、するつもりか……」
呟いて、その言葉がやけに現実味を帯びていることに気付き、怖気が走った。
震えを誤魔化すように歩いていれば、魔道具だけでなく、魔法で改造されたと思しき人間の武器がそこかしこに見受けられる事に気付いた。
二一年前の真実
私はハッとして立ち止まった。現場に残されていた拳銃。この世に存在しない型。何度も何度も見た、飾り気がなく冷たい印象を与える、微かに青みがかった黒光りする銃身。
「あった……」
見付けて、しまった。どんなに探しても、この世のどこにも見つからなかった幻の拳銃が、こんなにもあっさりと、量産品のように積まれていた。
「はは」
乾いた笑いが喉奥から漏れ、広い倉庫内に虚しく溶けていく。
もう、充分だろう。ああ、もう、充分だ。
*
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