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サミュエルへ
この手紙を読んでるってことは、俺が記憶を失ったか死んじゃったということだと思います。前者であることを祈ってるけど、後者だったとしても、俺はいつも貴方の傍にいます。
気付いてるかも知れないけれど、銀の鍵が俺の言葉を開くっていうのは、半分本当で、半分は嘘です。同封されてる手紙は、母さんがサミュエルに宛てたもの。俺は読んでないから、何が書いてあるのかは知りません。読むも読まないもサミュエルの自由だけど、これだけは言わせて下さい。
母さんは、最後の最後まで貴方と話せなかったことを、本当に後悔してました。貴方のことを、本当に大切に想ってました。この箱に自分の心を詰め込んで、鍵をかけて、死ぬまでその鍵を持ってました。その事に関して俺が伝えたいのは、それだけです。
同封された鍵は……きっともう、分かるよね。二つ目は、俺の心を開く鍵。
もし貴方が俺を必要としてくれるなら、どうか俺を見付けて下さい。ただ、ここで告白を一つ。俺は二一年前の真実を知っています。最近になって確信が持てたばかりだけどね。だけど、サミュエルにはどうか、自分の納得の行くところまで調べて結論を出して欲しい。俺に答えだけ見せられても、きっと貴方は納得できないと思います。
だから、もう充分だと思ったら、俺を起こして下さい。もしも俺が死んじゃってるなら、今のは全部忘れて下さい。
言い残すことは、ないよ。生きてる間に全部、直接伝えてきたから。
それじゃあ、またね。愛をこめて、フェリックスより
二一年前の、真実。
脳の血管が切れそうなほどに、どくどくと血液の流れる音が聞こえていた。喉から手が出るほど欲しかった答えが、すぐそこにある。今すぐにでも駆け出したいのを懸命に堪えて、ディアナからの手紙に視線を落とす。十二分なまでに、背中は押された。
それでも震える手で封を切れば、懐かしく伸びやかで堂々とした文字が飛び込んできた。
最後まで楽しんでお付き合い頂ければ幸いです。
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