表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は彼女たちから逃げられない。  作者: 石田未来
第四章 茜と彼女たち
31/40

第四章 Ⅵ 中学時代…3人(過去編)

お久しぶりです石田未来です。

更新遅くなってしまい申し訳ございません。

1週間に1度更新していけるペースにして行きますので今後ともよろしくお願いします!


 中学二年生の秋、まだ茜が柚月と付き合う前の話である。

 まだその頃、部活にも熱が入っており茜はアーチェリー部ではなくバドミントン部に所属していたのだ。

(厳密に言うと、中学校にアーチェリー部そのものが存在していない)


「ふぅ……。今日も練習疲れたぜ……。」


 体育館の片隅で壁に寄りかかりタオルで汗を拭いていた。

 茜はまだ、今よりも身長は小さく少し幼げな顔をしているが、今と雰囲気は似ていた。


「お疲れさま。水いる?」


 汗を拭いコートをぼーっと見ている茜に誰かが話しかけてきた。

 黒髪でゴムで縛りポニーテールにしており、清楚な感じの少女が座り込んでいる茜に話をかけてきた。

 手にはミネラルウォーターが握られており、茜に差し出そうとしていた。


「清香か。ありがとう。」


 そう言うと茜はミネラルウォーターを受け取り口を大きく開けてガブ飲みをした。そんな茜をみて、クスッと笑う少女であった。

 彼女の名前は、姫柊清香ひめらぎせいか。バドミントン部のマネージャーをしているのであった。


「最近また強くなったよね?この前のオープン戦もいい結果だったし。」


「まぁ、負けるのは嫌だからな。それに、清香がサポートしてくれてるからだよ。」


 茜は、小学4年生からバドミントンをはじめており、めきめきと腕をあげているのであった。今では2年生ながらも3年を差し引いて大会で優勝したりしているのだ。

 清香も、茜をマネージャーとしてサポートしており、茜にとっては感謝すべき人物である。


「もう!恥ずかしいからそんなこと言わないでよ!照れるでしょ!?」


 顔を赤らめており恥ずかしそうにしていた清香をみて、茜は悪戯な笑みをうかべた。

 周りの人間たちは2人をみて「ほんと、ラブラブだよねー。」や「結婚してしまえ。」や、「死ね」(茜にのみの発言)との発言をしているのだ。

 それくらい2人は仲が良いのである。


 ――――――――――――――――――――――――――


 やがて、練習も終わり帰る時間となった。

 茜が部室から出てくると、制服に着替えた清香が待っていた。


「すまないな。待たせて。」


「いいよ。じゃあかえろ?」


 茜は清香に軽く謝ると2人で家路についた。

 校門をでようとした時、ふと後ろから2人を呼ぶ声がしたのだった。


「茜〜。清香〜。まって〜!!」


 2人はその声に気づき後ろを振り返ると、小走りでこちらへと来ている栗毛の少女がいたのだった。


「柚月か?あいつも部活今終わったんだな。」


「珍しいね?部活早く終わるなんて。」


 2人は見合って薄く笑っていた。慌てて出てきたのだろうか、制服がきちんと着こなせておらず、リボンが少し曲がっていた。


「2人とも酷いよ〜。私を置いていかないでよ?」


 茜と清香の2人の前で荒くなっている息を正すように深呼吸をした。

 そして、息が落ち着いたところで柚月は2人の顔をみて笑った。


「柚月も大変だね。合気道部今度大会でしょ?」


「そうだよ!何としても勝ちたいからね。そっちはどうなの?」


 柚月は清香から労いの言葉を貰った。この当時柚月は合気道部に所属しており、かなりの腕前であったのだ。

 そして、3人は幼馴染である。小学校からの付き合いなのだ。


「まぁぼちぼちだ。それより暗くなっているし、帰るか?」


 辺りは薄暗く、夕日が沈みかけていた。電灯もちらほら明るくなってきたのだった。

 茜の言葉に2人は頷き3人並んで帰ることにした。茜を中央そして右に柚月、左に清香という並びだった。


「ねぇねぇ、今度公園で遊ぼうよ〜。せっかく秋になって涼しくなってきたし、どう?」


「いいね。私お弁当作ってくるよ?」


「清香の弁当か〜。楽しみだな。」


 3人は今度の休日の予定を楽しそうに話していた。茜と柚月と清香。3人は毎日信頼できる幼馴染であった。毎日楽しく、飽きない。そう、あの時までは…。


「そう言えば、茜。今日誰かに告白されたでしょ?」


「な、なんでそんなこと知ってるんだよ!?」


 唐突に柚月が茜に際どい話をしてきた。

 というのも、今日の昼休みに茜は同級生の女の子に告白されたのである。

 その子は可愛らしい感じの娘であり、評判も宜しかった。


「え?そ、それ本当なの?」


 清香の話の内容に物凄い形相で食らいついてきた。それに、気を押された茜は、思わず体を仰け反った。


「あ、まぁ…。そうだな。でもあんまり加藤さんのこと知らないんだよな…。」


 その娘の名前は加藤緑かとうみどりという娘であった。茜とはクラスも一緒で席も近いが、そんなに話をするほどでも無かった。

 それなのに、自分の事が好きという加藤の事が不思議であったのだった。


「返事は何て言った…の?」


「それは……断ったけど…。」


 清香の顔が気のせいか少し怖くなっていた。眼力もなかなか強く嘘をついていないのに、言葉に躊躇いが現れた。

 茜のこのような色恋沙汰によく反応する清香であった。そしてそれをみてニコニコと楽しそうに笑う柚月。

 非常にバランスの取れた関係と言えた。


「そ、そうなんだ…。良かった……。」


「なんでお前がホッとしているんだよ?」


 茜の言葉を聞いた少しほっとした清香は顔にでていた。それを見ていた茜はそんな彼女の態度について尋ねた。


「茜ってスポーツとか勉強できるけど、他のところダメダメだからね。」


「む!ダメダメとはなんだよ!」


 清香からの酷評にムキになる茜。とはいえ、清香の言葉はあながち間違ってはおらず、勉強やスポーツ意外はダメなところがある。

 料理や家事がからっきしダメなのだ。それはもうただ笑うしかないほど…。


「確かに、あと鈍感だし。アホだし。何でだろうね?」


「お前ら…。」


 柚月の追い打ちに、茜はメンタルをやられてしまった。もし間違っているのならば反論するはずだが、合っていることからそれすら出来なかったのだ。


「まぁ、俺左利きだし?包丁持ったら危なっかしいとか言われるし?」


「こんな時に左利きなんて言い訳にならないよ?私だって左利きだから。」


 言い訳をする茜に、清香は決して隙を許すことは無かった。

 清香の言葉から、しゅん…としてしまう茜であった。まるで萎んだ風船のようになっていた。


「茜が、料理出来なくても私がいるから……。ふふ。」


「清香くらい料理上手くなりたいな〜。」


「柚月も上手いでしょ?」


「清香の方が凄いよ。」


 清香の料理の上手さを羨ましがる柚月であった。もちろん、柚月も料理は上手いのだが、清香の方が1枚上手であり、創作料理などレパートリーも多いのだ。


「いいね。料理の上手な奥さんっていいよな〜。」


 茜の一言に2人は茜の方を同時に振り向いた。その言葉にどちらも顔がほのかに紅くなっていた。


「茜は…その、どんな人が好きなの?」


 柚月は少し控えめに尋ねた。


「俺か?そうだな…。俺のことを想ってくれている人かな?」


「そうなんだ…。」


 その答えを聞いて、なんというか少し複雑な顔をする2人であった。

 3人はやがて、家が近づいてくると、皆それぞれの帰路へと向かおうとした。その時、清香は柚月に話しかけてきた。


「柚月。ちょっといい?」


「どうしたの?」


 清香に呼ばれた柚月は手招きをする彼女の方へと歩いていった。

 すると柚月に茜に聞こえないほどの大きさで耳打ちをしていた。すると柚月は衝撃を受けたような表情をしていた。

 そして、清香は耳打ちを終えると、自分の家へと、帰ったのだった。


「おい?柚月どうしたんだよ?」


 ぼーっと立ち尽くす柚月に茜は声をかけた。

 それに気づいた柚月は何事も無かったかのような表情をして平静を装った。


「な、なんでもないよ!」


「なにか清香に言われたのか?」


 いつも通りの表情をしているとはいえ、どこか違和感のあるその表情に茜は気になっていた。


「ほんと、何でもないの!じゃあ、私こっちだから。じゃあね!」


 特に何も言わずに茜に別れを告げると彼女もまた清香同様、自分の家の方へと帰ったのだった。


「何だったんだろう?まぁ、何も無いならいいか?」


 柚月の表情に違和感を持ちつつも、特に考えようとはせずに、家へと帰ることにした。



 ――――――――――――――――――――――――――


「ただいま…。」


「おかえり茜。ご飯にする?お風呂にする?お姉ちゃんにする?」


「じゃあ風呂で」


 家に帰ると茜の姉の翠が出迎えてくれた。相変わらず美人であり、胸が大きかった。

 顔も茜と似ているところがあり、彼女ににている茜は女装をすればそっくりであるほどだった。

 茜は翠のジョークを特に相手にせず、風呂に入ることにした。


「少しくらい反応しても良いでしょ?茜のいじわる…。」


「だってきついもん…。」



 こんなことはいつものことである。茜には翠以外には家族が存在しない。だからこそ、2人でも楽しく生活しようとしているのだ。

 茜は翠には感謝しているし、大好きである(家族として)。

 茜は風呂場に向かおうとすると、突然翠に呼び止められた。


「茜。待ちなさい…。」


 急に声が低くなり、背筋が凍るような恐怖を感じた。


「あなたの身体から女の匂いがするんだけど、どういうこと?」


 笑顔の翠であったが、顔が全く笑っていなかった。そんな姉をみて身の危険を感じた茜ははぐらかそうとした。


「多分あれだよ。清香と柚月だよ。」


 確かに、帰りに2人と帰っていたため必然的にそうなる。しかし、抱き合ったわけでもないため匂いなど普通着くはずが無いのだが、翠には分かるのだった。


「確かにあの女たち(・・・・・)の匂いがするけどその他にもいるでしょ?」


 翠の嗅覚は鋭かった。茜も2人までは想定内であったが、まさか他の女子の匂いまでも分かるとは、自分の姉でありながら恐ろしさを感じていた。


「いやいや、ほんとなんでもないって!それより風呂入ってくるから!」



 そう言うと茜は風呂場へと行ってしまった。

 風呂からあがるとご飯を食べてすぐに眠りについた。




 何でもないような今日という日が、いわゆる今までの日常を崩壊させる、前触れだったのかもしれない…。

 そして茜たちにそれぞれ微妙な変化をもたらすことになったのだった…。







中学時代の茜の回想でした。

茜には柚月ともう1人清香という幼馴染がいました。さていったいどのようになっていくのでしょうか?


続きはまた来週に更新します。

※(あくまで今回の話は茜視点なので、不明瞭な点があったりしますが、ご了承ください。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ