第四章 Ⅶ 中学時代…ヒビ割れ(過去編)
お久しぶりです!石田未来です!
遅くなり申し訳ありません。
今回は回想編第2です。茜のこの先に関わっていく回となっています。
次の日いつも通りの学校生活を送っていた茜だったが、どうも柚月がいつもと違うと感じていた。
いつもなら、話しかけてきたりするものだが、妙によそよそしく近づく素振りもなかった。
そして清香も、柚月程ではないものの、少しよそよそしかった。そして、学校へ行く途中に帰りに校舎裏の小屋近くに来て欲しいと告げられたのだった。
「柚月のやつ変だな…。なんかいつもと違う…。」
机でもじもじしている柚月はたまに茜の方をみたり引き出しの中を見ては何かを触ってあたふたしていた。
友人である堂本と話している時、ふと誰かから声をかけられた。
「加賀美くん。どうしても昨日の話だめかな?」
振り向くとそこには、昨日告白された女子の加藤緑の姿があった。
学級委員も務めている彼女は、クラスのみんなから信頼されており、またそのルックスからも男子から憧れの的であった。
黒く手入れの行き届いたボブカットヘアに赤いヘアピンをつけていた。
昨日告白された茜だが、断っていた。そのため気まずかったのだが、話しかけられた以上答えるしかなかった。
「ごめん加藤さん…。君とは付き合えない。」
「どうしてなの?好きな人でもいるの?」
茜は改めて返事をするものの、彼女も食い下がろうとはしなかった。と言うよりも納得のいかない表情をしていた。
困り果てる茜を見て察した堂本は加藤にとんでもないことを口にした。
「茜には柚月ちゃんと清香ちゃんがいるからな。」
堂本にとっては、茜を助けるつもりで言ったのであろうが、益々自体をややこしくすることになった。
堂本の言葉に茜は表情が固まった。いや、どう反応したらいいのか分からないのだ。
だが、加藤はその話を聞きさらに追求してきた。
「その話本当?どっちかと付き合っているの?」
「いや、別に…。そういうわけでは…。」
「それならどうして告白を断るの?ちゃんと教えてくれないと私、納得できないよ?」
加藤は今にも泣きそうになっていた。それに気づいた教室にいる連中は、加藤が泣いているのをみて茜はを一斉に非難してきた。
「茜てめぇ!!!委員長を泣かせてんじゃねぇよ!?殺すぞ!!」
「加賀美くんひどーい!付き合っちゃえばいいじゃん!」
「そうだよ!茜くんと委員長お似合いだよ?」
みんなそれぞれを意見を茜に述べた。流石に収拾つかなくなると思った茜は場所を変えることにした。
…
…
「それで加藤さんさっきの話だけど…。」
クラスの人間の殆どから非難を浴びた茜は加藤を連れて校舎裏へとやってきた。
加藤はまだ納得のいかない表情をしており、茜としても対応がしづらい状況であった。
「茜くんは、柚月ちゃんと清香ちゃんのどっちが好きなの?」
「いや、俺は別に…。」
先ほどクラスで話していた内容を再びふってきた。加藤は良くいえば、納得のできない事には納得するまで取り組み、悪くいえば、異常な行動をしたりするのだ。
「そんなわけないでしょ?私知ってるんだよ?3人が仲いいって。だからもし、2人のどちらかが好きなら私も納得できるの。」
「確かに仲が良いけど、だからってそういう気持ちは…。」
茜は今まで考えたことがなかった。幼馴染である柚月と清香にそのような気持ちを抱いたことはない。
いや、もしかしたら知らないうちに、意識しているのではないかと少し感じている。
だが、それが本当に恋心なのか分からない。
「ならどうして?どうして私はダメなの?理由を教えて?」
笑顔で加藤は茜に尋ねるが逆に不気味に感じた。彼女の追求を止めるにはそれ相応の理由が必要である。だが、茜にはそれがない。
ただ一つ言えるならば、加藤に恋愛感情がないということだけである。
「加藤さん。どうしてそこまで俺にこだわるんだ?俺より他にもっといい奴はいるだろ?」
「いないよ。茜くんはいつも私を助けてくれるでしょ?先生からの頼まれごとも手伝ってくれるし、いやな仕事も引き受けてくれる。そういう所を好きになったの。」
茜は学級委員長である加藤を気遣って仕事を手伝ったり、他の生徒がやりたくないようなことまで引き受けていたのだ。
もちろん、茜にとって、友達を助ける当然の事だと思っているため、あまり気にしていなかったが、加藤にはそれが好きになった一因であったのだ。
「加藤さん。俺は…俺は…。」
茜は言葉に詰まった。そこまで自分のことを思ってくれているのに、きちんとした理由も言わずにふるなど失礼きわまりなかった。
しかし、それでも加藤とは付き合うことができない。茜の脳裏に2人の顔がでてくるからだ。
キーンコーンカーンコーン…
その時、茜を助けるかのように昼休み終了のチャイムがなった。
「ごめん!次体育で準備しないといけないからいくね!」
「ま、まって!」
加藤は茜を引き留めようとしたが、その声は届くことはなかった。いや、届いていたのだが、それを茜は聞きたくはなかったのだ。
「はぁ…はぁ…。ごめん…加藤さん。」
校舎裏から走ってきた茜は、軽く息がきれていた。いつも鍛えているとはいえ、緊張もあり疲れがでてきたのだ。
「俺が好きな人って…誰なんだろう…。」
校舎の中へと入っていた茜は、自問自答をしていた。加藤から言われた言葉に茜は一つの迷いが生まれていた。
柚月を選ぶか、清香を選ぶか…。決して簡単なことではない。何せ、茜と柚月と清香は小学校からずっと仲が良かったのだ。
いつも3人で遊んで、笑って、ずーっと一緒だった。できることならいつまでもこのままでありたい。茜はそう思っていた。
だが現実は違う、思春期に伴って恋心というものが生まれてきた。それは茜に心境の変化をもたらしている。
「俺って最低な奴だよな…。」
茜は虚しい顔をして、ぽつりと一言呟いた。その言葉には妙な重苦しさが感じられていた。
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その後4限まで授業は終わり昼休みとなった。しかし茜はどうも食欲が湧いてこなかった。
いつもはおかわりをするはずの給食もこの日は、全く喉を通らなかった。それだけではない。
先ほどの出来事を気にしている茜は加藤の方をチラチラと見ていた。
加藤は至って普通であるが、逆にその普通さが不気味に感じていた。
「茜どうしたの?具合でも悪いの?」
「いや、何でもないよ…。ちょっと今日はお腹空いていないんだ。」
茜を心配して柚月が心配そうな顔をし話しかけてきた。
それに対して茜は心配かけまいとなんとか笑顔を作った。しかし、それでも柚月はうかない顔をしていた。すると何か思ったのか、柚月は茜に顔を近づけ、甘い息で耳打ちをしてきた。
「もしかして、委員長のこと…?」
その言葉を言われた瞬間、茜の心臓は大きく波を打った。やはり、柚月には見透かさていた。
そして同時に、加藤に言われたことを思い出していた。
「茜くんは、柚月ちゃんと清香ちゃんのどっちが好きなの?」
「…。俺は…。」
思い出された言葉に茜は激しく悩まされた。そして、柚月の顔を見ると胸が締め付けられた。
柚月とは、一緒にいると楽しい幼馴染である。かたや、清香はこの街で最初に出会った友達であり、一緒にいると癒される幼馴染である。そして2人は茜にとってかけがえの無い存在である。
どちらも失いたくないのだ。
「あ、あのね…。茜。今日、授業終わったら校舎裏に来てくれない?」
様々な考えが巡っている茜に、柚月は一言言ってきたのだった。
「え?」
茜は目を丸くした。あまりに突然なことに大げさなリアクションも出来なかった。と言うよりも、余裕がなかった。
しかし決して聞いていなかった訳では無い。しかし、その内容に信じられないのだ。
(清香と言っていることが似ている…。)
昨夜の帰り際に清香に言われた言葉とそっくりであったのだ。そしてその指定した場所まで同じである。
「すまん、清香に放課後そこに呼び出されているんだよ。」
「すぐに終わるから大丈夫だよ!」
断ろうとするものの、清香はそれをさせなかった。彼女がそこまで必死になるのにはどのような理由があるのか?それは茜にはわからなかった。
「わかった…。」
強い押しに負けた茜は、渋々承諾した。しかし、清香との約束もあるため手短にすまさなければならない。
「ありがとう。」
柚月は笑って答えた。しかし、その笑顔はいつも見せている笑顔とは少し違っていた。
「…やっぱり…。」
茜と柚月の二人の姿を遠目で見ていた加藤は、一言呟いた。
―――――――――――――――――――――――
放課後、茜は柚月に言われた通りすぐに校舎裏へと靴に履き替えてきた。
するとそこには既に栗毛の髪色の少女が待っていた。
「遅れて悪かったな。それでどうしたのか?」
茜は一言謝りをいれて呼び出されたことについて尋ねた。
「茜はさ、小学校からの幼馴染で今までやって来たよね。一緒に遊んだり、喧嘩したりさ…。今までずっと…。」
「ん?そうだな。小学校三年俺がこっちに来てずっと一緒だったよな。」
柚月の言葉に茜は、少し不思議さを感じながらも答えた。彼女の言う通り、今まで一緒だったこともあり、色々な事があった。
「中学校に入ってから一緒にいれる時間は減ったけど。それでも茜といる毎日は楽しいよ。」
そう言うと柚月は胸に手をあてて深呼吸をし始めた。数回深呼吸を済ませると閉じていた目を開けてそして…
「茜。良かったら私と付き合ってください。」
茜は呆然としていた。今彼女は何と言ったのだろうか?理解が追いつかない茜は、先ほどの言葉を思い出していた。
「付き合ってください。」
確かに茜にはそう聞こえた。ということは、柚月は茜の事が好きということである。
今まで幼馴染として接してきた彼女からの告白。
そして、柚月の今にも泣きそうな顔を見て茜は、心臓の鼓動が激しく乱れた。今まで味わったことのない胸の痛みに、茜はあることを確信した。
自分も「柚月のことが好きだ。」ということであったそして、茜は泣きそうな柚月の顔を見て頭をそっと優しく撫でた。
「柚月。俺、今気づいたよ…。俺も柚月のことが好きだ。こちらこそ付き合ってくれないか?」
柚月はその言葉を聞いて、目から涙がポツリポツリと頬を伝っていた。その涙は歓喜の涙であった。
その証拠に、彼女は笑っていたのだった。
「これからよろしくね!茜!」
そう言うと、柚月は歓喜のあまりに茜の胸へと飛び込んできた。
とっさに彼女を抱きしめた茜は少しよろけコケてしまった。しかし、2人とも楽しそうに笑っていた。
「何…やっている…の?」
楽しそうに笑っている新カップル2人はその声に驚き同時に振り向いた。するとそこには、ロングの黒髪の美少女が困惑した表情をして立っていた。
「清香…。」
茜はその人物を見た。そして、嬉しさのあまりに忘れてしまっていたもう一つの用事について思い出した。
清香にもここに来いと呼ばれていたのだった。
「ねぇ…。何してたの?答えて。」
彼女の言葉に気のせいか、怒気のようなものが混じっているような気がした。
そしていつも優しげな目をしているが、今日は明らかに違っていた。冷たくそして殺意のようなものを感じた。
「それは…、なんて言うか…。その…。」
茜は、柚月と付き合うことにしたと口にしたかった。しかし、どうも口が動かったのだ。清香の眼差しが口を動かさせなかった。
「私たち付き合うことにしたの。」
言い出せなかった茜の代わりに、柚月が清香に今の2人の現状について話した。そして柚月は今まで泣いていた顔も一変真面目な顔になり、清香を見ていた。
「どういう…こと…?茜と…柚月が付き合って…いる?」
清香は今まで冷たい目をしていたのが、驚きで目が丸くなり信じられない様な表情をしていた。
そして暫く何も喋らず下を向いて何かをブツブツ呟いていた。その姿はいつもの彼女らしさが無く、不気味に感じられた。
「清香…?」
茜は心配になり声をかけるが、彼女は応答をしなかった。まるで自分の世界に入っているようで、まるで聞いていなかった。
「…さない。…対…さない…。」
「え?」
清香の口から何かが聞こえた。しかし、彼女の声が小さすぎてよく聞き取ることができなかった。
もう一度聞き直そうと思ったが、清香は俯いていた顔をあげてニッコリと笑っていた。
「おめでとう。2人とも。幸せにね?」
「…!」
この時茜は何か不気味さを感じていた。彼女の笑顔には何か裏がありそうで、聞きたくても聞くことができなかった。
はじめて見る彼女の不気味な笑顔に、茜は身体を強ばらせて見ることしかできなかった。
そして、お祝いの言葉を述べると彼女は背を向けて帰ろうとしていた。
「清香、用事ってなんだったのか?」
茜は去っていく彼女の背中に対して呼び出されたことについて尋ねた。すると立ち止まり茜の方を振り向いて一言
「大丈夫だよ。全部わかったから。」
それだけを言うと、再び背を向けて行ってしまった。
彼女は不可解な言葉だけを残した。何が全部分かったのか、茜にはわからなかった。
ただ、柚月はどうしたのか、雰囲気が暗くなっていた。いや、何かに対して苦しそうにしていたのだった…。
その後、柚月のことを気遣い彼女の家まで送ることにした茜であった…
この時まだ茜は気づくことはなかった…。あるものにヒビが入っていたことに…




