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勘違いだらけの異世界転生生活 〜スキル【勘違い】だけで何をしろと? 最弱なので助けてください〜  作者: 杜鵑
第4章:神様(クソ爺)にクレームを入れに行ったら、うっかり全神話の創造主(トップ)に祭り上げられた件
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第60話 俺の異世界スローライフ(強制帰還)〜神界をログアウトして、実家のこたつでゲームする〜

「もういい。牛丼の汁は俺が雑巾で拭くから、お前らは一歩も動かず大人しくしててくれ……」


俺はカビ臭い六畳間の床に這いつくばり、畳に染み込んだ特盛の牛丼の汁を必死に拭き取っていた。


部屋の隅では、コタツの脚に手錠で繋がれた大天使(監査官)がシクシクと泣いている。

その横には、ブリーフ一丁で正座する全宇宙の創造主(クソ爺)。


そして、俺の周りでは仲間たち(ポンコツ)が相変わらずのマイペースを貫いていた。


「……お兄さん、雑巾がけえらい。……ご褒美に、この紅生姜あげる。あーん」


「アリス! 畳に落ちた紅生姜を俺の口に突っ込もうとするな! それはもうゴミだ!」


「……ジン。大天使の身代金交渉、防衛局本部に通達した。……要求額は神界の国家予算十年分」


「ルナ! 勝手に国家レベルの誘拐事件に発展させるな! 俺はただ昼飯を食いたかっただけなんだよ!」


カオス極まる状況下で、俺は激しい胃痛をこらえながら、コタツの上に落ちていた『神界管理端末(ヒビ割れたス〇ホ)』を手に取った。

さっき出前を頼むために開いた画面のままだ。


「(頼む、出前アプリがあるなら、絶対に『アレ』もあるはずだ……!)」


俺は祈るような気持ちで、ス〇ホの『設定』アイコンをタップした。

システム管理メニューをスクロールし、一番下までスワイプする。


そこにあったのは、輝かしい希望の文字。

『ログアウト(初期登録座標へ強制帰還)』という、見慣れた赤いボタンだった。


「……あった。あったぞォォォッ!!」


俺は歓喜のあまり、牛丼の汁が付いた雑巾を放り投げて立ち上がった。


「見つけた! 帰還ボタンだ! これを押せば、俺は実家の自分の部屋(初期座標)に帰れるんだ!」


俺の魂の底からの叫びが、六畳間に響き渡る。

しかし、その『ログアウト宣言』を聞いたクソ爺が、顔面を土気色にして叫んだ。


「ひ、ひぃぃぃっ! 待つんじゃ! 今、最高管理権限を持っておるお主がログアウト(不在)になれば、この宇宙のシステムは誰が維持するんじゃ!」


「知るか! お前らで勝手に再起動でも何でもしろ! 俺はもうこんな理不尽な世界はウンザリなんだよ!」


俺がス〇ホの画面に指を伸ばそうとした、その時だった。


「(……ッ! 肉体という器を捨て『ログアウト(=概念的昇華)』を果たし、全次元を覆う真の神になられるおつもりか!)」


メリルが感極まった表情で、美しい銀髪を振り乱して俺の前にひれ伏した。


「(このカビ臭い六畳間すら捨て置き、すべてを遍く見守る『概念』となる……! マスターの最終進化、私メリル、この目にしっかりと焼き付けます!)」


「違う! ただ実家に帰ってゲーム機起動したいだけ! 概念とかそんな高尚なもんにならないから!」


俺のツッコミは、狂信者の耳には一切届かない。

そして、俺が帰還ログアウトすると悟ったルナとアリスが、恐ろしい行動に出た。


「……ジンが概念になる前に、物理的な資産(内臓)を売却する。……麻酔なしでいく」


「……お兄さん、いなくなっちゃうの? ……じゃあ最後に、お兄さんの足の指、ちょっとだけかじっていい?」


「お前ら! 別れの挨拶が臓器売買とカニバリズムってどういうことだよォォォッ!」


臓器を狙う盗賊と、捕食しようとする大魔導士から逃げるため、俺は必死にコタツの周りをグルグルと回り始めた。



「待て! 頼むから俺の臓器を狙うな! 俺はただ健康な体のまま、実家の六畳間に帰りたいだけなんだよ!」


俺はヒビ割れたス〇ホ(神界管理端末)を握りしめ、カビ臭い畳の上を全力で逃げ回った。

背後からはメスを持ったルナと、ヨダレを垂らしたアリスがゾンビのように追いかけてくる。


「(くそっ! 早くこの『ログアウトボタン』を押さなきゃ、本当に解体されて素材として売られちまう!)」


俺は走りながらス〇ホの画面をタップしようとしたが、指が牛丼の汁でヌルヌル滑って反応しない。

どうやら神界のシステムは、物理的な生体認証か『承認印』を要求しているらしい。


「……ジン、無駄な抵抗はやめて。……心臓だけなら、三秒で綺麗に抜き取れるから」


「それが一番致命傷なんだよ! 俺の命をフリマアプリに出品しようとすんな!」


俺はポケットから、すべての元凶にして神界をバグらせた百均の『三文判(シ〇チハタ)』を取り出した。

これを使って、ス〇ホの画面に直接承認スタンプを押すしかない。


「よし、これで俺の理不尽な異世界生活も終わりだ! さらばポンコツども、俺は元の世界で新作ゲームを徹夜でプレイする!」


俺は三文判を振り上げ、勝利の宣言と共にス〇ホにハンコを叩きつけようとした。

だが、その『新作ゲームを徹夜でプレイする』という小市民的な捨て台詞が、クソ爺の耳には最悪の終末宣言として響いた。


「(ひ、ひぃぃぃっ! 今の宇宙セーブデータを捨て、自らの手で『新たな盤面(新作ゲーム)』を創造するおつもりか!)」


ブリーフ一丁の神様は、俺が全次元の神々を駒として遊ぶ、狂気のゲームマスターになると勘違いして震え上がった。


「(徹夜でプレイ……すなわち、この宇宙の時間が終わるまで永遠に我々を弄り続けるという絶対支配の予告!)」


「違う! ただのRPGだよ! お前らを駒にして遊ぶ趣味なんかないから!」


俺の悲痛なツッコミは、またしてもメリルの狂信翻訳によって最悪の神託に上書きされる。


「(おおお……! 自らの帰還の儀式にすら、この『百円の魔印(三文判)』という因果律兵器を用いられるとは!)」


メリルは感動のあまり、牛丼の汁が染み込んだ畳に額をこすりつけた。


「(我々のような下等な存在の命運すら、その漆黒の筒一つで決定づける……! これぞ新世界の絶対神!)」


「だからただの事務手続きのハンコだよ! 俺を恐ろしい独裁者みたいに言うな!」


俺が走りながらツッコミを入れた、まさにその時だった。


「……ひゃんっ!?」


俺の足が、コタツの脚に手錠で繋がれてシクシク泣いていた、大天使ミカエルの純白の六枚羽に見事に引っかかった。



「うわぁぁぁっ!?」


俺の足が、コタツの脚に繋がれて泣いていた大天使ミカエルの純白の六枚羽に、見事に絡まった。

そのまま俺の体は、コントのお手本のような美しいフォームで宙を舞う。


「ああっ! 俺の帰還チケットがあぁぁ!」


その勢いで、俺の左手から『神界管理端末(ス〇ホ)』が、右手から『百均のハンコ』がすっぽ抜けた。

俺の異世界脱出の希望が、カビ臭い六畳間の空中へと放り出される。


空中を舞ったス〇ホは、そのままコタツのど真ん中、みかんの横にピタンと画面を上にして着地した。

そして、百均のハンコは天井の裸電球にクリーンヒットし、カーンと甲高い音を立てて跳ね返る。


「……お兄さんが落とした黒いチョコ、もらうね。あむっ」


アリスが空中のハンコを食おうと飛びついたが、硬いプラスチックは彼女の歯に弾かれ、さらに軌道を変えた。

跳ね返ったハンコは、今度は俺の臓器を狙うルナが構えていたメスの腹に、キンッとぶつかる。


「……ジン。ログアウト端末、私が横領して裏市場に……」


ルナがコタツの上のス〇ホを奪おうと手を伸ばした、まさにその瞬間だった。

幾重もの反射ピタゴラスイッチを経た百均のハンコが、コタツの上のス〇ホ画面に向かって垂直に落下したのだ。


スターンッ!!


「……え?」


ス〇ホの『ログアウト』ボタンのど真ん中に、見事なまでに『霧雨』の朱肉が押印された。

寸分の狂いもない、完璧すぎる電子署名(物理)の完了である。


『ピロッ♪ 生体印(シ〇チハタ)の認証を確認しました』

『これより、最高管理者のログアウトシーケンスを開始します。初期座標(実家の六畳間)への強制転移を実行します』


無機質なシステム音声が響いた直後、俺の足元に凄まじい光の魔法陣……ではなく、巨大な『ロード画面の砂時計』が出現した。

俺の体が、足元から徐々に光の粒子ポリゴンへと変換され始めている。


「お、おおお! ついに帰れる! 俺の長かった異世界(クレーム処理)生活が終わるんだ!」


俺が感動のあまり涙を流していると、それを見たメリルが狂喜乱舞して叫び始めた。


「ご覧ください! マスターが自らの存在を因果律兵器で打刻し、神の領域を超越しようとしておられる!」

「もはや肉体などという不便な器を脱ぎ捨て、全次元を統べる大いなる概念インターネットそのものになられるのですッ!」


「だから違うって! ただ実家にロードされてるだけだよ! 概念(W〇-Fi)にならないから!」


俺の最後のツッコミすら、光の粒子となって実家へと転送されようとしていた。

だが、帰還の光に包まれる俺の耳に、システムがとんでもないエラーメッセージを吐き出したのが聞こえた。


『警告。管理者のインベントリに【神界の六畳間】および【室内の全エンティティ(神、天使、仲間)】が紐付けられています』

『システムの仕様上、ログアウト時にすべて同梱して【実家の六畳間】へ強制転送します』


「……は?」


俺の消えゆく意識が、そのふざけたアナウンスに激しく反応した。

そして、光の粒子の向こう側で、ブリーフ一丁の神様と大天使が絶叫する。


「ひぃぃぃっ! 神界のシステムごと、ワシらを別次元に拉致(お持ち帰り)する気かァァ!」

「い、嫌ぁぁぁっ! コタツに繋がれたまま見知らぬ惑星に連れ去られるなんてェェェ!」


俺は光に飲まれながら、この異世界ポンコツたちが、まるごと俺の実家へ出前されるという絶望的な事実を悟ったのだった。



「……ん? ここは……」


俺はゆっくりと目を開けた。

見慣れた木目の天井と、シミのついた色あせた壁紙。


間違いない。ここは日本の実家、俺の愛すべき六畳間だ!


「やった……! 帰ってきたんだ! あの理不尽な異世界生活が、ついに終わったんだ!」


俺は歓喜の涙を流しながら、実家のコタツから勢いよく立ち上がった。

これでやっと、平和に新作ゲームをして、深夜アニメを見るスローライフが送れる。


そう確信して大きく伸びをした、その瞬間だった。


「おお……! ここがマスターの真の領域、神々の手の届かぬ『超高次元の聖域ニホン』……!」


背後から、美しい銀髪を揺らすメリルの、感動に打ち震えた声が響いた。


「……え?」


俺が恐る恐る振り返ると、そこには絶望的な光景が広がっていた。


「……ジン。この四角い箱(プレ〇ステーション)、未知の魔導具。……闇市で高く売れる」


「……お兄さん、この薄っぺらい本(エ〇本)、美味しい。……ちょっと塩味がする」


ルナが俺の大切なゲーム機を質に入れようとし、アリスがベッドの下に隠していた秘蔵の薄い本をムシャムシャと食べている。


さらに部屋の真ん中では、俺の実家のコタツの脚に、大天使とブリーフ一丁の神様が手錠で繋がれたまま正座していた。


「ひぃぃぃ! 神界ごと、こんな魔境に拉致されるとは……! ワシら、ここで解体されて食われるんじゃあぁ!」


「誰か……防衛局本部に応援を……! コタツの魔王の拠点に連れ込まれましたぁぁっ!」


「お前らなんでついてきてんだよォォォッ!!」


俺の鼓膜を破るような絶叫が、日本の閑静な住宅街に響き渡った。


ログアウト時の『同梱』というふざけた仕様のせいで、神界のVIPルームにいた全員が、俺の実家に強制転送されてしまったのだ。


「(……ッ! 旧き神と法を自らの玉座(実家)に幽閉し、永遠の服従を誓わせるというのか!)」


メリルが実家の畳に額をこすりつけ、最上級の敬意を表して平伏する。


「(全次元の頂点に立ちながら、あえてこの狭き空間(六畳間)に身を置く……! これぞ、絶対神の究極の到達点!)」


「違う! ただの実家だよ! 俺のパーソナルスペースをこれ以上荒らさないでくれ!」


狂信者、守銭奴、腹ペコ大魔導士、ブリーフの神、そして泣きじゃくる大天使。

日本の六畳間に、宇宙の全カオスが圧縮されている。


俺の胃壁が、異世界にいた時よりもさらに激しい痛み(ビッグバン)を起こしたその瞬間。

脳内に、あの聞き慣れた無機質なシステム音声が鳴り響いた。


『ピロン♪』

『全クエストの完了を確認しました。称号【コタツ魔王(警察の天敵)】が【全次元の創造主(実家暮らし)】に進化しました』


「どんな最悪なラスボスだよ! 俺はただ一人でゲームがしたいだけなんだよォォォッ!!」


俺の悲痛な叫びは、またしても誰の耳にも届くことなく、実家の天井へと空しく吸い込まれていくのだった。

俺の(理不尽な)異世界スローライフは、まだ始まったばかりだ――。

ついに堂々の完結です! 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

無事に実家へログアウトできたと思いきや、神界の住人全員を「実家の六畳間」に拉致(同梱)してしまうという、ジンらしい最高のオチがつきました!

これから日本の実家で始まる『全次元の創造主(実家暮らし)』の理不尽な新生活を想像して笑っていただけましたら、ぜひ最高の応援としてページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと、作者の執筆の励みになります!

長い間、ジンの胃痛の旅を見守ってくださり、ありがとうございました!

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