第18話:〔羊たちの静観〕
前回のあらすじ
幼少期をハヤト、セリカと共に過ごしたカズキは抑圧された環境で育った。自分を模ったニセモノの存在、裏で行われる非道な行いに気づいた彼はこの怒りを終わらせるべく幼少期からの計画を実行に移そうと画策していた。
一方惑星メルタに駐留するシェオルも人間を疑いはじめた獣人シアンと話し合いを続け、友好関係を保とうと働いていた。
シープだらけの星雲の奥深く。クラスターシープの内部では――。
「まさかあの包囲網から抜け出せるとは。いったいどこの――」
「いったいどこのどいつが俺のフリしやがった!?」
名も知れない隊員が発した声をさらに上回る声量で中隊長が怒鳴った。ヘルメットを被っているため顔はあまり見えない。だが怒っていることだけは耳元のスピーカーからよく分かった。彼はホルスターから実用性のカケラもない金色の豪勢な回転式拳銃を手にして終始激昂している。危機を脱してきたばかりの煤だらけの機体に歩み寄っては小突いてまわっていた。
「緊急時とはいえ、さすがにやりすぎたか……」
ハヤトはダミアンに搭載されたヘルメットのインジケーターを確認しながらこのあと始末に悩んでいた。それだけではない。残った車両はAST-1が1両だけ。ここにくるまでにも度重なる連戦によって武器の喪失、損傷によって機体性能は74%にまで落ちてしまっている。ほかの機体も程度の差はあれど、先の戦いを考えるとかなり厳しい状態だった。
「命令違反ではないだろうけどねぇ? グレーゾーンなことはやってたからねぇ……」
灰色に薄汚れた装甲の中でミシロと話し合った末にハヤトは覚悟を決めてため息をついた。前にすすんで手を上げる。
「俺がやりました」
ハヤトは歪んで鈍くなった機甲服を軋ませながら中隊長の元へ出向こうとした。だがその必要はなかった。
「おまぇかぁ――ッ!!」
全身グリーンのアーマーを身につけた中隊長はシープ由来の硬化植物を勇み足で踏み砕きながらハヤトに近づいた。そして胸ぐらに手をかけて新兵にやるように揺さぶった。けれど彼の背丈より大きな装甲兵はびくともしない。
中にいるハヤトは正面モニターにアップした真っ赤な顔に困った。非常時とはいえ中隊長を名乗ったのはさすがに不味かった。小隊長ならチラ隊長の代わりという言い逃れも出来たのだが――。
ハヤトは悩んだ末に苦し紛れにこう答えた。
「あのままでは全滅は免れなかった。これは共同作戦で指揮権は陸戦隊とは別にある。あなたの部下が勝手についてきただけにすぎません」
「なんだと? お前たち! なんで着いて行った!? 指揮官はこの俺だ!」
どうにかヘイトを彼の隊員たちにむけてやりすごし、ハヤトは治療を受けているチラ隊長の元へ逃げた。
「隊長。怪我の具合は? 現在位置はコアから3キロ地点。これ以上の襲撃がなければあと数時間で着く位置です」
ハヤトは担架の上で休む少女に現状を報告しながら同時にこの先のことを考えていた。仮にコアまで辿り着いたとして、コアを破壊した途端にクラスターシープが崩壊する。時間差で起爆装置をセットしてもそれで終わりではない。敵の中から帰りのロングソード級突撃艦に合流できる安全エリアまで移動しなければならない。負傷者を運べる車両はたった1両で、ここにいる全員はどう頑張っても乗れない。仮に船に乗れたとして、外はすべて敵。見つかった瞬間に全方位から破壊光線を浴びせられる。またシープを捕まえるだけの時間があるのかさえ分からない。
陰鬱とした雰囲気のなかでチラの後ろに立っていた隊員がヘルメットの耳元に手を当てる。
「レーダーに新たな反応! 左右方向! 敵が壁のようにせまってくる!」
「襲撃がなければ……か。 ねぇわけねぇだろ……敵の体の中なんだからよ。どっからでも湧いてきやがる……」
頭に包帯を巻いたチラは苦しそうに弱音を吐いた。だがハヤトは違った。
「まだ勝機はある。追いつかれるより先にコアに爆弾をセットして船で帰ってしまえば勝ちだ」
ハヤトはそこまで言ってから中隊長の存在を思い出して言葉を切った。
「気にせずやりな。シュヴァリエは陸戦隊に従う必要もねぇしな」
それを聞いたハヤトは顔色を明るくして無防備に停車していたAST-1の運転席に乗り込んだ。目的地をインプットしたアビリティ端末をナビシステムに繋げ、帰還地点に設定した。
「なにする気だ?」
担架を持ち上げられ、地面に寝ていたチラ隊長は車両の後部に運び込まれた。さらに歩けなくなった隊員の担架も車両に積み込まれていく。
「おい! 聞いてるのか!?」
「負傷者は先に帰ってもらう」
「置いていけばいいだろ……。私はそうした……」
「幸いにも余裕がある。帰れる保証もないしな。訓練ではミシロや多くの仲間を傷つけた。罪滅ぼしかもしれないが――。すこしでも生き残ってほしい」
ハヤトはそう言っていく先を見つめた。ひらけた大地のさきに灰色の半球が空に光をのばして埋まっている。
「あ! おまえ! なにやってる!」
中隊長が作業に気づいて怒鳴りかかってくる。ハヤトは向き合って頭を下げた。
「中隊長。彼らを先に帰還させる許可をいただきたい。ここから先は包囲されるまでのスピード勝負。どのみち全員は乗れない。強行軍でいくには足手纏いになる」
敵の中で援護もない。そんな状況でも冷静さを保ちながら判断するハヤトに中隊長はたじろいだ。
「たしかに一理ある。しかしだなぁ――」
「火力の心配ならご心配なく。あの30ミリよりシールドを添加したライフルのほうが貫徹力が上です」
ハヤトは銀色の派手に反射する戦車と身長ほどもある対シープライフルを見比べてそう答えた。
「わかった、帰隊させよう」
中隊長はハヤトの提案に同意を示して陸戦隊のなかから負傷者を集めさせた。そして部隊問わず最後に残った軽戦車に乗り込ませ、脱出地点に退避させた。
遠ざかる戦車を見送ったあとには、文明的な存在はもうなくなった。その場に残った者たちは心細さを感じつつも目的のために前を向いて歩きだした。
「俺たちもいこうか」
「そうだね」
「ミシロは最後尾から仲間の様子をみていてほしい。俺と同じでサブリーダーは慣れてるだろうから」
「あいよー」
ミシロは二つ返事で慣れたことのように隊列が過ぎるのを脇道で待った。ハヤトはシュヴァリエ隊の最前について隊列を進む。
それからしばらくの道のりで超音速戦闘機のような破裂音が空を貫いた。本能的に恐怖を感じるほどの騒音が断続的に鳴り、空に青い蛍光色の線が残った。天井まで届くキノコ雲がムクムクと育つ。遅れて届いた衝撃波と強風に隊員たちは地面を転がされた。
砂埃が舞い、集積していた物資がとばされた。ほどなくしておさまると混乱した状況のなかで状況がみえてきた。
「いまのはなんだ!?」
「音紋解析。発射地点は12時方向距離3キロ先。爆発地点は後方160キロ。シュヴァリエの50口径亜光速弾と推定。跳弾です!」
通信係からデータが共有されてヘルメットの視界に弾道線と半径などの情報が表示される。
「ミシロ、そっちは問題ないか?」
最後尾に通信を繋いで被害を調べた。
「こっちは問題ないね〜、ほかの部隊かな? 宇宙用の弾を使うなんて無茶するね」
ミシロはキノコ雲と逃げ惑う大量のシープの群れの映像を送ってきて状況をなんとはなしに伝えてくれた。
「おい! そんな威力があるならなぜ狙撃しない! コアを撃てば済むことでないか!」
先程の威力を知った中隊長が詰め寄ってくる。ハヤトは通信を終えて対応にまわった。
「この巨大種は惑星規模だ。シールド強度も上がっている。どんな兵器でもコアに直接触れていなければ倒せない。だからやらなかったんだ」
それを聞いて中隊長はあっさり理解したようでそれ以上なにも言わなかった。
〔決戦〕
木質の茶色いバイオームの中心にはそこだけ切り取られたように真っ平らな地面がひろがり、クラスターシープの核となるコアルームが誘引灯のように輝いている。白銀の空の下、見晴らしのいい更地の先はすべて敵、とおく波のような地響きをたてて、タイムリミットのように近づいている。
コアを目前に気を引き締めた隊員たちはコアとバイオームのくっきりした境目でそのときを待っていた――。
「全隊攻撃準備。ここから先は障害物がない。全速で突入する!」
中隊長の命令に従ってハヤトは攻撃態勢を整えた。ヘルメットにバイザーを下げ、背面のバックパックから高機動用の補助翼を展開した。
「了解。シュヴァリエ隊突入開始!」
ハヤトの命令で全機バイオームをとびだして前傾姿勢でブースターを使った高速機動を行った。両足と背面スラスターに点火する。工学的に洗練された赤い炎を燃やしてさらに速度を増した。
コアルームまでたった500メートルほど、そのわずかな道さえこの緊張状態では長い時間のように感じられた。
100名にも満たない小規模戦力でクラスターシープのコアルームへ進んでいく――。
目的地までの距離計はどういうわけか、見た感覚よりも手前になっている。
「おかしい。距離がズレてる」
めまぐるしく流れる景色のなかでハヤトは不穏な気配に気づいた。
「そんなはずないけどなぁ……。コアにしかシールドはないはずだよ?」
ミシロは同意するように答えた。それでも違和感が残る。コアルームを目前にしてハヤトはライフルを腰に構えて射撃した。
シールドを添加したレーザーのような弾丸が巨大な卵形のコアルームの入り口からわずかに手前で空間を揺らげて消滅する。そこから波紋が広がって壁の存在が明らかになる。構造に這わせるように隠されたシールドだ。
「コアとは別にシールドがある! 減速急げ! 強度はかなり高い!」
ハヤトは衝突警報を鳴らした。先行する隊員たちは間に合わず左右に逃れた。ハヤトは両足を地面に擦らせて逆進をかけ、シールドを突破した。弾力がある水中のような抵抗をうけてシールドを透過するとコアルームは灰色の表面の至るところから宝石のような輝きをみせた。
「まさか! 防御レーザーもある!」
戦艦のように熱波を帯びた光線がシールドに捕まった隊員を跡形もなく爆発させた。シールドの外ではいつしか光線が飛び交う戦いが繰り広げられている。
「なんという威力! 歩兵如きで勝てる相手ではない!」
シールドを突破できたのは興奮状態の中隊長率いる陸戦隊半数とシュヴァリエ12名しかいなかった。
「シールドに入れたのは俺たちだけだ。先に進むしかない」
「はやく終わらせて帰ろう。何人か生きてるかもしれない」
「そうだな……」
ハヤトは逃げ惑う仲間たちを目に焼き付けてコアルームへ進んだ。
〔異形のヒツジ〕
木質の茶色いバイオームの中心にはそこだけ切り取られたように真っ平らな地面がひろがり、クラスターシープの核となるコアルームが誘引灯のように輝いている。白銀の空の下、見晴らしのいい更地の先はすべて敵、とおく波のような地響きをたてて、タイムリミットのように近づいている。
コアを目前に気を引き締めた隊員たちはコアとバイオームのくっきりした境目でそのときを待っていた――。
「全隊攻撃準備。ここから先は障害物がない。全速で突入する!」
中隊長の命令に従ってハヤトは攻撃態勢を整えた。ヘルメットにバイザーを下げ、背面のバックパックから高機動用の補助翼を展開した。
「了解。シュヴァリエ隊突入開始!」
ハヤトの命令で全機バイオームをとびだして前傾姿勢でブースターを使った高速機動を行った。両足と背面スラスターに点火する。工学的に洗練された赤い炎を燃やしてさらに速度を増した。
コアルームまでたった500メートルほど、そのわずかな道さえこの緊張状態では長い時間のように感じられた。
100名にも満たない小規模戦力でクラスターシープのコアルームへ進んでいく――。
目的地までの距離計はどういうわけか、見た感覚よりも手前になっている。
「おかしい。距離がズレてる」
めまぐるしく流れる景色のなかでハヤトは不穏な気配に気づいた。
「そんなはずないけどなぁ……。コアにしかシールドはないはずだよ?」
ミシロは同意するように答えた。それでも違和感が残る。コアルームを目前にしてハヤトはライフルを腰に構えて射撃した。
シールドを添加したレーザーのような弾丸が巨大な卵形のコアルームの入り口からわずかに手前で空間を揺らげて消滅する。そこから波紋が広がって壁の存在が明らかになる。構造に這わせるように隠されたシールドだ。
「コアとは別にシールドがある! 減速急げ! 強度はかなり高い!」
ハヤトは衝突警報を鳴らした。先行する隊員たちは間に合わず左右に逃れた。ハヤトは両足を地面に擦らせて逆進をかけ、シールドを突破した。弾力がある水中のような抵抗をうけてシールドを透過するとコアルームは灰色の表面の至るところから宝石のような輝きをみせた。
「まさか! 防御レーザーもある!」
戦艦のように熱波を帯びた光線がシールドに捕まった隊員を跡形もなく爆発させた。シールドの外ではいつしか光線が飛び交う戦いが繰り広げられている。
「なんという威力! 歩兵如きで勝てる相手ではない!」
シールドを突破できたのは興奮状態の中隊長率いる陸戦隊半数とシュヴァリエ12名しかいなかった。
「シールドに入れたのは俺たちだけだ。先に進むしかない」
「はやく終わらせて帰ろう。何人か生きてるかもしれない」
「そうだな……」
ハヤトはまだ外にいる隊員たちに「生きて待て」とだけ命令して逃げ惑う仲間たちを目に焼き付けてコアルームへ進んだ。
たどりついたコアルームのなかはおそろしく静かで幻想的だった。中心点の高台には大きな結晶体が太陽のような光度で心臓の鼓動のようになめらかな光で強弱を繰り返している。
「あれを壊せば俺たちの勝ちだ」
高台に駆け登る陸戦隊の下でハヤトたちシュヴァリエは防御体制についた。
「休まず起爆装置をセットしろ! ロングソード級との合流地点まで何キロもある! 長居するほど帰れなくなるぞ!」
中隊長が発破をかけてコアクォーツの爆破に取り掛かっている。外とは違って蒸し暑さのあるコアルームは蒸気と水滴の音に満ちており両生類が暮らすにはおそらく最適で、人間が長時間いるにはあまりにも適さない環境だった。空調の効いた機甲服を着ていても手足に伝わってくる擬似的な感覚は気持ちのいいものではない。全身をナメクジが這うような気持ち悪さのなかで作業を強いられていた。
「シュヴァリエ隊は全天警戒。陸戦隊の外周で防御円陣。敵はどこからくるか分からない」
ハヤトは回線をつないでそう言った。中心のコアクォーツの台を囲むように背を向けて立ち塞がる。背後では頑丈なトランクケースを開けて起爆装置を組み立てる金属の音だけがしている。
「このまま帰れたら楽なんだけどそうはならないのがお約束だから最悪だね〜」
ミシロはコアルームの壁に注視したままため息をつく。
「まさか……卵か……?」
天井まで続く半球状の壁には蜂の巣状に穴があいており、そこを白い繭のようなものがびっしりと埋め尽くしている。壁の構造だと思っていたものは実はそうではない。それに気づいたハヤトは一気に不安になった。
「そう。卵みたいだね。コアクォーツから光とエネルギーを受けているらしい」
隣に立つミシロはチラ隊長に代わってこの貴重な情報を記録していた。
「あれは卵だ。まだ生まれてこないことを祈ろう」
ハヤトは言ったそばから天井から滴ってくる糸を引く液体に気づいた。気泡を含んだ透明な液体が地面に水たまりのようになっているが、そこまで大きくない。環境によるものではないようだった。
「まだ暖かい。ついさっきまでなにかいたみたいだ……」
ハヤトは手袋越しに床に広がった粘液に手を触れてそれを払った。天井を見上げても動くものは見当たらない。かすかな空気の流れが邪魔をして音響センサーの音紋も静まらない。
「先に来たはずの部隊はどこにいる?」
中隊長は散乱した装備の破片を拾って怪訝に言った。
ハヤトはコアルームをくまなくスキャンした。視界にいくつかカーソルがあらわれる。センサーが人工物を検知したようだった。それを拡大すると潰れた戦車だったものが見つかった。
いくら1ミリしか装甲がない快速戦車とはいえ、アルミ缶を踏み潰したように真っ平になることは普通ありえない。なにか強力な存在がいることはたしかだ。
「あそこに戦車がある。左ルートの部隊は全滅したみたいだ……」
シープの肉で作られた壁にはさまざまなものがとり込まれている。隊員が身につけていた機甲服、アンモナイト型のツノやヒツジ特有の臼歯。おまけに繭のなかでは幼体が絶えず動いてレーダーの目を遮ってくる。
ハヤトは視界を飛び回る無数の赤いカーソルに気が散って機械の電源を切った。
「熱探知も動体レーダーも役に立たない……。気をつけろ……」
どこになにかが隠れていたとしても見つけるのは困難だった。
スタッ……。
生足の大きな生き物が地面におりるような音がした。
ぎゃあああ――……。
だれかの悲鳴が遠ざかっていく。ふりむけば居たはずの隊員がいなくなっていた。
「だれかの叫び声がした! なにかあったか!」
中隊長が声のほうに向くが、そこにだれもいない。ただそこにいたはずのだれかの装備品が食い荒らされるように地面に散らばっているだけだった。
爪をたてるような足音が頭上を這い回る。ハヤトは目を凝らして天井を見張っていた。
白い蜘蛛、あるいは手のような、いつも見ているヒツジに似たものとはまったくちがう生物が天井を這って穴に入っていった。
「あれはなんだ!? シープらしくもない!」
隊員のひとりが怯えた声色で叫んだ。
「あれは……。ラミアだね。地球で猛威を振るった戦車級の強敵だよ」
ミシロは懐かしがるようにほころんだ。
「ライフルを使えば簡単にたおせる」
ハヤトは武器をかかげて答えた。それに対してミシロは不敵に微笑んだ。
「それはどうかなぁ? ここは心臓部であると同時に幼体がひしめく巨大な保育器のなか。もし卵を傷つけでもしたら、たちまち羽化してくるだろうねぇ」
「厄介な場所に出てきたな」
ハヤトは背面のバックパックに武器をしまってかわりにチェーンソードを両手で構えた。
「そうだね。それがいい……」
ミシロは腰にさげた直刀を引き抜いた。とくに構えるでもなくただ持っているだけだった。
「構えないのか?」
「あいにく武術は嗜んでいなくてね」
「残念だが俺もだ」
ハヤトもなんとなく大剣を頭上に構えて待ち構えた。
天井から飛び降りてきたラミアは足元で銃撃を浴びせる陸戦隊員たちを指先で何人か潰した。さらに地面から繋がった尾を振り回して走り回り、数秒のうちに多くの命があっけなく失われた。
「見るのは久しぶりだ。地球にいた頃を思い出す……」
ラミアは首をもたげて空気中に衝撃波を放ちながら咆哮した。機甲服を着ていなければ鼓膜が破れてしまいそうなほどの大音響で身を振り回しながら威嚇する。
「おや、ずいぶんカッコつけた登場の仕方だねぇ……」
無数の幼子たちに見守られながら指のような体に尻尾の先にはヒツジ顔の顔面、異形の生物は数トンクラスの巨体で走り出した――。
次回、第19話:〔人間の戦い〕
コアを守るラミアとの戦い。クラスターシープは惑星メルタ、ヴァンドラ艦隊への攻撃を始めた。滅ぼされる星々を前に悲しみに暮れる暇はない。




