第1話
『私は今……合法村という場所にいます。地図に載っていない島で、すべての犯罪が認められたリゾート地です』
画面に映る若い女は、深刻な面持ちで語る。
背景は暗くてよく分からない。
『いきなりいなくなってごめんなさい。参加した仕事が闇バイトで、合法村に連れて来られてしまったの。脱出はできないそうです……』
女は泣きそうな顔になった後、ぐっと目を閉じて耐える。
やがて彼女はカメラ目線で言う。
『佑都……どうか私のことは忘れて。幸せに、平穏に暮らしてください。私から言えるのは、それだけです』
映像はそこで終了した。
端末を置いた片村佑都は、激烈な感情を湛えて呟く。
「待ってろよ、美琴。必ず迎えに行くから」
数か月後。
様々な手段を駆使した末、佑都は合法村の場所を特定した。
彼は知人の伝手で入手した小型ボートに乗って海を突き進む。
彼自身は無免許だったが、操縦方法は予習済みなので移動に支障はなかった。
ボートにはナイフや金属バット、斧といった武器が積まれている。
野球帽を目深に被った佑都は、ぎらついた双眸で述べる。
「美琴を攫った奴らは皆殺しだ……」
数時間後。
夕闇に溶け込むような形で、巨大な島が見えてきた。
佑都は深々と息を吐いて気を引き締める。
「あそこが合法村……」
佑都は双眼鏡で進行方向を確認する。
砂浜には裸の女が磔にされていた。
十メートルほどの距離を置いて対面に立つのは、着物を着た中年男だ。
男は引き絞った弓から矢を放つ。
矢は大きくそれて女の頭上を飛んでいった。
周囲には幾本もの矢が突き立っている。
男は苦笑しつつ新たな矢を手に取る。
「ふむ、なかなか当たらんな……お?」
男は上陸してくるボートに気付いた。
砂浜に降りた佑都に対し、男は親しげに提案する。
「やあ、初めまして。君はどこの所属かな。よければ私と勝負しないかね。先に命中させた方が――」
「黙れ」
駆け寄った佑都がナイフを構え、男の腹に突き刺した。
激痛に呻いた男が倒れる。
「な、何をする!?」
「この子を知っているか」
佑都はスマートフォンで美琴の写真を見せた。
傷口を押さえる男は、耐えがたい痛みと怒りで絶叫する。
「女を探すなら売春宿へ行け! それよりこの落とし前をどうつけるつもりだ! 他の客を殺傷するなど重大な禁止事項で」
男の糾弾を遮ったのは、首筋に突き立ったナイフだった。
目を見開いた男は血を吐いて間もなく息絶える。
ナイフを引き抜いた佑都は再び宣言する。
「うるせぇよ。邪魔する奴はぶっ殺す。合法村の人間は皆殺しだ」
「それは見逃せないねぇ」
「!?」
背後からの声に佑都が振り返る。
刹那、彼の胸にダーツ型の麻酔針が命中した。
「くっ……」
眠気に襲われた佑都は崩れ落ちて気絶する。
麻酔銃を持った黒スーツの男は、陰気臭い笑みで言った。
「面白い来客だ。丁寧にもてなしてあげよう」




