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死にかけて異世界に飛ばされたのにチート貰ってないのですが~アブソリュートスレイヤー~  作者: もさん


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プロローグ 灰色の日々

本作は現在制作途中の作品となっております。

そのため、今後の展開に応じてストーリーや設定、名称などに調整や変更が入る可能性があります。

できる限り違和感のない形で更新していく予定ですが、あらかじめご了承いただけますと幸いです。


■プロローグ


梅雨の雨は、街の色をすべて奪っていくみたいだった。


いつもは眩しいネオンも、横断歩道を急ぐ人の傘も、

全部、灰色に沈んで見える。


俺――伊藤源次いとう げんじは、濡れそぼったアスファルトの上を、フラフラとした足取りで歩いていた。


店の窓に映った自分の姿が、目に入る。


前髪は重く垂れ、湿気でぺたっと額に張り付いている。


伸びっぱなしの黒髪は手入れもしていないのが丸わかりで、全体的にもっさりしている。


寝不足気味で半開きの目。


細身なのに猫背だから、余計に頼りなく見える。


服はいつもの無地パーカー。


冴えない大学生のテンプレみたいな風貌だ。


「はあ……」


わざと人に聞こえるようなため息。


だが、その音は雨に紛れてすぐに消えた。


二十一歳。大学生。


普通なら、人生で一番楽しい時期のはずだ。


――なのに。


俺の日常は、スカスカだった。


興味のない講義を聞き流しに大学へ行き、

空いた時間はゲームか漫画。


コンビニ飯を食って、寝るだけの毎日。


こんなつまらない奴に、親友なんているわけがない。


いるのはせいぜい、ゲームするだけの関係のやつらだ。


「俺、この休日……何してたっけ……」


スマホを開く。


時計と、好きなアニメキャラの壁紙。


通知は――何もない。


呼吸をすると、重たい空気が肺に溜まった。


だが、そんな俺にも――


少し前までは、話し相手くらいはいた。


「おいゲンジィ、今日ハンバーグでいいか?」


台所から聞こえてくる低い声。


振り向けば、親父が眉間に皺を寄せながらフライパンを揺すっている。


無精髭がうっすら伸びていて、

仕事帰りの疲れがそのまま顔に貼り付いているような男。


スーツ姿のときはそこそこ渋くてカッコいいのに、

家ではどこか力が抜けている。


「……別に何でも」


「おうおう。作る側からすると、“何でもいい”が一番困るんだけどな」


不器用なくせに、毎日飯を作ってくれた父。


料理は得意ってほどじゃなかったが、

塩気の強い男飯は、嫌いじゃなかった。


――そんな父は、数日前に死んだ。


酔っ払いが運転する車に轢かれたらしい。


最初は、加害者を殺してやろうかと思った。


だが。


時間というのは残酷で――


数日も経てば、怒りは消えた。


代わりに残ったのは、何もない“虚無”だった。


あの日以来、俺の世界はさらに色を失った。


父の言葉を思い出す。


「大学生活、楽しめよ」


「俺の息子なんだから、彼女でも作れよ、ハッハッハ!」


……無理に決まってる。


俺みたいな陰気な奴、誰も話しかけたくもないだろう。


大学で隣に座るやつも、ただの“隣の席のやつ”だ。


授業が終われば、関係も終わる。


俺もまた、忘れられる側の人間だ。


「俺の人生……つまんね……」


ぽつりと呟く。


「この先就職とかして、もっとつまんねぇんだろな……」


雨が濡らす前から、心はずっと冷え切っていた。


ここ最近、夜に意味もなく歩き回ることが増えた。


帰る場所が、分からない。


親父のいない家に、戻りたくなかったのかもしれない。


店の窓に映る自分。


無気力で、眠たげで、覇気のない男。


まるで――幽霊みたいだ。


「もしも神ってのがこの世界にいるのなら...ソイツは性格最悪のクソ野郎だろうな...」


ポツリとくだらない他責を呟く。


ふと、建設中のビルが目に入った。


クレーンが揺れ、鉄骨が雨に濡れて鈍く光っている。


立ち入り禁止の看板がある。


――だが、目に入らない。


俺の足は、そのまま現場の横を通り過ぎていった。


(……あれ、前がよく見えねぇ……)


頬を伝うものが、雨なのか涙なのか分からない。


ギギギギギ……。


嫌な音が、耳に刺さる。


顔を上げる。


鉄骨が、傾いている。


雨で滑り、支えを失ったそれが――ゆっくりと、ズレる。


ガタガタガタンッ!!


雨。


風。


音。


全部が混ざって、視界が歪む。


鉄骨が――落ちてくる。


(……あ)


気づいていた。


でも、足は動かなかった。


動けなかったのか、


動かなかったのか――


自分でも分からない。


巨大な影が迫り――


視界が、黒に染まる。


ドッ……!!


身体が押し潰される。


骨が砕ける音。


呼吸が、できない。


痛みは遠く、意識だけが沈んでいく。


(俺……死ぬ……のか……?)


妙に冷静な声が、頭の中に響く。


(まあ……いいか……)


怖くもなかった。


ただ――終わるだけだと思った。


「ちょうどいい……こいつでいいか」


――知らない声。


(……誰だよ……)


(どうでもいい……寝かせてくれ……)


雨音が消える。


世界が、藍色に塗り替わる。


身体の感覚はない。


意識だけが、浮かんでいる。


(……夢か?)


(それとも……死後の世界か?)


その時――


『聞こえるか』


突然どこからか知らない声がする。


「....え?」


『お前はまだ死んでいない。』


謎の声は続ける。


『傷を癒してやる、その命どう使うもお前次第だが、精々楽しませろ』


その瞬間――


藍色の闇が裂ける。


まばゆい光が奔り、俺の意識を包み込む。


(お、おい!……一体どういう事だよ……!)


声は届かない。


光が、すべてを塗りつぶす。


――そして、世界は切り替わる。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

本作は制作途中のため、今後の展開や構成の都合により、ストーリーや設定、名称などに調整・変更が入る場合があります。

より良い作品になるよう試行錯誤しながら執筆しておりますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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