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エボルヴインパクト 非対称型PvPvEの悪魔的暗殺術  作者: すばる
2章

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13/20

2-3 バケモノの時間

 ホームセンターに続きいくつかの稼ぎスポットでサバイバーを狩っていると、再び空は茜色に染まり、闇の気配が濃くなっていく。

「なんか、一気に人が減ったね」

 初日の夜には普通に見かけたのだけれど。暗さがミュータントに有利だと一夜目で気づいたのだろうか。特にサバイバーは生き残ることが最優先なので、不利な場所での活動は控えるはず。それぞれ建物に籠城して夜をやり過ごしているのだ。逆にキルを取りたいミュータントとしては、籠城しているところに攻め込むことになる。

「明かりがついてるところに人がいる、ってわけでもないみたいだね」

 聞こえてくる物音からして、少なくとも照明のついている家の半分は無人のようだ。たぶん、探索のときにつけてそのままとかなのだろう。息を潜めて音を出さないようにしているサバイバーもいるかもしれないけど、わざわざ探して確かめる必要はない。いる、とわかっている場所を狙えばいいだけの話だ。

 私は周りと比べて少しだけ大きな平屋に狙いを定める。通常マップでは車両が壁に突っ込んで大穴が空いている家だ。その穴が主な侵入口になっているけれど、別に玄関や窓から入っても構わない。

 中から聞こえる音からして、いるのは4人。完全に動いていない人間はいるかもしれない。外から軽く調べたところ鍵はちゃんと閉めてあるし、窓から中を覗くとちょっとした罠も見えた。空き缶なんかで作ったトラップで、窓を開けるとカラカラ音が鳴るみたい。

「でも抜け道があったら意味ないんだよねぇ」

 全部の出入り口をきっちり封じてたら、面倒だしスルーしてほかのお宅に向かったけどね。半端に配置されてるなら、それだけ警戒意識が薄れていると考えて狙いたくなる。

 見つけたのは格子の嵌められた窓。普通の人間じゃまず通れない隙間だけど、デモンズ種の柔軟性を舐めちゃいけない。

「お邪魔しまーす」

 入った先はシャワールーム。タイル張りの床に無音で降り立った私は、内側から改めて音を探り、頭の中でこの家の見取り図と照会する。

「全員まとめてリビングかな。これは」

 この家、リビングが結構広い。そこに集まって夜を過ごしているのだろう。これで夜の時間が長いなら、潜んで単独行動を狩るのだけど、20分しかないからね。朝までそのままってことも十分あり得る。それに、いつ索敵が飛んでくるかもわからない。クールタイムが明けるたびに使用するほど律儀ではないようだけど、ずっと使われないままだと決めつけるべきじゃない。

「【墨爆弾】で強襲するのが丸いかな」

 狭い室内で煙幕を張れば効果は絶大なはず。さっとプランを練った私はまず室内の様子を直接確認することに。部屋のドアは閉め切られていたけれど、【静かな殺意】は副次的に発生する音もある程度軽減してくれる。無音でドアを開け、出入り口に向け銃口を構えられているわけでないことを確認してから中へ侵入。壁をよじ登って天井に張り付く。

 リビングにいたのは事前に把握した通り4人。何をやっているのかと思っていたけど、掲示板を見ているようだ。イベント専用の掲示板だろう。それぞれ自分にしか見えない何かに目線を向けながら、何人かは小さく指を空中に舞わせている。思考入力は微妙に細かい操作をしにくいからね。

 情報収集か単なる暇つぶしか。まあ今のうちにほかがどうなっているのか調べるのは大事だ。けど、全員がそっちに集中していて周りへの警戒が疎かになっているのはいけない。

「油断大敵って教えてあげるよ。授業料はもらうけど」

 視界を潰して強襲するつもりだったけど、予定変更だ。【墨爆弾】をいつでも使えるように準備はしつつ、天井を這って真上に近づく。口の動きを見るに、たまに会話はしているみたいだ。あまりゆっくりはしていられない。まずは口数の少ない銀髪の男の真上に移動し、触腕で口を塞ぎつつ首元を傷つける。

 即座に無力化され、命を失うまで数秒。力の入らなくなった犠牲者を音を立てぬよう椅子に座らせたままに調整してから触腕を引き戻す。ちゃんと見ればすぐにおかしいと気づくくらいだけどね。

 同じ要領で2人目、3人目と処理していくと、さすがに異変に気づかれたようだ。言葉を発しても返事がないことに不信を覚えた最後のひとりが顔をあげ、惨状に慌てふためく。読唇術を使えないのが惜しいな。そんなことを思いながら、私は天井から死角をついて触腕を伸ばした。


 ◆


 建物ひとつを制圧した私は、次の獲物を探すため揚々と夜の街に繰り出した。知らない星々が瞬く下で暗闇に横たわるアグヌ地区は街全体が息を潜めているようで、建物からはこそこそと動くサバイバーの出す音が小さく聞こえる。初日の昼は堂々と街中を探索していたのに、今や随分とおとなしい。代わりに姿を見せるのは、様々な異形をしたミュータントたち。その半数以上はプレイヤーだろう。同じくミュータントでプレイしている私からしても、こんなにいたんだと思えるくらい。もともとミュータントのプレイヤーたちはサバイバーよりずっと少ないし、敵に先に見つけられるとサバイバー以上に苦しい展開になるから、隠れて動くことが染み付いている。ミュータントとはなんだったのかと言いたくなるくらい。

 だけど今、人々は暗闇に潜む脅威を恐れて引きこもり、異形の怪物が堂々と街を跋扈している。私たちバケモノの時間だ。


次回投稿予定は明日12時です。

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