第368話 Tボーンステーキ
第368話 Tボーンステーキ
秘密基地では、前回同様にロボシェフが大きな鉄板カウンターの後ろで食材を用意していた。
前回は和牛のサーロインステーキが用意されたが、今回は和牛のTボーンステーキと、アンガス牛の熟成肉を使ったトマホークステーキだそうだ。
俺は前回の高級和牛サーロインも初めての経験だったし、今回のTボーンとかトマホークというステーキも全く食経験がないが、その肉塊を見ただけで期待がグンと膨らんだ。
隣の沙織もしのぶもワクワクを隠せない様子だし、キャシーに至っては涎を抑えるのが大変そうだ。
それほどの見た目インパクトがある肉だった。
シンの尾はかなりブンブンと振れて、気がついては抑えているが、気が緩むとまたブンブンだ。
その点、ナミはかなり尾の揺れを抑制しているが、鼻のひくひくまでは抑えられない様子。
ロボシェフが肉を鉄板に置きながら説明を始めた。
その隣ではロボ助手が焼き加減を注意深くコントロールしている。BGMはジューっと肉が焼ける音。上質な油脂が高温で発する香り。肉が焼ける匂いと混じって鼻を心地よく刺激する。
ナミの気持ちがよく分かった。この匂いだけで食欲をそそられる。
「…… Tボーンとは、牛の腰部のショートロインと呼ばれる部位の肉です。
T字型の背骨ごと切り出された肉で、背中側のサーロインと腹側のフィレを同時に楽しむことができる豪快かつ美味なステーキをご賞味下さい。
シン様、ナミ様には一枚当たり2キロでとりあえず5枚ずつ焼かせてもらいます。
焼き加減はミディアムレアで用意します。
他の皆さんには1キロ肉で焼かせてもらいますね」
皆、うんと頷いたがとても1キロなんて食えないだろう。
こういうのは多分二人で取り分けて食べるステーキじゃないかと思う。骨を除いても800グラムとかありそうだし。
塩胡椒で焼いてもらって、お好みでテーブルに用意されたニンニク玉ねぎ醤油、カラシ、ワサビ、マスタードをつけて自由に楽しむスタイルだ。
ニンニク醤油には肉汁がたっぷり混ざっていてうまいから俺の一押しだ。
シンとナミは強い歯を持っているので、骨ごとバリバリとまる齧りしている。
「骨の左右で肉の味と柔らかさなどが違うな。どちらの肉も美味い。美味すぎる」
前回と似たような賞賛だが、骨ごと丸齧りしているのに肉の違いに気づくとはかなりのグルメだ。
「フィレは滅茶苦茶柔らかいわね。脂身が少ないのに旨味がたっぷり。
サーロインは、前と同じく最高ね。脂身も程よいし、肉質も柔らか過ぎず適度な噛み応えがあっていいわ。
前はレアだったかしらね。このミディアムレアの焼き加減も気に入ったわ」
「骨もうまいな」
「骨だけ良く焼いて食べると、より美味しいかも知れないわね」
「うむ、それは良いな」
シンとナミは3枚目以降は肉と骨を分けて、骨は3個くらいに小分けしてよく焼いてもらい少し冷ましてから食べていた。
美味そうだが俺たちは骨はやめておく。てゆうか顎と歯の構造的に不可能だ。
「見た目のインパクト以上にお肉も美味しいわね」
「私はフィレがすごく気に入りました。もちろんサーロインも美味しいです」
「肉汁が混ざったニンニク玉ねぎ醤油も最高ね」
「うん、美味しいですね」
「こんなうまい肉は人生で初めて食べたにゃ。骨の回りの肉は特にうまいにゃ」
「ニンニク醤油も良いと思うけど、ワサビとマスタードも行けると思うぞ」
一押しを沙織に言われてしまったので、俺は別の味付けを押してみた。
「私はビールも飲むにゃ。
街ではエールが飲めるけど、ラガービールはここでしか飲めないからにゃあ」
「ビールとはそれほどうまいかえ」
「もちろん美味しいですよ。焼いた肉と実によく合いますにゃ」
キャシーの言葉を聞いていたナミが試してみたいようだ。
「ナミ様、この深皿にビールを注ぎますので、グッとやってくださいませ」
キャシーがロボウエイターから差し出された深皿をナミ専用のテーブルに載せ、缶ビールをうまい具合に泡加減を調整しながら注いでいる。
「少し舌にシュワシュワするが、これは美味しいの。ステーキとは相性抜群のようじゃ」
「そうなのか、ワレにもくれ」
キャシーがシンのテーブルにも深皿を載せて缶ビールを注いだ。
「おお、確かにステーキにこの酒は最高だな。
まあ酒を飲む機会はこれまで滅多に無かったが」
「上級治癒魔法を覚えたから、アルコールを多めにとっても大丈夫よね、あなた」
「そうだな。上級治癒魔法は最高だ。
毒消し、麻痺消し、痛み消しもあっという間にできるしな。酔い消しもできるだろう」
酒は保護した人間からの献上品と、襲って逃げた人間の持ち物の中にあったものなどを飲んだことがあるらしいが、冷えたビールは初めてだとのことだ。
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