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ハエと美少女姉妹(異星人の使いと異世界の冒険)  作者: 千葉の古猫
第1章 地球編その1 コウタがハエと美少女姉妹に翻弄される日々
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第29話 改札口で

第29話 改札口で


 午後3時過ぎに始まったパーチンプロジェクト会議は、午後4時過ぎに終わった。


 地球時間ではたった1時間だが、俺の脳は疲れ切っていた。

 タイムコントロールバリア内では、2時間ほど特番TVを見てから、ぶっ続けで2時間の会議だ。合計4時間。脳も疲労するはずだ。

 まあ長時間掛けた割には大したアイデアは出なかったと思う。元々一介の高校生と中学生には荷が重いテーマだ。

 何とか採用になったアイデアも、終わってみれば正直言ってやっぱり子供ぽいと思う。


 そんな俺達にクモミンが提供してくれたのは、京都の老舗しにせ和菓子店からお取り寄せしたと言う、和三盆わさんぼんで作られた干菓子ひがしだった。


 普段なら、こんな年寄りくさい菓子には手が出ないところだが、お勧めにしたがって口に入れてみたら…

 めっちゃうめえ! 口に入れた途端に、すっと舌の上で溶けていく。

 疲れた脳がリフレッシュされて行く〜

 干菓子がこれほどおいしいものだとは知らなかった。

 甘さ控えめのとても上品な味だ。

 これに上等の茶器ちゃきで極上の玉露ぎょくろを出されたら最高だったが、四次元ポケットを持つドラえもんの存在を疑わせるような証拠品を残す訳には行かない。

 代わりにクモミンが出してくれたのは、ペットボトルの玉露入り煎茶で、これが干菓子とも相性がよくて中々いける味わいだった。


 姉宮あねみやも、和三盆の干菓子を三つ四つと立て続けに口に入れ、ペットボトルのお茶をがぶ飲みしている。

 少し下品な所作と感じたが、沙織の脳も疲れていたのだろう。あまり考えているようには見えなかったのだが。


 妹宮いもみやも同じく、おいしそうに干菓子をお茶でいただいていたが、しのぶちゃんの所作はずっと上品に見えた。

 それがなんだか、俺を意識した仕草しぐさに感じたのは、俺の願望がなせる勘違いだろうな。


 午後四時半に、それぞれカバンを手にした宮坂姉妹を俺が先導して階段を降りて行くと、丁度母さんがダイニングテーブルで紅茶を用意している所だった。

 お茶の手伝いをしていた父さんも、もう帰っちゃうのか、とかなり残念そうな顔つきだ。

 どうやら年甲斐としがいもなく美少女姉妹に魅せらてしまったのか。

 父さん、あんたは妻帯者だし年の差をよく考えろよな。


「もうお勉強会は終わったの。

 今、お茶をお持ちしようと思っていた所なんだけど」


「お邪魔いたしました。

 これから私達塾がありますので、折角ですがもうおいとまさせていただきます。

 今日はありがとうございました。

 また明日も中間テスト勉強会でお邪魔しますが、どうぞお構いなくお願い致します」


 さきほどのがぶ飲みから一転して、大人の前に出ると上品そうに振る舞う沙織だった。


「母さん、そういうことだからごめんね。お茶は後で僕が飲むからさ。

 じゃちょっと駅まで送ってくるね」


 呼び止められると面倒なので、俺たち3人は頭を下げながらささっとと靴を履き玄関を出て行った。


 必要はなかったが、結局駅まで二人を送った。

 改札を通る間際に沙織が俺に振り向いた。

 俺に初めて見せる自然な笑顔だった。

「私もあんたのこと、これから幸太って呼ぶわ。いいでしょ。

 今日はありがとう、幸太」


「ああ別に良いけど、じゃあまた明日な」


 突然の笑顔に当惑し、幸太と呼ばれたことに少しおどろいた。

 沙織と呼び捨てにしたのだから、公平という観点からは拒否する訳には行かない。

 宮坂沙織に対する苦手意識がかなり減じてみると、沙織にそう呼ばれるのはまんざら嫌ではないと感じた。


 明日の勉強会も今は億劫おっくうに感じない。


 しのぶちゃんも屈託のない笑顔を見せた。

「幸太さん、明日もよろしくお願いします」

 しのぶちゃんはぺこりと頭を下げるやいなや足早あしばやに改札を抜けて行った。


 あれおかしいな。しのぶちゃんは明日の勉強会には出ないと聞いていたが、まあどっちでも良いか。


 姉妹を送った俺は、二人の笑顔を思い浮かべながら家路いえじについた。


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