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ハエと美少女姉妹(異星人の使いと異世界の冒険)  作者: 千葉の古猫
第1章 地球編その1 コウタがハエと美少女姉妹に翻弄される日々
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第28話 いたずら企画第1弾

第28話 いたずら企画第1弾


 特番TVを観終わった後の沙織《さおり》は、憎悪《ぞうお》丸出しの声を絞り出した。

「どうしてこんなにひどいことができるの。自分勝手な理屈で友好国を侵略して、小さな子供たちを連れ去ってラシアが正しいと教育するなんて。まるでオーム真理教と同じね。

 パーチンを八つ裂きにしてやりたい。

 エターナルならあんな奴簡単に殺せるんでしょ」


 フライは複眼を七色に光らせくちばしをくるりと回す。器用だな。

「さおりんには、エターナルの平和の理念についてもう一度レクチャーの必要がありそうだな。

 地球人の気持ちを代弁したということで聞いておくが、今後もそんな短絡的かつ過激な提案をくりかえすなら、やはり卒業してもらうことになるぞ」


「どうしてよ、パーチンを殺せば地球人はみんなエターナルに感謝するわ」


 こいつ、熱い心を持っているな。けれど熱くなり過ぎだぜ沙織。

 ちなみに、俺は特番が始まってから2次元変換グラスは外している。沙織を裸眼で見てももう大丈夫だと思う。


「姉さん、エターナル星は、圧倒的な力を持ってるからこそ、その存在を知られて地球人の脅威とみなされることを避《さ》けているのよ。

 それフライさんが前にも言っていたじゃないの」


「ああもう、しのぶは優等生ね。

 あんたはパーチンの非道をゆるせるの!」

 怒りと悔しさで沙織は震えている。


 正義感の強すぎる、こんな奴が勝手に突っ走って状況を悪くすることが多々あるんだよな。


「姉さん! 落ち着いて」

 しのぶちゃんは、震える沙織の背中をさすっている。


「分かってるわよ、私だって。

 さっきのは、エクライナの人たちが可哀想で気の毒で気が立っていただけなの。発言は撤回するわ」

 ようやく沙織は落ちつきを取り戻したようだ。

 冷ややかなタイプだと出会いの時は思っていたが、本当は感情豊かなやつだったのか、こいつは。


「あくまでもイタズラを企画するプロジェクトだから直接攻撃の提案は却下だ」

 フライだけはいつも冷静だな。ハエにしておくには惜しいやつだ。ていうかアンドロイドだったか。


「だったら、どうやってパーチンをとっちめてやったら良いのかしら。

 ラシア国民の前でできるだけ恥をかかせたいわね。

 パーチンをハゲにするのはどう。

 でもって、パーチンが演説している時に、禿頭の上にタライを落としたらおもしろくない?」


 コントかよ。そう思ったがその目はマジのようだ。

 こいつなりに考えた提案なんだろうか。


「ハゲにしたってカツラをつけるでしょ」と、しのぶ。


「しのぶには何かアイデアがあるの」


「私は姉さんと違って慎重派だから、もう少し考えてみる」

 確かにしのぶちゃんは慎重派だ。

 大人しいとも言ってたが、そっちは疑わしい。


 そこから暫く俺たちは色々と考えてみたが、沙織の最初の意見と比べても大差ないものばかりで、口に出してみては、恥ずかしくて自分で取り下げるというようなことが続いた。

 例えば、パーチンの声をキーキー声にさせてしまったらとか、うんと小人にさせてしまったらとか、人の声が聞こえなくしたらとか、パーチンの部屋をネズミだらけまたはゴキブリだらけにしたらとか、不眠にして悪夢を見せ続けたらとか、体臭をドリアンみたくさせるとか、歯が抜けて肉が食えないようにするとか、対人恐怖症にさせるとか、などなど。まあどれも幼稚と言えば幼稚なものばかり。悪戯作戦だからそれでも良いのかも知れないが。


 フライもクモミンも、俺たちの馬鹿げた思い付きに関する話し合いには特に口を出さない。

 地球のことは地球人が考えるべきと思っているのかも知れないし、このプロジェクトのルールでそうなっているのかも知れない。


「コウタ、他に何か無いか」


 フライから促されてもグッドアイデアなど出て来ないので、沙織の最初の意見に乗ってみた。


「さおりんの最初の意見だけど。

 タライはともかく、民衆の前でかつらが落ちてハゲがバレたら愉快だな。

 技術的には、厳重に警護されている大国の大統領をハゲにするなんてことが果たしてできるものなのかな、クモミン」


 沙織もしのぶも、エターナルなら人の頭髪を自由にできると思ってるらしいが、相手は近づくことも難しい人物だ。


「どんなに強固に守られている要人が相手でも、ハゲにする方法なら色々あるよ。パーチンの毛髪を奪うことはさして難しいことではないね」


 クモミンはこともなげに言う。どうやら沙織としのぶの方が、俺よりもエターナルの力を的確に捉えているらしい。


「民衆の前でかつらを落とすことも容易いのか」


 パーチンが国民の前で堂々と演説している時に、突然ズラが落ちて波平《なみへい》パーチンになったら、確かに愉快だろうと思いながら無責任にそう訊いてみた。


「太陽と北風の話のように、力づくでは難しいだろう」と、フライ。


「太陽と北風か。じゃあ太陽のように、自らかつらを外したくなる状況を作れば良いのか」

 確かに強風を吹かせても、パーチンはズラを抑えるだろう。その動作だけでもおもしろそうだが。


「そんなうまい方法があるならな」


 フライはそう言うが、高度な知性を持つエターナルなら幾らでも良い手を思いつきそうなものだが。

 それともこのような策略は知性とは相性が悪いものなのだろうか。いや知略という言葉があるのだからそんなことはない筈だ。


「じゃあ、それは後で議論するということで、沙織の提案は却下せずに保留にしておいてくれ」


 沙織と呼んだことに彼女は驚いたようだが、さらに沙織の提案を残すと言ったことに余程驚いたらしい。

 俺を呆然と見詰める時間が数秒も流れたことからもそれがうかがえる。

 とは言え、沙織の茫然自失の時間は短かった。


「今は保留ね、仕方ないわね。

 あんたたち、もっと良いアイデア出しなさいよ」


 立ち直りが早い。もう上からだぜ。

 あんたたちと言いながら、沙織が指差したのは俺だった。

 しのぶちゃんは、何故か口をへの字に結んでいる。


「分かった、分かった。

 そうだな、パーチンには、たしか3人の影武者がいるんだよな。

 僕はその影武者たちを一人一人懐柔《ひとりひとりかいじゅう》して、本物のパーチンが表に出て来なきゃならない状況を作り出したいと思う。

 その場合、彼らは身内を人質に取られているだろうから、併せて人質救出作戦の実行が必要になると思う。

 具体的なやり方についてはもう少し考えてみたい」


「遠回しで生ぬるそうなやり方ね。でも良いわ、幸太君の提案を支持するわ」

 憎まれ口を叩きながらも沙織は俺を支持した。

 しのぶちゃんのへの字口はさらに突き出た。どうした、何が気に食わない?


 次は自分の番と知っていたようで、しのぶちゃんはへの字口を元に戻した。

「ニュースで良く出てくる、クレムリンのあの白っぽい大きな建物は何というものでしたっけ」


「それは、多分クレムリン大宮殿のことだろう。横幅125M、奥行き63Mもある建物だ。中は一般公開されてないがな。

 それがどうかしたか」と、フライ。


 しのぶはフライに僅かに頷いて俺を見る。

 どうやら質問は俺に向けてのものだったらしく、今度ははっきりと俺に笑顔を向けた。


「あれを、なんて言いましたっけ。プロマッピングとか何とか」


「プロジェクションマッピングのことかな」   

 おそらく分かっていて俺に訊いたような気がしたが、希望通り回答した。


「そうそれ。

 あの大宮殿に、プロジェクションマッピングで、ゾレンスキー大統領にパーチンがぼこぼこにやられる動画を流せたらおもしろくないですか。でもそんなことはできるでしょうか」


「クモミン、技術的にはそんなフェイク映像は作れるのか。

 それに時間は2、3分位で良いから、ラシアに邪魔されずに動画を繰り返し流し続けられないものかな」

 俺は、何故か技術的なことは全てクモミンに丸投げしてしまう。


「コウタくん、そんなのお茶の子さいさいなんですけど」


 こいつらの技術も自信もすげえな。


「できるなら、しのぶちゃんの提案はおもしろいと思う。

 動画はパルチザンの仕業とでっち上げれば良いのでは」


 今度はしのぶにヨイショしてみた。パーチンがゾレンスキーにやられる動画なら俺も見てみたいしな。

 そんなことを思っていると、沙織が俺に向けて親指を立てるのが見えた。俺の意見に賛成か。


「おもしろそうね、それ。さすが、我が妹しのぶだわ」

 俺じゃなくて妹に賛成していた。まあ、そうだよな。


 調子に乗って、俺はもう少し具体的な提案を付け加えてみる。

「格闘技の衣装は、柔道が得意なパーチンに合わせて柔道着にしたらどうだろう。

 デザインは国旗をモチーフに、ラシアが白青赤のトリコロール、エクライナは青と黄色が良いんじゃないか」


「それ良いですね。幸太さん」


 慎重派のしのぶちゃんにしては追随が早すぎるような気がするが。元々自分の提案だから当然といえば当然か。


「それでは、日本チームの第1弾は、その線で行こう。

 影武者関係はもう少しアイデアを詰めてくれ、コウタ」

 そう言って、フライが会議を締めた。


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