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虹色の布を追いかけて敵国に捕まってしまった私は、本国よりも良い環境の中で、将軍に愛される  作者: 高取和生@コミック1巻発売中


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6/8

光は繭の中

二国間の戦争は終結し、オラニアはいまだ母国に帰れない。

ロイザーは、オラニアを探して、モブシアンに入国する。

◆兵どもの始末◆



 戦は終わっても、人民の生活がすぐに元通りにはならない。

 むしろ、後始末の方が時間はかかる。


 デアトリーは日々、東奔西走している。

 瓦礫の撤去や足りない物資の供給の他に、流行り病の予防と流入する他国人の対応などが、すべてデアトリーの指示の下で行われていた。


 砦でオラニアの故国ペトラーダが、デアトリーの指揮で撤退した後、オラニアはデアトリーの自宅で保護されている。名目は「捕虜の確保」だとデアトリーは言った。


 デアトリーの自宅は、モブシアン王都の近くにある、こじんまりとした屋敷である。


 使用人は住み込みで一人、通いで一人。

 オラニアはそこで、糸を紡ぎ布を織りつつ、邸内の家事も引き受けている。

 この国に来て、半年が過ぎようとしていた。


「旦那様がお戻りです」


 デアトリー宅の使用人が、オラニアに声をかける。

 オラニアも主を出迎える。


「しばらく留守にしていたが、変わったことはないか?」


 彼の笑顔は真っすぐオラニアに向く。


「はい。特に、何も」


 なぜだろう。

 デアトリーの笑顔を見ると、オラニアは落ち着く。

 ずっと、眺めていたいとさえ思う。


 いつからだろう。


 きっと、あの時からだ。


 デアトリーが大切に持っていた布地。

 それはオラニアが父に渡したもの。

 一枚の布が繋いだ縁を、オラニアは噛みしめた。


 あの日、布を抱いて泣いたオラニアに、デアトリーは何も訊かなかった。

 ただ、布をデアトリーに巻いたペトラーダの師団長は、オラニアにとって大切な人だったのだろう。

 オラニアがポツリと呟いた「義と理念」という言葉は、ペトラーダの師団長からも聞いていたのだ。



「君に土産がある」


 デアトリーの自室で、彼はオラニアに何枚かの布の切れ端を渡す。

 

「これって……」


 布には、「姉さん、元気?」「僕は大丈夫」などと書かれてある。

 いずれも、オラニアの弟、リブロの文字であった。


 オラニアは両手で、布の切れ端をぎゅっと握りしめた。

 

「これは、どこで? どうして、デアトリー様の手に」


 オラニアの声が震える。

 彼女の涙に気付かないふりをして、デアトリーは答えた。


「繭が取れる森の、あちこちの木に、括り付けられていた。これは弟君か?」


 何度もオラニアは頷いた。

 デアトリーはオラニアの肩をそっと抱く。


「良かったな。返事を書くか?」


「は、はい。書きます。無事だって、私は大丈夫だって!」


「君が書いたら、俺が森に届ける」 


 オラニアを椅子に座らせて、デアトリーは小さな包みを一つ取り出す。


「お土産は、もう一つあるんだ」


 テーブルの上に、デアトリーは包みをそっと乗せる。

 鶏卵くらいの大きさだろうか。


「開けてごらん」


 オラニアは言われた通り、包みを開く。


「えっ! これ……これって」


 包みの中には、鶏卵より、ひと周りほど小さな繭があった。

 森で取れる繭よりは若干大きい。

 何よりもオラニアの目を奪ったのは、繭の色である。

 

 ぼかしたような薄紅と淡い青と若草色が重なり、その上に粉をはたいたような紫と金色が落ちている。

 こんな繭は見たことがない。こんな色鮮やかな……。


「この色の繭、初めて見るわ」


「俺も初めて見た。見つけたのは同じ森だ」


 繭からは、時々細い光が漏れる。

 発光する繭など、オラニアは知らなかった。


「同行していた高齢の兵に聞いてみたら、『虹色の繭』ではないかと言っていたよ」


 虹色の繭!

 オラニアが、ずっと憧れていたものだ。

 これが、実物なのだろうか。


「まあ、本物の虹色かどうかは別にして、孵化した成虫を見てみたいな」


「はい。私も見たいです」


 


◆辿り着いた先◆


 

 ロイザーは商会の名前と幾ばくかの金を使いながら、モブシアンに問題なく入国した。

 漠然とオラニアを探すには、モブシアンは広すぎる。


 そこで、オラニアが捕らわれた森を管理する人物を探した。


「ああ、そりゃあ将軍だ」

「将軍とその部下だな。あそこは繭の狩場だし」


 意外にも、該当人物はすぐに特定できた。

 国境付近で『将軍』と呼ばれる人物は一人だけだ。


 デアトリーという男だ。

 将軍は役職名というより、愛称であった。


「将軍に会いたい? なんで」


 こういう質問に、商会の名は有効だ。


「戦争が終わって、現在こちらのお国でも、いろいろな物が不足しているのではないでしょうか」


 ロイザーがにこやかに答えると、厳つい兵士も納得した。

 国境を越えてひと月かかったが、ようやくロイザーは「将軍」に会える。

あと少し続きますm(__)m

誤字報告、助かっています。

応援、ありがとうございます!!

感想返信、少々お待ちくださいますよう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あ、まだ続くんですね♪ オラニアとデアトリーの心の距離が近づいてるーーー。 [気になる点] 一方で、ロイザーの方は物理的な距離が近づいてきたぞ!! [一言] えー、どっちも悪い男じゃないよ…
[一言] リブロ……!!(ブワッ)
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