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俺が入ってどうすんだ!〜憧れの異世界転生先は悪役令嬢でした。〜  作者: あきのそら
1章 英雄になりたかった異世界転生
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十一節【悪役令嬢、現状を知る。】

気が付くと辺りの景色が変わっていた、薄暗く埃に塗れた汚い倉庫の中から、白い綿のような地面、目の前には古代の神殿のような建物とその入り口らしき場所に、あぐらを掻いている神々しく思わず息を飲むような雰囲気と気迫を持った美しい女性の姿、そして何よりも目を惹いたのは水晶に閉じ込められその中で何かを抱えて丸まって眠っているような姿の自分の体と、対照的に何かから庇う様に全身を広げてそのまま硬直している姿のアヴリル様が入った水晶が浮かんでいた。


「あぁ!俺の体!!」


「むっ?…やっとこちらに呼ぶことが出来ました…!」


思わず素の口調で大声を上げてしまい、辺りに関係者がいないかを確認しているとあぐらを掻いていた女性が話しかけてきた、とにかく早く元の体に戻してくれと藁にも縋るような思いをしながら話しかけてきた女性の方を振り向くと


「…そして、誠に申し訳ありません!」


そこにはいつの間にか、きれいに指を揃えてこれ以上下げたら地面に頭が埋まるんじゃないか…すでに頭の半分ぐらいが綿に埋もれている位、深く頭を下げて土下座をしている女性がいた。


「えっと、話せば長くなるのですが…今回の転生についてこちらのミスが大元でして…」


よくよく話を聞いてみると彼女は世界を管理して決まった未来へ誘導していくためのシステムに近い下級の女神様で、本来は転生時に波長が合う人間、あるいは性格などが近い人間を選んだ上で転生させる手筈だったのだが、飛び込みで俺の魂がここへ来てしまった結果、俺が相手を好いていることがその判断を下す機械の結果にエラーを起こしてしまい。


俺の魂がアヴリル様に、本来アヴリル様に入るはずだった魂は、元々移動するはずの場所と全く別の世界に移動してしまい、慌てて止めた時にはもうその結果から動かすことが出来なくなったようで、俺の体は今魂のない抜け殻状態で本来の世界の病院に、アヴリル様の魂は新たな移動先が見つからず…今は先ほど倉庫の中で見た水晶の中で休眠状態を取っているとの事。


そして、アヴリル様の体に俺の魂が入っていることで今の世界に変化が起きており、本来決まっていた未来がどうなるのか自分でも皆目、見当付かなくなってしまっているらしい。


「なるほど、だから俺がプレイしていたゲームと展開が違うのか…それってかなり不味い?」

「いえ、本来はここで交換する魂が魔族と契約をして世界を壊そうとしていたので、死ぬ定めからは解放されたのですが、逆に干渉しにくくなってしまって…なのでお願いです。」


女神は会話するために上げていた顔を再度、地に擦り付けて土下座しなおし。


「あなたには正式にこの世界の住人になってください!もちろんこちらで問題が解決した際にはあなたを元の世界に戻すことも出来ますし、アヴリルが戻る際は一度前回の世界で生活してもらうことで帳尻を合わせますから!」


え? じゃあ俺このままあの世界でアヴリル様として生活続けるの? リセットして戻したり出来ないの?と何個も質問を投げかけると女神は目に涙を浮かべて足元に縋りついてきた。


「今無理矢理世界を戻すと、多分あなたの魂はその衝撃に耐えられず、世界ごと消滅してしまうことになります。仮にその衝撃に魂が耐えられた場合でもこの世界はおそらく耐えられずに、多分あなたの世界でもこの世界の事は消えてしまいます。おそらくはそっちの世界でこの世界の話が無かったことになりますね。それでもいいなら無理矢理治せる可能性はありますが…それはこの世界の人間全てが息絶える、ということにもなります。それでもいいですか?」


思わずゾッと背筋が凍った、自分の好きなゲームが無くなる、しかも自分のせいで…?

「なんだよそれ…そんなの有りかよ…」悔しさに拳を握り自分の体の入った水晶を何度も殴りつける、やっと見つけた自分の体だが戻れないかもしれない。無理に戻ればこの世界が無くなる可能性がある。

そんな様子の俺を女神は後ろから何をするでもなくただ申し訳なさそうに謝り続けていた。


「…ごめんなさい。取り乱して迷惑かけました。」


「いえ…誰だっていきなりそんなことを言われたらこうなるのは当たり前ですよ、むしろ私の方が申し訳なくて…はぁ…」


しばらくして俺が落ち着き、お互いに謝罪を口にしながら当面の事を話し合う。

少なくとも今戻って世界が無くなるくらいなら存続はさせたい、その上で現状の未来が不安定な為、今まで見てきたこととは違うことが起きやすくなっているのと、本来抑えるはずの主人公が出ていないから、俺は出来る限りこの世界を守るのが当面の目標になるとの事。そうして時間を稼いで貰って女神は原因の解決を急ぐということで話は纏まった。


「…わかった。俺が出来るかわからないけど頑張ってみるよ。そうしないと戻れないんだろうし、よろしくな、えーっと…」


「女神様でいいですよ。これでも私、先代の『救世の少女』ですので!」


思わず一瞬固まった、先代の少女って確かこの世界の創世記に起きた戦争後にいなくなった設定だよね? しかも確か没になったルートで会えるとか言われてた…ってことは、この世界ならもしかしてスチルにないようなイベントも起きるってことじゃ…


「えへ、えへへ…やば、マジで?ふふふふふ…」


「あの…およそヒロインがしてはいけないようなお顔になってますが…」


「はっ! 気にしないで!ちょっと楽しみになってきただけだから!」


「はぁ…?ま、まぁ楽しめるような状態に慣れたならよかったですけど…。」


怪しいものを見るかのような目線を向けてくる女神に気まずくなって顔を伏せていると、女神さまが軽く咳払いし何かタブレットのようなものを操作し始め。


「そろそろこの場所の時間制限がきつそうなので一度あなたをアヴリルの体へ戻します。いいですね?また折を見て水晶の前に来てください!わかりましたね?それでは!」


「あっ、ちょっ、待っ」


言い切る前にパネルを押した女神に待ったをかけようとするも間に合わず。

俺は突然の強風みたいな衝撃で思いっきり突き飛ばされ、暗い闇に沈んでいくのであった。


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