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まろのお留守番とキルト

「うーん……やることがなくなってしまったのである」


 がらんとした店内を見れば、商品がすべて売り切れていることがわかる。あいかわらず凄いなと思いつつ、そっと店の中へ足を踏み入れた。


「ごめんなさい、もう売り切れて……あれ、キルト?」

「こんにちは」


 店に来た客が僕であることに気付いたまろが、笑顔で迎えいれてくれた。しかし回復薬が売り切れてしまっているからだろう、申し訳なさそうな顔で謝られる。

 最近、僕はよくこのお見せに来る。ひなみ様はイクルさんと旅に出かけているからいないけれど、変わりに店番をしているまろといつの間にか仲良くなった。

 自分より年下の女の子なので、少し兄的な気持ちもあるのかもしれない。


「いいよ、通りかかりに寄っただけだから。はい、これお土産」

「わ、ありがとうなのである〜!」


 少し先のお店で買ったあめを渡せば、すごく喜んでくれた。

 どうやらまろはお菓子が好きらしい……という結論にいたるまで、そんなに時間はかからなかった。

 それ以降は、なんとなく喜ぶ顔が見たくてお菓子をお土産にしている。シンシア様と一緒のときもあれば、僕が1人のときもある。

 本当は、1人できたい。それには少し特殊な事情がある……というのは、僕とまろの秘密だ。今日もそのことに気付いたまろが指摘してくれる。


「あ、キルト……身体のバランス少し変」

「バランス?」

「うん。右に重心が寄りがちなのである! 前衛術師はバランスが大事だから、立つ時は姿勢をよくしたほうがいいのである!」

「確かに……無意識だと右足に体重をかけてるかも」


 そう、まろと僕の秘密はこれだ。

 シンシア様のためにつよくなりたい僕。少し身体の使い方に悩んでいるときまろに出会い、今のようにアドバイスをもらった。

 それからは、お店に来るたびに何か1つ指摘をしてくれる。けれど、年下の女の子に指摘されているのをシンシア様に見られるのは……やっぱり恥ずかしいので。これは2人のときだけとなった。

 僕だって男だ。これは、なけなしのプライドだった。


「ふふん、まろはすごいのである!」


いったいこの女の子のどこにこんな特技があるのか。しかし胸を張ってすごいだろと主張するのは、少し可愛いと思ってしまうのも事実だ。


「っと、これからシンシア様と狩りだった」

「がんばなのであるー」

「ありがとう、また!」

「いってらっしゃいー」


 カランと音を立ててお店を出て、まろに手を振る。

 そういえば、1度もお店から出たところをみたことがない。しっかお店番をする偉い子なんだと思いつつ、僕はシンシア様の元へ駆け出した。

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