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第五話 -3

「ん……う……」


巧が目を覚ました。


「おはよ」


「あ、おはようございます」


目の前のセクシーな女性に、反射的に挨拶を返す。


「……ん?」


数秒後、女性に見覚えがないことに気付いた。


「えっと……」


必死に頭の中を整理する。


たしか……道場に行って………仮子さんって人と勝負することになって…………そうか、負けて気を失ったのか………え?目の前の人はだれ?


「はじめまして。あたしはナミクーチカ」


「あ、えっと、空島巧です」


「ええ、知ってるわ」


「え?」


「だって、敵だもの」


ナミクーチカのその言葉で、巧の脳裏にオロチのことがよぎった。


「ふふ、誘拐しちゃった。ここはあたし達のアジトよ」


巧が周囲を見渡す。

病室のような、研究室のような、そんな雰囲気。

だが、アジトということはこの建物の中にオロチもいるということだ。同時に、瑞穂もどこかにいる。


「おとなしくあたしについてきて」


「……断ったら?」


「別にいいけど……一人で帰れる?」


「………」


帰れるはずがない。

場所もわからないし、オロチどころかケイム・エラーに見つかっただけでもう終わりだ。


無言を答えと取ったのか、ナミクーチカは微笑んだ。




「……さん………ぎさん!津薙さん!」


陽芽の声で、かなめが目を覚ます。


「んん………………巧っ!!」


とっさに上半身を起こし、巧が寝ていた布団を見る。誰もいない。


「お医者様を連れてきたら空島さんがいなくなってて、あなたが倒れてて……何があったのですか?」


「連れ去られた……」


かなめが立ち上がる。しかし、まだ本調子ではないのか、よろけてしまった。


「……!」


転ぶまえに、かなめの身体が誰かに支えられた。仮子白宗だ。


「オロチ……だな?」


白宗がつぶやく。


「知ってるの?」


「まぁな。元藤のじいさんからちょっと話を聞いたこともある」


「行かなきゃ……!」


かなめが、よろけながらも一歩を踏み出す。


「どこに連れていかれたのか、場所はわかるのですか?」


「………」


気を失っていたのだ。わかるはずがない。


「……おそらく護符で転移したな。属性は……陰か?」


白宗がつぶやいた。


「白宗さん、わかるんですか?」


「ああ。五行を使うと、そこにはしばらく跡みたいなものが残るもんだ。まぁ、実際に傷がついてたりするわけじゃなくて、気が乱れてるみたいな感覚的なもんだけどな」


「転移……」


かなめの頭に、オロチ達が使っている黒い霧を発生させる護符が思い浮かんだ。


「それじゃ、追うことなんて……」


崩れ落ちるかなめ。


「できるぞ」


だが、白宗は当然だと言わんばかりに軽い口調で言った。


「転移してまだ時間はそんなに経っていない。今ならその転移に使った空間の穴みたいなのを強引にこじ開けることができる」


「本当……?」


「ああ。救出、手伝ってやるよ。俺と嬢ちゃんが」


「えっ、うちもですかっ!?」


この子、戦えなさそうだけど……


かなめは、陽芽を見てそう思った。

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