第二話 -1
「ねぇ……ねぇ、起きて……」
そんな声と共に、巧の身体が揺らされる。
「ん……ん~……」
寝ぼけながらも、スマホで時間を確認。
現在朝の6時。
2~3時間しか寝ていない巧は、まだまだ眠い。
「起きた?」
「え……?」
横で巧をじーっと見ている少女。
「えーっと……」
巧は一瞬まだ夢の中かと思ったが、周りを見渡してここが自分の部屋じゃないことを確認すると、寝ぼけた頭に昨日のことが鮮明によみがえってきた。
瑞穂が行方不明になったこと――
謎の女性に蜃気楼の中へと引き込まれたこと――
そして、見知らぬ土地で見た非現実的な現実――
「そうだ、僕は……」
瑞穂の捜索という目的を思いだすと共に、眠気が覚めていくのを感じる。
早く見つけて帰らなきゃ!ーー
立ち上がり、気合いを入れる巧の横で、かなめがせっせと簡易ベッドを片付ける。
そして、
「来て」
かなめが巧の腕を引き、
「乗って」
巧をベッドに上げ、
「……」
布団をかけながら巧を押し倒した。
「えっ!?ちょっ……」
突然のことにパニクる巧。
慌ててベッドから降りようとするが、かなめが巧を上からおさえて阻止する。
「だめ」
「……っ」
巧の顔は真っ赤だ。
大人しくなった巧に添い寝するかなめ。
「動かないで。静かにしてて」
そう言うとかなめは巧の頭に腕を回し、胸に抱きかかえるように引きよせた。
「……!」
何か喋ろうにも話せないほどに巧の顔がかなめの胸に押し付けられ、さらにかなめが巧の身体に足を絡める。
何だ、この展開?
息がしづらい……
やわらかい……
この子、幼く見えるけど実は……?
いい匂い……
一体どうすれば……
瑞穂ちゃんを捜さなくちゃ……
僕も抱きしめた方がいいのかな……
あ、この世界の話聞かなくちゃ……
女の子ってあったかい……
巧の頭の中を様々な考えが回る。
そのときだった。
「おはよう、かなめちゃん。朝ですよ~」
「……っ!」
突然ドアがノックされ、誰かが入ってきた。
「おはようございます」
かなめが何事もなく対応している。
「はい、体温計」
巧は頭まで布団にすっぽり入っているため見えないが、2人の会話からして、ナースが検温のための体温計を持ってきたことは簡単に予想できた。
「ん?布団の中に誰かいる?妹さん?」
そんなナースの言葉に緊張が走る。
「抱き枕」
が、かなめはさらっと答えた。
「あぁ~、抱き枕か。言われてみれば誰か泊まるって連絡もらってないしね」
1人で納得したナースは、またあとで来るからね~と言い残し、部屋を出ていった。
足音が遠ざかる。
かなめは巧の拘束(?)を解き、布団を剥いで、
「……!」
無言で巧をベッドから押し出した。
「んぎゃっ!」
ドシンッ!という音とともに、巧が床に転がる。
「……えっち……」
「えぇーっ!」
自分から抱きついておいて、理不尽な話である。
「太もも……さわった……」
「そっち!?」
いや、わざと触ったわけではない。
むしろ胸の感触に集中してて、手をどこに置いていたか覚えていない。
ピピッという音が鳴る。
いつの間にか、かなめは体温を計っていたようだ。
その体温計を枕元において、かなめは真っ赤な顔で巧を見る。
「……もどって……体温計取りに来るから……」
そう言いながら布団をめくり上げる。
「いっ、いやっ!僕トイレに隠れてるから!」
しかし、巧の方が限界だったようだ。
巧は真っ赤な顔をしながら廊下へと向かう。
「あ……ごめん……」
突然謝るかなめ。
「ベッドから落ちた時、どこか痛めた?」
「え?」
「前かがみで歩いてるから……」
男子の朝には事情がある。
美少女に抱きしめられたのなら尚更だ。
「だっ、大丈夫ですっ!」
なぜか敬語の巧は、走って部屋を出た。




