第一話 -11
「時間も時間じゃ。我らも戻らねばならぬ場所があるゆえ、詳しい話は明日にしよう」
というわけで、巧は今、とある病室(個室)の簡易ベッドで横になっている。
あの女性がいうには、こっそりと家を抜け出してきたため、家族が気付く前に戻りたいとのこと。
この病室にきてわかったが、すでに深夜1時を過ぎている。
そんな時間に娘が家を抜け出していたら、ご両親は心配するだろう。
「お父さんとお母さん、心配してるかな…」
ふと、両親のことを思い出す巧。
まさか見知らぬ病院に一泊することになるとは思っていなかった。
「まずは情報収集。瑞穂ちゃんの捜索と、今自分がどこにいるのか。とりあえず明日……か…………」
いろいろと聞きたいことはあるが、仕方ない。瑞穂ちゃんは無事らしいし、休息も必要だ。と、巧は自分に言い聞かせる。
だが、巧は眠れないでいた。
疲れていないわけではないのだが、やはり気持ちが焦ってしまう。
そして、眠れない理由がもう1つ……
巧のすぐ隣にはもう1台のベッド。こちらは簡易ではなく、この部屋に備え付けられたものだ。
そのベッドでは、
「すぅ…すぅ…」
かなめが熟睡していた。
寝相が悪いのか、現在ベッドぎりぎり(巧がいる方)で寝ているため、
高さの低い簡易ベッドに寝ている巧からでも、可愛らしい寝顔がばっちり目視可能だった。
うつぶせになっているため顔半分がむにゅっとつぶれているが、それはそれで可愛らしい。
「く……」
病院前であの女性と別れ、わけも分からずかなめに病室に連れてこられた結果がこれである。
まぁ野宿よりは何倍もマシなのだが…
「女の子と……2人きり……」
思春期真っ盛りな巧には刺激が強い。
シーツの擦れる音と共に、かなめの腕がベッドからぶら下がった。
このままでは、かなめはそのうちベッドから落ちるだろう。
「…………あー、もう……」
巧は簡易ベッドから起き上がり、かなめが起きないようにそ~っとベッドの中心部へとかなめの身体を転がす。
パジャマ越しに伝わるかなめの体温。
顔が熱く、心臓の音がうるさく感じる。何か悪いことをしている気分。
そのとき、
「ん…んん……」
かなめが寝返りをうった。
「…っ!」
とっさにしゃがみこんで隠れる巧。
起こしちゃったかな?と思いながらおそるおそる立ち上がってみるが、かなめはすやすやと寝ていた。
ほっと一息つきながらかなめに布団をかけ直そうとする巧の目に、かなめの姿が映る。
無防備に眠り続ける少女。
呼吸で軽く上下する胸は、ひかえめながらも女であることを主張している。
ちょっとくらい触ったって起きないよ――
巧の中の悪魔がささやく。
が、すぐさま天使巧が悪魔巧を殴り飛ばし、巧は顔を真っ赤にしながらかなめに布団をかけ、簡易ベッドへと戻った。
「ね…眠れない……」
時間はすでに午前3時を過ぎていた――




