もぐるぜっ
撫子と零式は惑星753に大気圏降下した後、海中に潜った。
穴熊作戦は、惑星に潜伏して、敵をひきつけつつ救援を待つ最終段階に入ったのである。
ピーン、ピピ―ン
アクティブソナーの音が深海に響く。
「深海13000メートルですヮッ」
レイカが深度計を見ながら言った。
「……そうジャノウ」
シャルロッテが少し呆れたように答える。
宇宙戦艦が飛びかう未来でも、深海はまだまだ過酷な環境なのだ。
益荒男改め撫子の元となった万能重機、”頑轍。
さも当たり前のように、超深海での作業する能力も与えられていた。
360度オールアラウンドビューの操縦席に深海が映る。
「あ、ダイオウグソクムシ……ジャノ」
3メートルくらいの大きさのピンク色のダンゴムシが海底をのそのそと動く。
アクティブソナーと超高感度カメラが、光の全く届かない深海を補正しながら映していた。
「超電導電磁推進装置作動ですヮ」
別名、ウオータージェット。
超電磁砲で、電流を流した海水を噴射するといった感じか。
2016年まで神戸海洋博物館に、これの試作船である、”ヤマト1”が展示されていたが撤去されたそうだ。
撫子の腰部装甲の一部がスライドして開く。
ヒュウウウ
クジラの鳴き声のように聞こえると言われる、独特の排水音を出しながら、
撫子が深海を動き出した。
映画「レッドオ〇トーバーを追え」参照。
撫子がその場でクルリと回る。
「む、ミツクリザメ……ジャノ」
突き出た鼻先にせり出すような大きな口の深海サメだ。
その先に、海底に沈んで傾いた零式が見えた。
「サカイ様、サカイ様、けん引ロープをのばしますヮッ」
カチャン
撫子の腰回りから金属のチューブが伸びて、零式のけん引フックにつながった。
「レイカさん、急いで浮上していただけるとありがたいかなあ」
無線からサカイの少し慌てたような声が聞こえた。
◆
サカイは、零式の操縦席の横に、ひもをピンと張って貼り付けた。
「たしか、零式の耐圧深度は10000メートルくらいだったっけ」
当然、零式に深海用の装備などない。
最初は淡い青色だった海水が海の底に沈むにしたがって、真っ暗闇になっていく。
操縦席内に赤い警告灯が灯った。
ギシ
ギシギシ
操縦席がきしんだ。
さらに沈む。
操縦席のピンと張ったはずのひもがかなりたるんでいた。
操縦席が水圧で押しつぶされているのだ。
ガクン
軽い振動と共に沈むのが止まる。
「あはは、もう海底かなあ」
周りは何も見えない闇だ。
深度計などついていない。
ピンッ
どこかのネジが涼しげな音とともに飛んだ。
チョロ、チョロ
「う、うわっ」
隙間から海水がにじみ出て来る。
サカイは、過去の戦闘で宇宙を遭難、漂流するという経験は何度もして来た。
「流石に海の中は初めて……かなあ」
――不安だなあ
ギギギギギ
変な音がし始めた。
「サカイ様、サカイ様、けん引ロープをのばしますヮッ」
無線から流れるレイカ嬢の声にホッとしながら
「レイカさん、急いで浮上していただけるとありがたいかなあ」
少し慌てて無線に言った。




