たのむぜっ
「サカイさまあああ」
レイカが金髪ドゥ・リー・ルを左右に振りながら叫んだ。
レイカの目の前。
艦橋の四角い窓ガラスの向こうで、赤い炎に包まれる益荒男。
「……大丈夫よっ、問題ないわっ」
艦橋のレーダー席に座るマリアが言う。
炎の後には黒焦げの四角い機体。
だがすぐに、機体の各所から小さな火花。
爆炸ボルトが作動。
周りにばらばらと焼け焦げた装甲が舞う。
「流石、益荒男何ともないのっ」
「五層の積層装甲は伊達ではないわっ」
「まだよ、たかがメインの装甲をやられただけよっ」
焼け焦げた装甲を切り離し《パージ》。
警告の為に赤く塗られた第一次装甲が露出する。
生れたままの姿(←万能重機、頑轍のこと)になった。
益荒男が赤い。
「これで通常のザ〇の三倍よ~」
「益荒男が量産された暁には~……モガモガ」
これ以上は危ない。
マリアの口をサクラギが両手でふさぐ。
「こちらサカイとシャルロッテ、無事です」
「帰投します」
サカイの緊張感のない声。
「サカイさまっ」
レイカが艦橋から格納庫に走る。
「それと、艦を座標6、2、1に移動してください」
「師匠、”ガーゴイルルート”ジャナ」
「ガーゴイルルート……か」
海野艦長が唸る。
「はい、海賊都市、”サルベージ”に避難しましょう」
◆
海賊都市、”サルベージ”。
小惑星地帯は昔から交通の難所だった。
難破した宇宙船を引き揚げる(サルベージする)為に小惑星地帯の中に都市がつくられる。
海賊都市、”サルベージ”である。
独自のルート、(例えばガーゴイルルートなど)をたどらなければ着けないため、いつしか《《海賊》》や《《アンダーグラウンド》》な組織の拠点となった。
サカイがいた、”ガゼフ解放戦線”も少し前まで間借りしていたのだ。
ガゼフ軍であろうとニャンドロスであろうとも、簡単には手出し出来ない無法地帯である。
ちなみに、戦時中サカイはシャルロッテを、ほとぼりが冷めるまでここにかくまっていた。
◆
益荒男が艦に帰って来た。
格納庫に空気が入る。
紅く染まった益荒男の操縦席が開く。
キッ
レイカがサカイを責めるようににらんだ。
「あ、レ、レイカさん……?」
サカイが怯む。
「あ、あのような、特攻まがいのことは……」
ジワリと、レイカのまなじりに涙が溜まる。
「……もう二度と……しないでください……」
「あ、いや、戦時中じゃああれくらいは……」
「死んでしまったかと思いました……」
「五層の装甲が……」
「死んでは……嫌です……」
レイカがうつむいてスンスンと泣き出してしまった。
「師匠……」
――何とかするのジャ
シャルロッテが、レイカを親指で指しながら呆れたような声を出す。
「あ、ああ、わかった」
サカイがシャルロッテに言う。
「ごめん」
「ん」
レイカの小さな声。
サカイが、うつむいて泣いているレイカをふんわりと抱きしめた。
遠慮がちに胸に寄せる。
「反省してる、二度としないよ」
「……はい……」
レイカが、サカイの胸にほんの少し体重をあずけたのである。




