あたるぜっ
小惑星帯の間を、紅い光が明滅している。バーニア炎の光だ。
やまとんの半分くらいの大きさの岩の塊の間を、四角い宇宙戦闘機が縦横無尽に飛び交う。
パパッ
腕にはシールドとニ十式自動小銃。
「ヒット、ヒットなのジャ」
益荒男の前席《ガンナー席》に座るシャルロッテが言った。
小惑星の影に置かれた的を移動しながら撃ちぬく。
「相変わらず目がいいなあ」
後席のサカイが益荒男を巧みに飛ばしながら言う。
「懐かしいノウ」
シャルロッテは戦時中、パルチザンに助けられた時がある。多分、第一王子に、前線で所属部隊ごと孤立させられたのだ。
しばらくかくまわれるようにパルチザンと行動を共にした。その時にサカイに弟子入りしたのである。
くしくも同じこの場所で訓練を受けたのだ。
「……しかし」
ニ十式自動小銃は自分の零戦に装備していたものだ。
サクラギ殿とマリア殿には大きな対物ライフルを、レイカ嬢には欠陥銃(SA80アサルトライフルのこと)を強く勧められたのである。
「なんなんジャろうナア?」
シャルロッテが不思議そうな顔をした。それは三人の偏った趣味である。
その時だ。
魚雷がこちらに向かっていると無線が来たのは。
◆
「艦長、フウマから入電です」
重装甲艦、”文福茶釜”のブリッジに暗号通信が入った。
「解析せよ」
艦長帽を被った初老の艦長が言う。
今王女様は、益荒男の試射に出ているはずだ。
ナハト・ラウフェントUボートゴセキガソチラニムカウ
「です」
「なにっ、”豆狸”に全方位ソナー 用意」
左右にいる駆逐艦、”豆狸”に無線で指示。
二艦の、”豆狸”の艦底から流線型のソナーがダイブ空間に出される。
「準備完了」
「打てっ」
カ――――ン
宇宙を満たす物質、”ダークマター”を振動させるソナーだ。
「…………アクティブソナーに感なし」
”豆狸”一番艦の若干若いソナー手だ。
「……いや」
違和感を感じた、”豆狸”二番艦の初老のソナー手がうなる。彼は、ニャンドロス戦を生き残ったベテランだ。
「方位、11・3・5 にピンガー用意」
ピンポイントで詳しく探れる指向性ソナーだ。
「打てっ」
ピ――ン
ピピピ――ン
「感ありっ、反応五、ステルス中のUボートと推測されるっ」
ベテランのソナー手が叫んだ。
「対潜宙艦戦、用意っ」
「王女様とやまとんにも知らせろっ」
”文福茶釜”の艦長が言った。
「艦長っ、魚雷発射音、八、いや十っ」
十発のダイブ魚雷がこちらに迫る。
「くっ、対魚雷防御っ。デコイをばらまけっ」
即座に、三艦からおとりの魚雷がばらまかれた。
ダイブ魚雷はダイブ空間で発射された後、狙いを正確にするために艦の少し手前の通常空間に姿を現す。
通常空間に出た魚雷をデコイが自ら当たりに行った。
パパパパパ
宇宙に球形の炎の球が咲いた。
デコイが魚雷に当たった光である。
「敵魚雷、三発健在っ」
「対空砲で落とせっ」
戦艦と駆逐艦二艦からミシン目のような光が飛び出る。
「二発撃墜っ、一発抜かれました」
やまとんに迎撃し損ねた魚雷が迫る。
いくら宇宙戦艦と名乗っていてもやまとんは大砲のついた輸送船に過ぎない(のだよ)。
魚雷一発で撃沈だ。
「シャルロッテ、無茶するぞっ」
サカイが叫んだ。
「はいなのジャッ」
シャルロッテが答える。
「高機動モードッ」
益荒男の全身にバーニアの花が咲いた。
「間に合えええ」
益荒男が白い光と共に急激な速度でやまとんの前へ。
「む、無茶ですヮアアア」
ブリッジでいち早くサカイの意図に気づいたレイカが叫ぶ。
唐揚げのタワーの向こうに優しげなサカイの笑顔がよぎった。
魚雷。
益荒男。
やまとん。
パアア
やまとんのブリッジの前に広がる閃光。
魚雷が益荒男に直撃した。




