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異世界彼女は純和風  作者: 凪沙一人
守れるのは自分
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拾壱葉 ‡ 色葉の病

もはや、困った時の北条さん

「オーライ、オーライ。」

 転居にあたっては、普通に業者を依頼した。色葉は魔法を使ってもいいと言ったが、如何に近隣の様子に無関心な人の多い都会でも、忽然と消えたり、突然生活を始めては、逆に変な関心を持たれないとも限らない。たとえ神経質と言われようと、変に勘ぐられるような事は避けたかった。大友や北条さんには引っ越しが済んでから知らせるつもりだ。色葉の荷物が急須一個って普通、ないだろう。荷物も運び終わり業者も引き上げた。

「さてと、荷ほどきしないとな。」

「あ、あたしがやります。」

 色葉は帯から扇子を抜いたかと思うと、一振りで荷物が片付いていた。

「何か使い難い処があったら言ってください。すぐ、直しますから。」

 見渡したところ、問題は無さそうだ。敢えて言うなら、前の部屋とレイアウトを、ほぼ同じように配置したので、この部屋だけ見ると引っ越した感が薄い。

「こちらの御部屋は、どうなさるのですか? 」

 色葉が覗き込んだ部屋は、前のアパートには無かった和室だ。

「こっちは色葉の部屋だよ。」

「そ、そんな、とんでもない。」

 色葉が激しく首を横に振るものだから、思わず頬に手を添えて止めた。

「あっ… えと… 」

「あ、ゴメン。つい。」

 僕が慌てて手を離すと、色葉は真っ赤な顔をして胸を押さえていた。

「あ、あたしは今までどおり、急須で構いませんから、直が使ってください。」

 顔を赤らめて、俯いたままの色葉を、僕は後ろから抱き締めて頬を合わせた。

「ひゃっ… 」

「これから、こっちの世界で暮らすんだから、この世界のやり方に慣れて欲しいんだ。… 色葉、熱くないか? 」

 思わず、おでこを合わせてみる。

「ひぇっ… 」

 なんか、更に赤くなった気がする。

「そうだ、治癒魔法は? 」

「それが… 頭ボーっとしちゃって上手く出来なくて… 」

「色葉の布団は? 」

「急須のな… 」

 拙いな。色葉をお姫様抱っこして僕のベッドに運んだ。

「ひょっ… 」

 ベッドに寝かせると救急箱から冷却ジェルシートを探して、色葉の額に貼った。

「そうだ、医者を… 」

 呼ぼうとした僕の手を色葉が止めた。

「多分… こちらの世界には無い病です。熱が下がれば治癒魔法も使えると思うので、眠ります。」

 言うが早いか、色葉は可愛い寝息を立てていた。それにしても、凄い寝汗だな・・・着替えさせる? 汗を拭いてあげる? 誰が? 僕… は拙い。予定外のタイミングだが、仕方がない。北条さんに連絡すると、物凄い速さでやって来た。

「ハァハァ、色葉ちゃんを病気にしたって!? 」

 いや、僕が病気にした訳じゃない。

「こんなに汗かいて… 色葉ちゃんの着替えは? 」

 僕が隣の部屋を指すと、北条さんが入っていった。

「えぇ~っ、本気マジぃ!? 」

 北条さんの叫び声がしたかと思うと、慌ててこちらの部屋に戻ってきた。

「ねぇ、色葉ちゃんの着替えって、あれだけ? 下着とかは!? … って知らないか。てか、知らないで欲しい。」

 反射的に激しく頷いた。色葉の下着なんて知らない。っていうか、多分、持って無い。将軍とか奉行とかから想像するに、そんな服飾文化は存在しないと思われる。

「取り敢えず、タオル貸して。色葉ちゃんの部屋、日本手拭いしか無くて。もう、いつも着物姿しか見てなかったけど、まさか、ここまで和装しかないなんて。まるでタイムマシンで昔から来たみたいよ。」

 いや、魔法で異世界から来た… なんて、突っ込んでる場合じゃない。むしろ、いつの間に着物を急須から持ち出していたんだろう? それとも魔法で作ったのか? ともかく北条さんに疑われない程度の物は部屋にあったらしい。

「取り敢えず、汗拭いて着替えさせるから、鍋島さんは、向こう行ってて。」

 僕たちの家なんだが… これは仕方ない。暫くすると北条さんから声が掛かった。

「もう、いいわよ。」

 戻ると、着替え終わった色葉が、北条さんに支えられてベッドに座っていた。

「色葉、起きてて大丈夫なのか? 」

「はい… 北条さんのお陰で少し楽になりました。」

 このタイミングでドアのチャイムが鳴った。

「あ、いいわ。私出る。どうせ、大友あのバカだから。」

 北条さんが離れた隙に、僕は色葉の右隣に座った。

「大丈夫そうか? 」

 そう言って僕は右手を差し出した。

「はい… 申し訳ないです。」

 色葉も右手を重ねてきた。少しは慣れたのか、前のような目眩は起きなかった。これも懐鏡の所為だろうか? 色葉が僕の左肩に頭を乗せてきたので、僕も左手を色葉の左肩に掛けて寄せた。懐鏡が攻撃魔法以外も跳ね返す物で良かった。触れている面積が多かった分、色葉も元気になった。

「はい、そこっ! 私が目を離したからってイチャつかないっ! 」

 北条さんの声に僕たちは慌てて離れた。色葉にフラつく様子が無くて安心した。そんな僕らを北条さんが横目で見てため息を吐いた。

「はぁ。せっかく手料理で色葉ちゃんに精をつけて貰おうと思って大友に買い物させたのに… 無駄んなっちゃったかな。」

「そ、そんな事ないですっ! 」

 僕と色葉が異口同音、綺麗にハモったのを聞いて、北条さんは少し呆れていた。

「以心伝心、見せつけてくれるなぁ。どうせ、鍋島さんが料理するとか言うと色葉ちゃんが、あたしやりますとか、言っちゃうんでしょ? いいわ、病み上がりの色葉ちゃんにやらせる訳にはいかないから。私が作りますっ! 大友っ! ついでに、あんたの分も作ってあげるから、どっちの邪魔にもならないよう手伝いなさいっ! 」

「どっちのって? 」

「そこが鈍いのっ! 」

 大友は北条さんに台所に連れ去られた。

「だ… 大丈夫でしょうか? 」

 色葉が心配そうに見ていた。

「多分… 。北条さんは僕たちの事も、大友の事も、よく分かってるみたいだし。」

 色葉小さく頷いて、僕に寄り添っていた。

家のシーンが少ないので引っ越した感、薄め

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