表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/2

ヒロインの最期とクリストファーの転機

ヒロインの名前はエリスです。チラッとしか出てきません。

後日シャーロットはヒロインの罪の軽減を願った。馬鹿と別れられたのは彼女の勘違いのおかげだし、前作をきっとやっていない彼女にはハンデが大きすぎた。


結果、ヒロインはクリストファーが慰謝料を払い終わるまで侯爵家が用意した小屋で軟禁されることになった。粗末なベッドに粗末な食事だが、身の安全は保証されている。そしてクリストファーとは週に一回、三時間の逢瀬も出来る。人道的な措置だ。

クリストファーは、シャーロットへの二人分の慰謝料のために男娼となった。侯爵家が後見となるため、死ぬことはない。知らせを聞いたクリストファーは、

「一日三人でもいい。すぐに借金を返して愛するエリスと結婚してみせるさ。」

と自信満々だったが、初日は一人目で終了した。まさか同性相手だとは思っていなかったのか、泣き叫び疲れ果て失神した。一週間過ぎた頃、ヒロインとの逢瀬の時間を設けられたが、扱いに文句を言うヒロインにクリストファーは黙って頷くしか出来なかった。口を開けば自分の受けた仕打ちを吐き出しそうだったからである。二週目の逢瀬もヒロインが同じ態度だったので、三週目は仮病を使って休息に費やした。四週目に会ったヒロインはクリストファーを睨みつけて叫んだ。

「何であんたは綺麗なままなのよ!!」

ままというよりは、客を取らせるために娼館で磨き上げられてクリストファーの美しさに磨きがかかっていた。おまけに少しずつ色気も出ている。それに比べてヒロインはお気に入りの化粧道具を取られ、髪をケアするオイルもない。このままでは体のラインも崩れる一方だと荒れていた。近くにあった枕を投げられて、クリストファーはすぐに帰路についた。


「エドモンド様。一人分だとエリスはどうなりますか?」

五回目の逢瀬に行く前日、健康と精神状態の確認に娼館を訪れた兄にクリストファーは問いかけた。

「賢明な判断だが、同業に堕ちるだろうな。子爵は娘の母に入れ込んで結構な金を貢いでいたらしい。妾が死んで子爵家に娘を迎え入れたことで正妻と嫡男は実家に帰り離縁も成立したらしい。援助してくれる家もないようだから、嫡男が子爵を追い出して継ぐだろう。妾の娘の慰謝料の肩代わりなど絶対にしないだろうから、自分で返すしかない。」

「私のように後ろ盾はないのだから、酷い所に堕ちるのでしょうね。」

悲壮感を抱くこともなく、小さく笑みを浮かべるクリストファーに兄は続ける。

「おまけにお前との情事は有名だから没落した高潔な令嬢なんて価値は無い。値段を考えると、何十年娼館にいるよりもおぞましい目に遭うだろう。」

ん、と手を顎に当てて考え込む姿は壮絶に色気があり、兄はクリストファーの才能を知った。凄まじい男たらしだ。

「私とエリスは同じ道を歩めないようです。支払いは別で。」

あっさりとした決断に兄は頷いて書類を作った。


======

ヒロインは朝食がドアの外から入れられるまで起きない。

しかし、その日は早朝に見張りの護衛が乱暴にドアを開けた。そのまま無言でヒロインを担ぎあげ、馬車に放り込むと叫ぶヒロインを尻目に出発した。半時ほどして連れて来られた大きな屋敷。馬車の出口には人の良さそうな老夫婦がヒロインに手を差し伸べた。久しぶりの豪華な食事に風呂。使用人の手によるマッサージを全身に施され、荒れていた髪も肌も爪も元通り、いやそれ以上になった。

「クリストファーが慰謝料を返し終えたのね。こんな立派なお屋敷、侯爵様に買ってもらったのかしら。」

勘違いのヒロインは至福の時間を満喫した。


夜になれば見たことも無い豪華なドレスを着せられ、晩餐の席にエスコートされた。向かいの主の席は空いており、そのまま一人で食事を楽しみ食後のお茶を頂いている間に意識が途切れた。



======

クリストファーは三年で慰謝料をシャーロットに支払った。変わらない美貌。一見さんでは相手して貰えず、常連となってもわざと焦らす恋の駆け引き、兄に頼んで部屋に運んでもらった学園時代の教科書から学んだ教養がクリストファーを指名トップの高級男娼に相応しくした。

またシャーロットには既に謝罪の手紙を送り、許されている。結婚式の際には匿名で花束を送ったが、クリストフにバレてしまった。それから客のフリをして話をしに来るクリストフとはコンプレックスやしがらみが無くなり、すっきりとした友人関係となった。


完済の書類を作る間、クリストファーは兄に尋ねる。

「これで私は平民ですか?出来ればこのまま娼館で勤めたいのですが、いかがでしょうか、エドモンド様。」

男娼でいたいというクリストファーに兄の手は止まった。

「本気か?」

「ええ、私にはこれから真っ当な仕事など出来ないでしょう。それよりもこちらの方が色々と市井では聞けないお話もあります。侯爵家に有利な情報を流す代わりにいかがでしょうか?」

確かに使える情報をクリストファーから聞くこともあった兄は熟考した。

「エドモンドではなく兄と呼べ。」


侯爵家が金を援助して、館を買い取ったクリストファーは名前を変え、身分を隠して男爵邸に招待されては昔話に花を咲かせる。シャーロットとクリストフに子供が生まれると、誰の子供だというくらいに溺愛することになる。


続編ゲームで登場するイケおじクリスの友人で怪しい色気を放つ娼館の主エイリスの本名がクリストファーだとは、シャーロットはもちろん知る由もない。

結末まで読んでいただき、ありがとうございます。


正直なところ、こちらの方が書いてて楽しい。

続編ヒロインが現れたら、多分イケおじクリストフは攻略不可だしクリストファーは「昔の恋人があんたに似てたわ。」とか言いそう。


よろしければ、応援お願いします。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ヒロインには相応の末路を予感させつつ、見苦しいオチまで書かない事で読後感も悪くないです。 クリストファーが自分が苦労する事を覚えて精神的に大人になった事も良い話でした。 [気になる点] 続…
[一言] まあ、日本でも戦国武将とかそういうの多かったしね。ついでに変なところで子供作られてもなんだかんだ面倒くさいこと発生しそうだし衆道趣味のやつ専用にした方がいいよね。 そういうことする奴って大体…
[良い点] >>初日は一人目で終了した。まさか同性相手だとは思っていなかったのか、泣き叫び疲れ果て失神した 男性経験が少ない見目の良いノンケなんざガチホモ達のターゲットにされるよ。 ホモはデブ専もい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ