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鳴かぬなら 信長転生記  作者: 大橋むつお
111/192

111『柿食えば……』

鳴かぬなら 信長転生記


111『柿食えば……』信長 





 ごっくん



 一齧りした干し柿を呑み込むとキッチンのアレコレが消えて床だけになった。


 ドアがあったあたりに、小柄な人型の輪郭が現れる。


 この輪郭が人の姿をとったら干し柿どころではなくなるような気がして、もう一齧り。


 ムシャ ムシャ ムシャ…………けして急がない。


 美味いものを急いで食うのは下劣なことだ。


 茶人が言うところの一期一会だ。食べたいときが美味い時。何の用事か知らんが、ここで急く奴は小人だ。




 思い出す。




 こういう時、光秀はムスっと表情を殺して待っている。とたんに口の中にあるものまで不味くなる。


 サルなら笑顔になる。主が美味そうに食っているのが嬉しそうで、そして、美味そうに食っているのが羨ましくなってきて唾を飲み込み、それでも美味そうに食っていると、ついにはヨダレを垂らす。


「お前も食え」


 言ってやると「ありがたき幸せ!」と早口に言って、いっしょにムシャムシャ。


 気短な権六(柴田勝家)なら目を三角にする。権六が怒るのも面白い。怒らせ甲斐のある奴だから、そのまま怒らせておく。あいつの怒った顔も食い物を美味くしたからな。


 そう言えば、市も機嫌が悪くなったなあ……可愛い顔で「いつまで食べているんですか(;`O´)o!」と顔を赤くする。


 市も、食い物を美味くしてくれた。




 さて、こいつは……あ、食い終わってしまった。




 そいつの輪郭に中身が現れた……小柄な爺だ。


「なに奴だ」


「天照大神の使いで参った、オモイカネだ」


「オモイカネ? これでも見かけは美少女なんだぞ、美少女に向かって『重いかね?』とは失礼な爺だ」


「だれが体重を聞いておる、思う金の神と書いてオモイカネと読む。これでも高御産神たかむすびのかみの子にして、天照大神の相談役だったりするんだぞ」


「あ、天照が付けると言っていた助手か? あ、ひょっとして、干し柿はおまえか?」


「ああ、ふるさと納税のお返しにも使っている高天原の名産品じゃ。この任務が終わったら箱に入れて送ってやる。まずは仕事じゃ」


「是非もない」


「聞き及んでいると思うが、素戔嗚さまは、高天原を追われて以来、ずっと荒ぶっておられる。人と違って、あちらこちら、時と場所を超えて現れては悪さをなさっておられる……上総介殿にお願いしたいのは、この素戔嗚さまじゃ」


 オモイカネが指を回すと、なにやら行軍中の若武者が3D画像で現れた。


 赤地錦の直垂に赤糸縅の胴丸鎧、陣羽織の背中には桃の実がデザインされて、売れ残りの五月人形みたいな奴。


 桃太郎か?


「いかにも桃太郎じゃ。ただ、荒ぶっておられるので……」


 画面が拡大されると、桃太郎に付き従っているのは犬・猿・雉の三匹ではなくて三千余りの軍勢だ。


「これをやっつけろと言うのか?」


「いや、桃太郎、すなわち素戔嗚さまじゃが、大願を成就させてあげてもらいたいのじゃ」


「桃太郎の大願成就?」


「左様、桃太郎の大願成就」


「鬼退治か?」


「いかにも。ただ、この鬼退治、お伽話のように簡単にはいかんのだ。鬼がけっこう強くてな、何度立ち向かわれても返り討ちにされておられる」


「返り討ちなら、そこで話は終わりではないのか?」


「そこは神様なのじゃ、蘇ってはチャレンジを繰り返され、いよいよ軍勢は三千にまで膨れ上がった」


「やらせておけばいいだろ」


「それが、繰り返し負けておられるので、戦費も嵩み、犠牲者も多く、これ以上は見過ごしにできんのだ」


「…………で、俺に戦の指南をしろというわけか?」


「御明察。鬼退治を成就させてあげてくれ、この通りじゃ!」


 勢いよく下げたオモイカネの頭はブァリニャーニのようになっていた。


 オモイカネがキリシタンバテレンな訳が無く、これは、長年の気苦労によるものなんだろう。


 昼間の天照を思い出す……むべなるかな(-_-;)


 本能寺以外では失敗のない俺だ、軍勢も三千、なんとかなるだろう。


「分かった、行くぞ!」


「おお、やってくれるか(^▽^)!」


 

 オモイカネの顔が晴れ、とたんに、残っていたキッチンの床が消えて、あたりは尾張の田園地帯のようになったぞ……





☆彡 主な登場人物


織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)

熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま

織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)

平手 美姫       信長のクラス担任

武田 信玄       同級生

上杉 謙信       同級生

古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)

宮本 武蔵       孤高の剣聖

二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま

雑賀 孫一       クラスメート

松平 元康       クラスメート 後の徳川家康

リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)

今川 義元       学院生徒会長

坂本 乙女       学園生徒会長

曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹

諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相

大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん

孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟


 

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