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鳴かぬなら 信長転生記  作者: 大橋むつお
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110『風呂上がりに干し柿!』

鳴かぬなら 信長転生記


110『風呂上がりに干し柿!』信長 





 口に出して言ったことはないが、転生国家扶桑はなかなかのものだと思っている。


 信玄や謙信、生まれ変わっても天下を望む化け物ども。まあ、俺もその中に入っているがな。そういう化け物めいた者たちを美少女の姿で蘇らせ、来たるべき転生に備えさせる。


 なんで美少女なのか?


 一つは、その心身の軽やかさだろう。


 周囲の変化に敏感で、身体的にも心の上でも機敏に反応する。


 戦国大名というものは時に鈍重さも必要ではある。土岐氏を追い出すまでの斎藤道三、関東統一を成し遂げる前の北条早雲、「どうする!?」と自問自答してばかりだったころの家康とかな。


 だが、ここ一番、時至らば手のひらを返して行動に出る俊敏さ、心身の軽やかさを養うには十代の肉体と感性が適している。


 俺を含め戦国大名や英雄どもは、上手くやってきたように見えても自己評価は低い。


 信玄も謙信も川中島的戦術美学にこだわり過ぎて中央への進出が遅れたしな。サルは自分の才に溺れて組織や体制作りが不備、とち狂って朝鮮を攻めるという大ポカをやった上に政治体制は個人商店のレベルだった。


 家康は成功したように見えるが、あいつの幕府は地味すぎる。日本を地球的規模の引きこもりにしてしまいおった。


 260年後に明治維新を迎え、日本は世界に冠たる近代国家に変貌を遂げる。その下準備をしたのが、やつが基礎を作った江戸時代だと言われ、奴の地球規模の引きこもりを擁護する奴が多いがな。あれは失敗だ。


 明治維新を成し遂げられたのは、日本人の民族性だ。


 けして、奴の功績ではない。そのことを家康は自覚している。だからこそ、転生するにあたっては『家康』を使わずに、迷ってばかりのころの『元康』を名乗っているんだ。




 扶桑には、もう一つ『転生学園』がある。




 妹の市が通う奔放な高校だ。学園は男女共学。死亡年齢にかかわらず高校生の年齢で転生させているところは学院と同じだが『美』の字が付くとは限っていない。知っている限り、そいつが十代ではそうだったろうという姿かたちで転生して来ている。


 二宮忠八は飛行機オタク丸出し、リュドミラはめちゃくちゃ暗い狙撃女。生徒会長の坂本乙女は土佐の水平線に昇った日輪のように明るい逞しさだが、ちょっと暑苦しい圧があって、忠八みたいな地味なやつらは苦手だろう。


 学園の奴らは、生まれ変わっても元のままで、もう一回やってみようという奴らだ。


 この似たような、しかし根本のところでは、まるで方向が違う二つの学校。


 これをゆったり、泰然と受け止め育んでいるのが扶桑国。


 そして、扶桑総鎮守の御山の主、天照大神。




 実際に会ってみると拍子抜けだ。




 なんだか、めんどくさそうな時の濃に似ていた。濃っていうのは、斎藤道三の娘で俺の嫁さんな。


 めちゃくちゃ軽くて、諸事ぞんざいという性格に見えたぞ。


 扶桑の者がお参りに来ないとプータレていたが、実は、他の者たちには正体がバレているんじゃないのか?


 一度会ったら十分、いや、会うほどのことも無いみたいな。


 正直、俺もカックンだったしな。なんか、軽く言ってたが、素戔嗚をやっつけろととんでもないことを言うしな。


 まあ、二度と会うもんかだろうなあ。学院と学園の主だった奴の顔を思い浮かべて、そう思う。


 だが、俺はもう一度会う。


 茶姫のことをこのままにはしておけん。


 ジュルリ


 それに、あのバニラの香りは尋常では無かったからな(^_^;)。




 しかし、一週間になるというのに素戔嗚退治の事は言ってこない。


 確約の返事をしたわけではないが、事を前に進めるために、一度は引き受けてやらねばならんだろう。


 やったうえでこそ批判もできるし次の道も見えてくるだろうしな。




 うう……風呂に浸かりながら考え事は禁物だな。のぼせたか、ちょっと眩暈がする。


 しゃがみ込んで、ケロリンの湯桶で水を被り、水道の蛇口を捻って水を飲む。


 市のやつは、風呂場の水を飲むのを嫌がる。


「汚いでしょーが!」


「なぜだ、同じ水道水だろーが」


「そ、それに、浴室の水道って低いとこにあるでしょーが!」


「ああ、だから、しゃがんでだな、口を蛇口のとこに持って行ってだなあ……」


「実演しなくっていい!」


「え? ああ……」


 たしかに、大股開いて蛇口に口を持っていくと……みっともない。


「いいじゃないか、風呂には自分一人なんだから」


「そういうことじゃない!」


「ふふ、怒った市も可愛いぞ」


「もーー!( #>д<#)」


「アハハハ( ^ิ艸^ิ゜)」


 茶姫も楽しそうに笑った。上がったら、もう一度話してやろう。市がムキになって、茶姫が明るく笑う。


 今は、それでいい。




 髪を拭きながらキッチンに行くと、市と茶姫の楽しそうな声。よしよし……コーラでも飲もう。


 思ったら、テーブルに干し柿が置いてある。


 見ただけで分かる、大垣産の美味い奴だ。


 ヴァリニャーニにくれてやったら「日本の干しイチジクは美味でござります!」と感激しておった。やつの国には柿は無いということなので話が弾んだ。美味いものを美味いという奴は好きだ。お返しに、奴はコンフェートを持ってきてくれたぞ。


 光秀にくれてやったら懐紙に包んで懐にしまいやがる。この場で食えと言ったら、不承不承食いやがる。


 で、無表情! ムカつく奴だ!


 子どもの頃、村に遊びに行ったら婆あどもに「おひとつどうぞ」と言われて、初めて食って、最初は白カビの生えた腐れ柿かと思ったが、村のガキどもと食うと、めっぽう美味かった。


 持って帰って、市に食わせたら、最初は俺と同じで「カビを食わせる気か!」と怒りおったが、無理にでも食わせたら、とたんに目がへの字になって「もっとー!」とねだりおった。


 俺が、いちばん好きな妹の顔だ。


 よし、茶姫と三人で食おう……その前に、一つぐらい食ってもいいだろう。


 小振りなのを丸ごと口に放り込み、前歯でヘタをしごく。


 ムシャ!


 最初のひと噛み……すると……みるみるうちに世界が変わった!





☆彡 主な登場人物


織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)

熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま

織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)

平手 美姫       信長のクラス担任

武田 信玄       同級生

上杉 謙信       同級生

古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)

宮本 武蔵       孤高の剣聖

二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま

雑賀 孫一       クラスメート

松平 元康       クラスメート 後の徳川家康

リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)

今川 義元       学院生徒会長

坂本 乙女       学園生徒会長

曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹

諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相

大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん

孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟


 

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