五話
なんやかんやでディー王子と巫女は、城の中でつつがなくお過ごしでいらっしゃいます。
本日もお二人は勉強の為に、王子付の家庭教師に習っておられます。王子付の侍従は部屋の隅で待機しています。
本日の課題は国内情勢、その他諸々のようです。
「このように、最近では疫病を防ぐ為に国内でも色々と取り組みを行っています。ディー王子は城の外の事はご存知でいらっしゃいますか?」
キリリとした眼鏡姿がインテリ風を吹かせるような教師が、ディー王子に質問をされます。
「ああ、今は城と城下町の人間を中心に疫病が流行らないように薬を配っているんだよな?」
「ディー様、男神様が口が悪い――と仰られています」
「煩い巫女、神」
ディー王子が得意気に意見を延べた途端、巫女がツッコミます。
この光景もすっかり見慣れた物で、教師も微笑んでいるだけです。
男神は巫女を通じて、一向に女らしさを見せない王子に度々ツッコミを入れてくるのです。
神託とは全く関係のない内容らしいので、最初は嫌々ながらも真面目に聞いていた王子も、慣れた今ではすっかり男神のツッコミを無視しています。
「ディー様、女らしくしたら国にとって良い神託を下すぞ――と男神様が言っておられますが」
「ぐぬぬ……」
巫女の言葉に教師と、王子付の侍従は目を輝かせます。神の神託、それも国にとって有益な神託が授けられるのです。それは目もキラッキラに輝くと言うもの。
代わりにディー王子はハンカチを噛みきらんばかりに嫌そうな顔をされています。無理もありません、彼は男なのですから。
しかし、国の為ならば致し方ありません。プライドを捨てれば有益な神託を授かる事ができるのです。
「だ……男神様、私に神託をお授け頂けますか?」
瞳をうるうるとさせ、両手を胸の前で組んで懇願する姿は、正に下界に舞い降りた天使のようです。
これにはロリコン神――もとい男神様も神託を下さざるを得ません。
「薬の配布が全て済み次第、町中に水路を確保し、消毒をしなさい。それが落ち着いたら糞尿は下水を作りそこから流しなさい。時間はかかりますが、後々役に立つ事でしょう」
巫女は語り終えると、意識を失うように倒れます。それを受け止め侍従に巫女を任せると、ディー王子は直ぐ様王の元へと行くのでした。
この神託を元に、国は大がかりな工事を行いました。具体案については土木に詳しい者達を集め何度も討論し、少しずつ形になるように案を詰めていきます。
ディー王子もまだ幼いながらも、神託を受けた当事者としてその場に参加し、様々な意見を吸収していきました。
その横には静かに王子を見守る巫女の姿もあります。女子供は邪魔だと言われましたが、巫女が男神を経由して伝えるアドバイスが適切で、王子が彼女を側から離さないのです。
NAISEIつぇぇぇできた事に、巫女も大層ご満悦だったそうな。
こうして数年がかりの水路と下水工事が終わり、下水に糞尿を流すようになってから、城と城下町は疫病にかかる割合が格段に減るのでした。
これを機会にと、王子が国中に下水を作り上げるのは更に十数年もの歳月がかかるのでした。
間もなく九歳になるであろう第一王子の成した功績は瞬く間に城中に広まり、王子の女装姿を悪く言う人間は城内には居なくなったという話です。
そして、王子に神託を授ける幼い巫女も同様です。
ですが、男神様は女好き、しかも女装男子でも可――かもしれない説だけは、真しやかに噂されたとかなんとか。




