出会い 5
放課後、大介は霧島洋子と校門の前で待ち合わせをしていた。急いで行ってみると大島説子と洋子が楽しそうに談笑しているところだった。
「洋子待ったか、よう説子も一緒だったんだ」
「なによ、邪魔者扱いしないでよ。男って恋人ができるとすぐ2人きりになろうとするんだから、そんなにやりたいわけ」
「あほ、だったらこんな人目につく場所で待ち合わせないよ」
「わからないわよ、すぐ茂みに隠れようとするんでしょ」
「ばかやろ、この辺りには木が一本も生えてねぇよ」
「まあ、いいじゃない大介。それより進路相談はどうだったの」
「それがなあ洋子、志望校まで話が進まなかったんだ」
「それじゃあ、なにを話したの」
「勉強方法のアドバイスをしてもらったんだ」
「どんなアドバイス?」
「先生は音楽に問題があるっていうんだ」
「音楽のなにがいけないの」
「一度離れてみてはどうかっていうんだ」
「それで」
「本を読めって」
「本?どんな」
「さっき先生から借りてきたところなんだ、ほらこの2冊。芥川龍之介の『杜子春』と太宰治の『きりぎりす』」
「いい本と出会うと考え方も変化するっていうから先生はその2冊を選んだのよ」
「そうかな」
「そういえば階段で功一とすれ違ったの。変なこといってたわよ。大介に人生のことを聞いてみろって」
「ああ、すこし音楽家の話をしたんだ」
「音楽家って」
「悶悶と仕事をしている人たちの苦労話さ」
「へぇー、大介には音楽家の仕事がわかるんだ」
「自分なりにオリジナルを作っているからね」
「そんなに大変なの」
「問題は閃くかどうかだから」
「じゃあ、センスがいるのね」
「知識とか感情だとか意志とはまた別の次元の話なんだ」
「それと人生がなんの関係があるの」
「要するに思い通りには生きられないってことさ」




