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4 正彦
正彦が小学生だった頃、彼は母に「少年少女世界の名作」などといった本を買い与えた。だが彼は読書よりも外で遊ぶことを好んだ。少年の野球チームに入りピッチャーを務めた。
塾にも行かなかったが学校の成績はいつもトップクラスだった。正彦は家の家事も積極的に手伝った。そのうちに代わって自分で料理を作るようになった。
小学5年生の時、彼に春の目覚めが訪れた。ファッションに興味を持ち、母の着るものに「似合う、似合わない」と注文を付けた。
男と女の2つの性があって自分が男であること、そのことの本当の意味が初めて彼の心と体の内で自覚されたのである。
目覚めた彼の前にいた美しい女は彼の母であった。
彼は改めて眩しいような目で母を見た。母は現実の母だけでなく、母が描く自画像の中にもいた。自画像の中にはヌードの絵もあった。彼はそれまで学校から帰ると真っ先に母のアトリエに駆けつけ、絵を描いている母のそばでその日の出来事を無邪気に話して聞かせた。だが、彼はもうアトリエに寄り付かなくなった。彼は母と距離を取るようになった。
それまで母は絵の制作の助手のように息子を利用し、彼も嬉々としてその役を務めた。自画像を描くときは彼女自身の姿を何枚も彼に写真に撮らせた。彼を絵のモデルとしても使った。




