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正彦は手のかからない子供だった。絵を描いている母のそばで1人で遊んでいた。正彦が小学5年生になった時、摩利子は水商売から足を洗った。絵を売って生計が立つという見通しがついたわけではなかった。
思春期を迎える息子の手前、母として身を慎む必要があると思ったのである。絵を売って得られるお金などわずかだった。だが、将来自分の店を持ちたいと思って蓄えたお金があった。それを少しずつ取り崩せば当分生活に困ることはないはずであった。
正彦は授業参観の時、クラスメートから
「お前のおっかさん美人だな。」と羨ましがられた。
実際、母は目鼻立ちがくっきりして服装も垢ぬけていた。水商売の女性特有のケバケバしさは微塵もなかった。そんな母が彼は誇らしかった。




