ケース4◆帰宅後の我が家
「お帰り!!」
帰宅して、玄関のドアを開けるとすぐにこうなる。
ガバッと抱きつかれるのは残業終わりでヘトヘトな俺には結構こたえるのだが。
「お帰りお帰りお帰りー!」
・・・嬉しそうなので、何も言えない。
相手はもちろん、毎日こうして熱烈歓迎してくれる俺の嫁、小春。
「た、ただいま…。とりあえず、靴脱がせて?」
靴を履いたままの俺は、小春の身体を引き離してそう頼んだ。
―――以前に職場の喫煙所で、この話をしたら周りの既婚者に驚かれた。
「え、毎回出迎えっすか?」
「そうなんだよ…ちょっと最近やめて欲しいなぁと思ったり」
「なんてことを!」
後輩の岩田が声をあらげた。
年は俺より5つほど若いが、授かり婚だったからか結婚したのは確か俺と同じ年だった。
「うちなんて、帰ってきても誰も何も言わないですよ、空気ですよ空気。」
思い出したのか、どんより暗くなってしまった。
(空気・・・ってなかなか辛辣だな…)
「俺のうちは、最初の三年だけだったな。いや三年目から自然と無くなっていったな…」
そうこぼしたのは、定年退職間近の篠崎さん。
「ってことは、やっぱり安田さんの奥さんは嫁の鑑ですね!」
そこで水山が目を輝かせる。
(お前は小春のファンか!)
「そうだぞヤス。そんな可愛い嫁さんなら、ずっと大事にしろよ」
篠崎さんの言葉には、重みを感じた。
(大事にしろ…―――か。)
「海音、早く着替えてきて?ごはんにするから」
「はいはい。」
キッチンへ向かう小春に、俺はネクタイをゆるめながらそう答えた。
今日小春の機嫌が良いのは、天使たちが既に寝たからだろう。
「鈴と沙羅は寝たのか?」
「うん!今日はね、昼寝しなかったから早く寝ちゃった!」
(昼寝しなかったから…?“させなかった”の間違いじゃあ…?)
「だから、今夜…!ね、良いでしょ?」
甘えた声でそう誘う小春に、ぞくりとする。
「いや…今日は疲れたから…寝させて?」
「は?なんで?」
「なんでって…疲れたから?」
「ひどい!海音!私のこと好きじゃないの?」
このかまって攻撃にも、だいぶ慣れた。
「好きだけどさぁ…」
だけど、マジで今日は疲れてるんだって…。
「もういいっ!寝るっ!」
「じゃあ、たまにはくっついて寝るか」
俺がそう言うと、小春は無言で振り返った。
「・・・寝る…」
まだぶーたれていたが、くっついて寝るのも久々だったからか、小春はおとなしく頷いた。
(そーゆうところは、可愛いんだけどな…)




