5◆まさかの…
「は?なに言ってるの?」
小春が、今日もまた不機嫌極まりない。
「いい加減にしてよ!」
そんな小春に俺は下手に出ながらお伺いをたてる。
「いや、でもさ可愛いと思うんだよね…猫。」
そう。犬を飼い初めて一年半。
次は子供の頃からの夢だった、猫を飼いたいのだ。
だが、小春は猛反対。最近はこの話題で言い合いが耐えない。
「なんで猫なの?一郎でペットは充分よ!」
小春の言葉に、俺は思い出してしまった。
俺がまだ小学生だった頃のことだ。
道に捨てられていた子猫を拾ってきた。
だが、猫に対する知識が無かった俺は、まさかおしっこをしないと死んでしまうだなんて知るはずもなく、その子猫を死なせてしまったのだ。
―ー――ずっと猫との暮らしに憧れていた。どんなものなのか知りたかった。せっかくマイホームを手に入れたのだし、娘たちの情操教育にもなる。だから今、このタイミングで猫を飼いたいのだ。
もちろん、犬の一郎を愛でることも忘れてはいない。
「猫なんて、絶対無理!私、猫とか嫌いだし!猫アレルギーだし!」
嫌悪感丸出しの顔で、心春が言った。
「じゃあ一度、アレルギー検査に行こうか。」
俺がそう言うと、グッと言葉をつまらせている。
「とにかく!猫なんて飼わないから!猫飼うなら私、この家から出ていくわよ!」
猫を飼いたいと言ったら、―――――妻が家出宣言をしました。