エピローグ(4) 新たな始まり
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「音をひっくり返してたんですね?」
「気づいたか」
「? 何のこと?」
「名前だよ。綴りを逆にして読むと院長の名になるんだ」
考え込んだリアが合点した声を出した。
「ああ。なるほど」
「そういうことだ。単純だと逆に分からないものらしいな」
笑ったガデスが身を翻した。
「それでは、わたしは一足先に戻らせてもらおう。アルカシャ・クルグ、リーゼリア・バザム、後で会えるのを楽しみにしている」
静かに待機するフォル・グリンに向かって歩いていたガデスが振り向いた。
「伝えるのを忘れるところだった。ギーツ・バルファイクは解毒に成功したそうだ。会いに行ってやるといい」
アルとリアは笑って顔を見合わせた。
来訪した時のようにフォル・グリンの足首に掴まり、ガデスが宙に浮かんだ。ガデスは空高く舞い上がると求法院の方角へと飛び去っていった。二人は、小山の陰に消えるまでガデスを見送った。
アルがリアを見て手を差し出した。
「行こう」
アルの言葉にリアは頷いた。手を取ると、アルはリアを共に光球に包み込み、軽やかに走り始めた。
全て、ここから始まるのだ。
リアの胸には新たな決意と希望が生まれていた。
澄みきった空からの日差しは、これからの二人の行く末を照らし出すかのように明るく降り注いでいた。
心優しき魔王と紅い髪と瞳を持つ調制士の物語は、魔族の歴史の中でも一際輝くものとして永く語り伝えられたという。