4-23 光の放出
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
せせらぎに沿って歩き続ける二人の前に、金属の円盤は現れた。
円盤は黒く、人を横にしたほどの直径をしていた。草原の中に溶け込むことなく、地面に在った。厚みはさほど無い。滑らかに仕上げられた表面には直線と曲線が複雑に絡み合った陣魔紋が刻まれていた。明らかに人の手によるものだった。
前に立った二人は無言で見下ろした。しばらくの間、そうしていた。
「…えーと。まさか、これ…じゃないよね?」
リアの広げる地図を覗き込みながらアルが言った。
「…でも、地図とは合ってるのよね。模様も似てるし。…とりあえず、やるだけやってみれば?」
「…そうだね」
気の無さそうな様子をしながらも、アルは円盤の前に跪いた。円盤の片隅に手を置くと魔力を注ぎ込んだ。
その瞬間、陣魔紋に光が生まれた。光は放射を示したかと思うと渦巻くように中央に集約して球体を形作った。光は拡大し、勢い良く迸ると空を目指した。近くにいた二人は、眩しさと光の放出で生まれた圧力を避けて顔の前に腕をかざした。伸び上がるように放出された光は天空高く消えていった。
アルとリアは、呆然と光を追って空を見上げた。
空を見上げ続けていた二人は異変に気づいた。彼方の森で影が一つ飛び立った。影は鳥の形をしており、空を渡って二人に近づいたかと思うと一つの人影を落とした。
鳥はフォル・グリンだった。人影を落としたフォル・グリンは、円盤から離れた場所に降り立つと翼を閉じた。ギーツたちを運んだものよりも少し小型だった。
空中でフォル・グリンから離脱した人影は、苦もなく着地した。滞りのない動作で立ち上がると言った。
「此度の王選びで選ばれし者は、君たちか」
求法院院長セダーグ・ダズニウだった。
アルとリアは、厳粛な目で院長を見やった。
王選びと最終試練の始まりを宣した人物の登場は、試練の終わりを予感させた。