4-20 約束
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「ねえ、アル。ギーツとの約束はどうするの?」
アルの肩に手を置いたリアが問うた。光球の中で二人とも立ち上がっている。
アルとリアは光球に包まれて水の流れに乗っていた。リアは髪を元に戻している。靴はアルの靴の一部を使って相転儀で再生していた。濡れた制服を乾かしての移動の途中だ。緩やかな水の流れと流れ着いた浅瀬の状況から地上が近いと判断していた。水の流れる場所は光球が通るにも十分な余裕があった。
「約束?」
問い返したアルは大きな声をあげた。何かに気づいた声だった。
「ぼく、リアを助けるのに必死で、約束なんて頭から飛んでた…」
呆然と言うアルの後ろでリアは苦笑した。
「怒るんじゃない?」
「大丈夫だよ、きっと」
「どうしてよ?」
「ギーツなら、魔王になってみせてもリアを見捨てたと知ったら、そっちの方を怒るよ。分かるんだ」
「…そうかもね」
リアは答えながら、寝ぼけたようなまなこを持つお気楽男と傍らに寄り添う平静女の顔を思い起こしていた。二人の記憶が懐かしく思えた。