2002年10月-1
2002年10月3日(水)
今日は、大阪在住でバンドをやっている友達が二人、大阪から来ていた。
だからかどうだか知らないけど、とても調子が良かった。
一人でバイクを運転して病院にも行けたし、バイク屋にも行けた。
ちょっと不安だったライブにも行けた。それは、大学の同級生が一緒にいてくれたせいもある。
人ごみなんか考えるだけでも嫌だったのに、ライブ会場の人ごみの中で平気だった。
多分、人ごみを人ごみとして認識していなかったせいだろうと思う。
それに、僕は1人じゃなかった。周りには仲の良い友人がいた。
だから、今日はとてもいい日だった。
でも、友人が大阪に帰った後、ふと、友人の言った言葉を思い出した。
「オレの家の前に家があったやろ、あそこの息子も大学院まで行って自殺して死んだわ。お前はそないになるなよ」
「ならないよ」
笑ってそう答えた後、心の中で付け加える。
(少なくとも今のところは)
2002年10月4日(金)
また、発作が襲ってきた。でも、今日のはいつものと違った。
体が熱いのはいつもと同じだが、吐き気が断続的に襲ってくる。
胃が痛い。苦しい。立つ事すら出来なかった。動くのも億劫だった。
おそらく昨日無理をしてライブ会場に行ったのがいけなかったのだろう。
しかし、友人のライブに行かないなんて事、僕にはできなかった。
昨日のうちにあいつらが大阪に帰ったのが、せめてもの救いだ。あいつらに迷惑はかけられない。
少し良くなった隙を見て、電話で大学の同級生に助けを求める。幸いにもその人はすぐに来てくれた。
友達が作ってくれたそうめんを食べた。
そうめんは大好物なのだが、いつもの半分も食べられなかった。
それで、薬を飲んで、眠った。
友達は他愛ない話をしてくれた。僕はなんだか心が安らいだ。
そして、いつのまにか眠っていた。
ふと目が覚めると、友達がコンビニから帰ってきたところだった。
僕の体調もだいぶ良くなっていた。
友達がエクレアを僕にくれて、食べた。
美味しいと思った。美味しいと思えるのが嬉しかった。
しばらくして、今度は僕がコンビニに行った。そのくらいには元気になった。
ファミ通(雑誌)とかエクレアとか、友達のためのジュースとかを買ってきた。
結局友達は泊まった。僕の横で布団を敷いて、眠っていた。
僕はネットをしていた。眠くならなかった。
でも、睡眠薬の力で、僕もどうにか眠りについた。
2002年10月5日(土)
朝、友達と外で御飯を食べた。食べる事が出来た。
そのあとは小康状態だった。友達も午後3時過ぎまでいてくれた。
でも、ダメだった。
友達が帰ってから、夕方になってから、発作はやっぱりやってきた。
昨日より苦しい。吐きそうだ。
目をつぶると、頭がぐるぐる動いている気がする。
胸が苦しい。胸に金属の箱が詰まっているみたいだ。
薬を飲んだが全然良くならない。
苦痛と闘っているうちに、いつの間にか眠った。
午後10時ごろ目が覚めた。
胸がつかえている。夕方よりは楽だが、それでも苦しい。
その時突然、寂寥感が僕を襲った。
(僕はこんなにも苦しくて、こんなにも一人ぼっちだ)
そう思った。例え様もないほど、心が虚ろだった。
寂しかった。
泣こうと思えば泣けたかもしれない。
でも、泣けなかった。なぜか、泣きたいと思わなかった。
結局僕には、睡眠薬を飲んで、寝るしか出来なかった。
2002年10月6日(日)
今日は少し体調が良かった。外出する事も出来た。
でも今日はとても悲しい出来事を知って、とても心が疲れた。
夜に、やっぱり発作が起きた。最近特有の発作だ。
木曜日から薬が変わったから、そのせいじゃないかと思った。
こんなに全然効かない薬なら、いらないと思った。
そうして最後には睡眠薬に頼った。
でも、午前1時過ぎに目が覚めた。
寝たのが12時前だから、1時間ちょっとしか寝てないことになる。
睡眠薬が効かなくなっているのか?
そう考えるとすごく怖くなった。
一応お医者さんから1日2錠までは飲んでもいいって言われてるけど、もしこれが2錠じゃ効かなくなって、次第に薬の量が増えていったら、僕は一体どうなっちゃうんだろうと思った。
結局3時まで起きていて、睡眠薬をもう1錠飲んだ。
そしたら、眠れた。
2002年10月7日(月)
今日はかなり気分が良くて、外にも余裕で行けた。
でも、電車に乗るとやっぱり気分が悪かった。
ほんの2駅かそこらの間で、気分が悪くなった。
怖かった。体が震えた。
電車を降りると少し楽になった。やっぱり今日は気分がいい。
そう思っていた。楽観的に思っていた。
でも、発作はまたやってきた。また夜にやってきた。
そういえば、昼過ぎから何も食べていなかった。
何も欲しくなかった。何も食べたくなかった。
だから薬を飲んでなかった。
あわてて薬を飲んだ。
少しだけ楽になった。でも、まだ胸がつかえている。
今日もまた、睡眠薬を飲んで寝る。
2002年10月8日(火)
最近目が覚めると、自分がどこにいるのか分からない時がよくある。
ここが実家なのか、下宿なのか、親戚宅なのか、友人宅なのか、旅先なのか。
それで、しばらく考えて、やっと分かる。
でもこんどは、今日は何をするべきか分からなくなる。
どこかに行くべきなのか、そうではないのか、誰かと約束があったのか、なかったのか。
それで、何もないことを思い出して、なんだかホッとする。
今日は学校に電話して、休学する方法を聞いた。
どうやらまだ出来るらしい。とりあえず、道はまだある。
その後は友達と麻婆茄子を作って食べた。おいしかった。
でも、親から電話がかかってきて、親に休学の事を話していると、なんだか気分が悪くなった。
それで、ちょっとじっとしてた。なんとか治まったので良かった。
明日は、何をするんだろう?
明日は、何が出来るんだろう?
2002年10月9日(水)
昨日は、もしかしたら睡眠薬を使わなくても眠れるかと思ったけど、やっぱり使わないと眠れなかった。
眠くなるけど、眠れなかった。
今日は1つ気付いたことがある。
どうやら発作の前にはその前兆があるらしい。それは、ホコリ臭い匂いだ。
その匂いが漂うと、(ああ、ヤバイな)って思う。
その匂いの後で発作が起こるときもあるし、起こらないときもある。
その匂いはどこにでもやって来る。
家の中だろうが、家の近所だろうが、知らない所だろうが。
今日は、その匂いを3回嗅いだ。
2002年10月10日(木)
昨夜はまた悩み事があって、悔しくて、酒を飲んだ。
それで、その勢いで寝ようと思ったけど、やっぱり眠れなかった。
そしたら午前3時にメールが入った。大阪の友達からだった。
昨日、大阪行きを断念する旨をメールしたので、その返事だろうと思った。
その文面を読んで、思い出した。
オレとそいつがどんなに長い付き合いかという事を。
大学の友達とは6年、高校の同級生とは10年、それぞれ長い付き合いだ。
しかし、そいつとは実に18年もの長きに渡る付き合いだったのだ。
彼の文面からは、オレを一番よく知る者からの思い、彼だから分かる事、彼だからオレのために何かしたいと思っている事、そんな気持ちが溢れていた。
思わず3回ほど読み直し、少し、目頭が熱くなった。(大阪に、行こう。一番の親友に、会いに行こう)そう思った。
それで、睡眠薬を飲んで、寝た。
思いのほかぐっすり眠れた。
今日の夜から、ちょっと行って来ます。
この旅行がオレにどういう作用を及ぼすかは分からないけど、決して、悪い方には行かないと思う。
そう確信している。